第50話 司祭ヤイバ

「行っちまったよ、、、」


ゴーラは唖然としながら言葉を零す

ライネルは溜息をつきながら頭を掻き

棒立ちの2人に言う


「まぁ、考えはあるようやし負けはせんやろうワイらはこのまま先に進むのが先決や」


そう言うとライネル先に進む

ケルトとゴーラは目を見合せて、ついて行く


◇◇◇


深夜、風に揺れる草の音のみが聞こえる

ここは前回と同じ野原


辺り一帯は薄暗く、空から照らす満月が無ければまともに何も見えないだろう


遠くには光により激しく主張をする聖都が

見える


「やけに素直に乗ってくれるんだねぇ?」


前回とは違い完全装備の男はギルディアを金色の両目で覗きながら言う


「あぁ、、、貴様は今作戦において最も危険だと私は判断した」


「驚いたなぁ?君ほどの人物にそう高く評価されるとは僕も鼻が高いよ」


ヤイバは存外嬉しそうに言う


「だとしたら君はなぜ、尚更何故ここにきたんだい?あの4人の中でも君は確実に上澄みだ」


ヤイバは疑問のように問う


「なに、単純な話だ」


ギルディアは羽織っていたローブを脱ぎ捨てる


「貴様は個人的に気に入らない、だから私が直々に潰す」


ギルディアは両手にナックルダスターを装着している。それは紺碧に輝き、魔術的装飾から

魔道具であることが伺える。


「はは!出来るかな?」


男は握っていた剣を構える


月の光が反射して、剣は金色の輝きを写し

ナックルダスターは妖しく煌めく


そして睨み合い少し時間が経つ


月に雲がかかり、2人を暗闇が包む


「〈私は速い〉」


先手を仕掛けたのはギルディアだ

天啓〈オーダー〉による超高速にて剣士のコメカミに拳を振りかぶる


しかし、ヤイバの姿はそこにない


「こっちだよ」


後ろからヤイバの声が聞こえる

ギルディアは咄嗟に飛び退くが、剣の一閃にて

腹部を浅く切られる。そして切られた場所は焼けた事により血は流れていない


「あら、避けられちゃった速いねぇやっぱり」


ヤイバはわざとらしげに剣を見せびらかしながら言う


ギルディアは剣を睨みながら言う


「その剣、魔道具とは違うな、どちらかといえば式典に用いられる祭祀具に近いな」


「おお!すごいね!宰相となるとそこまで見破れるんだねぇ!そうだよ!これは灯火の剣、人類が火を得た始原から鋳造されたと言われる伝説的祭祀具だよ!」


そして


「この刃が切る事は燃え朽ちる事、深手となれば命を燃やすだろう」


上段で剣を構える


「それにしても、その体たらくで私に勝つつもりかい?」


ギルディアは両手のナックルダスターを叩き合わせる、それによりナックルダスターは青い魔術的光を帯びる


「それは今後を見て考えてもらおう」


ギルディアはナックルダスターを握りしめる


「〈私は力がある〉」


ギルディアはステップを刻みながらヤイバに近づく


「それは迂闊じゃないかなぁ?!」


ヤイバは剣を振るい切り裂こうとするも


「〈動くな〉」


ギルディアの言葉により一瞬硬直する


「砕けろ」


ギルディアの拳がヤイバの鎧にめり込んだかに思えたが、次の瞬間ヤイバは後ろに下がっている


「おどろいたね、、天啓それ人にも効くんだ、、!」


ギルディアは睨みを聞かせながらヤイバを見る


「その転移、カラクリがあるな」


「さぁ?種も仕掛けもないかもよ?」


ヤイバは不敵な笑みを浮かべている

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