第56話 司祭アツク3

あのジジイはそう言ってたが、あれは可笑しい

まるで空間ごと抉り取るような破壊力や


ワイは白熱した右手を大げさに避ける


そして念入りに観察する


高熱と迸る電撃、あれは恐らく祭祀具の効果やろう。祭祀具によってワイの電撃を逆利用されたか


「チッ!」


後退し続けるも、この間に何が起こってるか知れたもんじゃないわ


このままじゃあかん、あの技長続きはせんやろうけどアイツらの勝利条件は時間稼ぎや、あの2人だけでは聖女は止められん


大賢者の記憶がもどりゃあワンチャンあるか?

それも神器によって簡単に覆るから無理やな


「集中が散漫しているぞッ!」


「ぐぁっ!」


脇腹の辺りに軽く掠る


ジィイィイ


足を雷に変換して距離をとるも

脇腹からは血が流れ出ている


「はァっ、はァっ」


くそが!なんやねんあれ!ズルやろ!


考えろ、、、あれを打開するにゃどうしたら


情報を集めろ、痛みを忘れろ、集中!


「貴様では無理だよ、この右手で貴様を確実に殺す」


熱気、白熱、鎧、床


視界に入る情報を処理する


「はぁん?見えたでジジイ、体の温度が下がってんな?」


「それがどうした?右手さえあれば殺せるのだ関係あるまい」


その右手への絶対的自信


恐らく全身の熱を凝縮して、右手の許容できる限界まで集めてるはずや


ワイは全身を雷に変換する


バチィッ!バリリリリ!ゴロロロロォ


「好機ッ!ジジイッ!焼き殺したらァ!!」


アツクは右手を前に出し、左足を下げる


「この私を焼き殺す?舐めるなよ!若造!」


ゴォォォォォッ


白熱する右手は更に一段と熱量を増したようだ


対するライネルも全身を雷に変換し、漲る雷により生まれたスパークが壁と床を焦がす


「〈雷神〉」


ゴォォォォッ!


まさに轟雷がアツクへ向かうも

白い右手で対抗する


全てを焼き消すプラズマと


神にまで届きうるほどの轟雷がぶつかり合う


ゴォォォォォッ


バリリリ!バチチチチチチ!


拮抗ッ!


「がぁぁぁぁあっ!燃え尽きろぉぉぉ!」


アツクは迸る雷撃に身を焦がし、焼かれながらも右手を伸ばし続ける


あまりに膨れ上がった高温により破裂したかのような音を響き渡る


そして立っていたのはアツク


そして地に伏せるライネル



「終わりだなぁッ、、、若造」


あったはずの右手は跡形も無くなっている。

しかし左手にはまだ熱が残っている

人を殺すには充分な電流が


「死ぬがいい」


幽鬼のようにフラフラな足取りでライネルに近づく


「ジジィ、ッ!、、、死ねっ、、やぁっ!」


指先1つ分での電撃

それは真っ直ぐアツクを貫く


「そんなもの、効くはずが無いだうがぁっ!?」


楽しみの祭祀具は先程の激戦により許容量を超えたため壊れてしまった


「だかぁぁあぁあっ!これしきぃいぃい!」


雷撃を喰らいながらも近寄るアツク


「アホが、、、まんまと引っかかるんやな」


アツクに向かい、周囲から電撃が飛来する


「がぁぁあぎゃぁああ」


アツクは限界を超える電撃を受けて気絶する


「最初に投げた針は魔道具や、それもワイが使うのとは反対の性質を持つ電気を溜めるだけのな、それを周りに投げておいたやんや、それで

電気を受けたお前がまんまと食らったんや」


震える膝で立ち上がるライネル


「ワイの勝ちや」


そしてボロボロの体を引きずるように奥へ向かって進む

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