第53話 司祭ヤイバ4
吸気音が轟いている
ドパァン
また来るっ!
両膝を屈めて、身を引くくして避けたが
飛びかかるようにギルディアが近づく
遠距離を得たのにそのリーチを捨てる?
意味がわからない先程と言ってることが真ぎゃ
ドパァンッ
勢いが合わさり先程より強力な一撃が放たれる
剣で受けても勢いに身を押される
そして凄まじい衝撃に走馬灯を見る
◇◇◇
私はまともに生きていけると思っていなかった
私は司祭の息子として生まれた。
司祭である父親は屑であった。
聖都には2種類の人がいる。騙す側と騙される側だ。私はきっと騙される側なのだろう。
生まれてから15になるまで実際に親父を見たことがなかった。親父は助祭でありながら、女と権力に溺れて、日夜権力闘争に身を投じていた。私の事など気にも止めずに
ある日、私は将来騎士となるために鍛錬をしていた。騎士の理由は特にないが、この国を知りたかったのかもしれない。私は鍛錬中に怪我をした。そして剣に血が垂れた。
それを見た指南役は大層驚いた。
なんせ鋳造の剣がまるで魔剣のように煌めきを得て、鋭い切れ味と芯の入ったような強度を手に入れた。
それを聞いた父親が私に初めて会いに来た。
司祭でありながら突き出た腹、服の内から見える貴金属。
あぁ、私にもこんなやつの血が流れてるんだな、、と思うと途端に怖気がしたものだ。
それは気の所為では無かったがな
「お前がワシの倅か、その身に宿る力、存分に役立てようぞ」
粘り強くような気色の悪い声、まさに毒蛙だな
それからは地獄だった
私はどことも知らぬ部屋に監禁されて髪を毟られ、血を抜かれた。私の体には武具が持つ能力を限界まで引き上げる力があるようだ。
それを利用して、祭祀具を作り始めた。
最初は保有する祭祀具の能力を引き上げるだけだった。しかし魔が差したのか計画していたのか、平凡な魔道具を祭祀具と偽るようになった。父親はそれにより名声を得て司祭にまで成り上がった
私は長い間、地下に居たと思う。
多分3年程かな、動かなかったからか肉は減り、骨が浮きでて、顔はやせ細った。
いつものように扉があき、体を毟られるのかと思ったが、そこには一人の女が居た
「酷い様子ね、、あなた意識はあるかしら?」
金髪で、どことなく庇護欲を誘われるも
その瞳からは勝気と負けん気とも言える意思があった。
彼女は私に近づき、手をかざすと眩い光が溢れ出て、傷が癒えていく
「、、、古い傷は治せないわ、でも治せるところは治したわ」
すると外から破壊音が聞こえる
「おいっ!エルシア!無駄話してないで早く手伝え!こいつら無駄にいいもん持ってるからめんどくさいんだ!!」
外からはかなりの熱気を感じる。肌寒いはずの地下でさえも温くなるほどの
「アツクは気が早いのよ、、、それじゃ助けは呼んどくから待っときなさい」
その後も破壊音がひびき、静寂が訪れると
何人かの治癒士が現れて私を教会まで連れていった。
その後、治療を受けてリハビリを済ました私は
私を助けたエルシアという少女に報いることにした。親父という呪縛から開放された私に人生で初めて産まれ
私は鍛錬を重ねて、実力を付けて騎士となった、そして出会った彼女は変わっていた
まさしく神の代弁者とも言えるように
けれども私はひたすらに報いた
忌々しいとまで思ったこの力を用いて
◇◇◇
「げぁッ!」
私の体を衝撃が貫く、肩の痛みが意識を失わせない、既に血を多く流している
一手で覆った、、、
ゴォォォォッ
ジャイアントマンティスが獲物を前に鎌を鳴らすように、吸気音が響いている
「さて、トドメを刺そう、なに目が覚めれば全て終わっているさ」
来るっ!
この剣では防げない、高温の壁は
あの女の熱に強いという言葉通りに防がれている。
恐らく魔力自体がそういう性質なのだろう
「聖女様、、、すみません、報いることかなわず」
最後に放出された一撃にて完全に意識を失う
◇◇◇
ギルディアは篭手を解除し、ナックルダスターに戻す
「はぁっはぁっはあっ、、!」
激しく息をする
この魔道具には大きな欠点がある
それは魔力を大量に消費すること
先程の一撃は魔力によって生み出された高質力の砲弾のようなもの
それゆえ大量に魔力を消費する短期決戦用だ
「〈私は速い〉」
既に絶え絶えの魔力を使い、身体強化により駆け出していく
使わなければ勝てなかったが、使ったら戦いに参加出来なくなる
切り札として取っておいたが、無ければ負けていたであろう
悔しさを胸にギルディアは走った
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