第55話 司祭アツク2

「まだいくで」


ゴロロロロォバリリリリッ!


ライネルは拳に雷を溜める

そして溜められた雷を放出する


パリッ


「〈雷号〉」


雷がアツクを貫いたかに思えたが


「がぁっ!貴様ッ!前よりも強くなっているなぁ!」


そこには司祭服は燃え尽き、下に着込んだ祭祀具が露になる


「うぇっ、ジジイ、、歳とってそんなタイツと皮鎧みたいなん着てんのはキショいな」


「減らず口を叩きおってッ!」


アツクの周りに纏う熱が一段と温度をあげる


ジュゥゥゥ


それにより飾りとして置かれている鎧が融解し始めている


「貴様の雷自体は効かん、ならばこそ、その小手先の魔道具でどれだけ我が怒りに抗えるかな」


「きっしょいじじいやな、ほんまにワイは歳とってもそうは成りたないわぁ」


「貴様っ!」


アツクは怒りにより前に駆け出す

高温により足元は焼け焦げている


「がぁぁっ!」


高温の一撃を振るうも


ガシッ!


「ジジイの熱は小手先にも届かんみたいやな」


ライネルの手袋をつけた左手により完全に受け止められている


「天啓でいくらかさ増ししようと、衰えてんねんお前」


「がぁぁぁ!」


さらに温度をあげようと憤怒するも


「五月蝿い」


ライネルの右手による掌底が腹に突き刺さる


「ごホッ、ハッハッ、、、」


膝を着くも恨めしくライネルを睨むアツク


「そろそろ諦めたか?ジジイ?」


ニヤニヤと笑いながら見下すライネルに

さらに温度をあげるアツク

危険を感じたライネルは足を雷に変換し

距離をとる


「貴様ッ!口には気をつけろよ!!!」


アツクの体は漲る憤怒によりオレンジ色になっている。


「はぁ、ほんまダルいわ」


ライネルは頭を掻きながらため息を着く


「もうダルいけ、殺すわ」


ライネルの細目から覗く瞳には濃密な殺意が伺える。


しかし怯えるアツクではなかった


「貴様のその態度には心底腹が立つのだよ!!」


オレンジ色は白みを帯びてきている


そしてライネルは懐から1本の筒を取り出す


そして手からは雷が溢れ出す

筒は雷を充電するかのように吸収する


「何をしているッ!貴様ァ!」


高熱により緩む足場を踏み越えて近づくアツクでは距離とっているライネルには到底追いつけない


「何かて?簡単な話や、文明の利器ってやつよ」


雷を十分に吸収した筒を持ち、アツクに狙いを定める


「聞くところによると電磁砲レールガンってやつや」


その一撃は発射される


ドォォォォォン


「グボァッ!」


アツクは腹を貫かれる

そして膝をつき、肩で息をする


「かぁっ!疲れんねんな!これ、でも一撃で仕留めれりゃ充分やな!大賢者はんには充分感謝せんとな!」


疲労が見えるライネルだが顔はホクホクである


それとは裏腹に怒りに顔を歪ませるアツク

もはや司祭とは程遠く、悪魔のような顔だ


「内蔵を撃ち抜いた、もう長くないやろな、

余生を楽しむんやなぁ!」


ゲラゲラと笑いながら背を向け移動するライネル


しかし


「〈代理者よ我を癒し給う〉」


その聖書の1句にライネルは振り向くも手遅れ

乳白色の空間から注ぐ眩い光がアツクを包む


「畜生が!聖女の仕業か!面倒い真似しよって!」


ライネルはアツクに同じように掌底を決めようと加速するも、直感的にそれをやめて避ける


ブォォォンッ


「避けたか」


アツクは冷静に苛立ちながら言葉を吐く


「おいおいなんやねんそれ、、、」


ライネルはアツクの手を見て戦慄する


「これは我が怒り全てを右手に集わせたのだよ」


あまりの高温に白く輝く右手

さらに言えば、その手にはプラズマが宿っている


「どういう原理ことや」


ライネルは冷静を図ろうとも、冷や汗がドッと溢れている


「なに、単純なことよ、貴様の電気と私の熱によって産まれたのだ」


「この手ならば貴様を一撫でで殺せる」


啖呵ではなく事実を述べるアツク


「やってみろやぁ!クソジジイが!」


決着は近い

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