第46話 孤児院訪問

そこは孤児院だがまるで教会だ。豪華では無いがどこか高貴さを感じる神々しさがあった。

それは窓から注ぐ陽光により生まれた陽だまりや、中央の赤い絨毯の続いた先にある

女神像から生み出されているのだろう。


「「すごい、、、、」」


そうアイラとワイドが零した瞬間、アツクがギロリと目を見開いて、二人を凝視する


「ええ!!そうでしょそうでしょっ!!実によく分かっておられる!

ここは聖王国でも優れた教会の一つですっ!!」


「教会?孤児院とお聞きしておりましたが?」


そう言われるとアツクはコホンと咳払いして


「おっと失礼しました、説明不足でしたね!ここはもともとは教会だったのですが

先代教皇様が「戦乱の世で孤児達が道を誤らぬように」と孤児院として扱われてもいたのですっ!!」


ワイドとアイラは絶好調に早口で捲し立てられて若干困惑しながらも話を理解した

話す調子は変わらず延々と話をしながら教会を進む

すると木でできた扉が見えてくる


「それではこちらに参ってくださいっ!」


アツクは扉を開けて室内へと誘う


部屋の中は応接室のようで簡素ながらも年季の入った机や壁に立てかけられた

黄ばんだモノクロの集合写真から長い歴史を感じさせる


「おや?写真が気になりますか!ええ!ええ!わかりますよっ!この写真はですね

この教会が孤児院になった際に撮られたものですっ!それには中央に先代教皇様が

お写りになっているはずですよ!!」


二人はまじまじと見るが中央には老人が杖を持ち立っているが顔は色が抜けていて

分からなかった


「それよりもっ!!お二方は聖女様のことが知りたいんですよねっ!」


ワイドは少し苦笑いしながらも尋ねる


「ええ、、はい、そうですね」


「実に結構!!最近は本神殿に籠りきりでお姿を拝見出来ていないのですがっ!

お話ししましょう!!」


「それではまずはその威光についてお話しましょう!聖女様はっ!神に定められし御方!

長く続く先の大戦にて獅子奮迅の働きをし!

その優れた治癒魔法とっ!優れた武勇にてっ!聖女様に任命されたのですっ!」


「優れた武勇?聖女様には様々なお話を聞くのですが、どのようなものなのでしょうか?」


「うーーむ!!素晴らしい好奇心だっ!

それはですね!すばり!神器によるものです!!神器とは!神がこの世に干渉することが限られてしまったこの現世で!神が力を与えし!まさに!神の器ということです!!

神器とはっ!資格ある者に求める力を与えっ!

世界を救世するのですっ!」


その壮大な説明にワイドは少し慄きアイラは引いた


「あの〜神の力というのはどのようなものでしょうか?」


「女神様が与えし権能とも言えましょう!!それは!断罪の力にございますっ!!」


「断罪?聖女様とは少し印象が違いますが、、、、」


うんうんうんうん!アツクはものすごい勢いで首を振る


「そうでしょ!そうでしょ!私も思います!これはっ!大切なものを奪われた歴代聖女に発現した能力ですっ!それは魔物である場合がっ!ほとんどですっ!」


「な、なるほど、、、ちなみに神器というのは無尽蔵に使えるものなのですか?」


「いいっえ!神器とはっ!資格あるものにっ!ある儀式を行うことでっ!一定期間の使用がっ!許されるのですっ!」


2人は有益なことを聞けて、かなりホクホクな様子だ


「では、その断罪の力を持って今も多くの悪人に裁きを下しているのですね?」


ワイドは更に情報を集めるために質問を続ける


「いいっえ!今の平和な世ではっ!不要かもしれませんがっ!聖騎士団というのがっ!この国にはっ!存在しますっ!聖騎士からなる騎士団なのですが、その中でもこの国の英雄と呼ばれるっ!司祭ヤイバ殿がっ!になっておりますっ!」


「なるほど、、、ちなみに司祭様は何名いらっしゃるのですか?」


「私を含めて3人ですっ!!!」


三本の指をくねくねさせて背中を剃りながら言う


「そうですか、、貴重な情報ありがとうございます!そろそろ予定がありますので、またお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ええっ!もちろんですよっ!迷える子羊よっ!またいらしてください!!」


「ええ!ありがとうございますっ!」


ワイドとアイラはお辞儀してその場を立ち去る


それを司祭は手を振りながら見送る


「ええ、また会う時は、、、、」


◇◇◇


路地裏ではフードの女が幾人かの商人を殴り、情報を引き出していると、商人が魔法により

攻撃を行ったため、騎士団が現れた


フードの女は壁を蹴り、屋根を超えて騎士団を巻くも、着地した路地裏に一人の騎士が居た


騎士は剣を抜くと空間を切り裂き、そこから空間は崩れていく、ギルディアは飛び退こうとするも固定されたように視界は崩れていき、違う場所へと至る


そこは聖都の少し離れた郊外にある野原

奥には森林があり、外壁から覗く霊峰が見える


そこにはフードの女と剣を携えた騎士が立っていた


「やぁ!君は、、、どこかで見たことがあるね?」


フードの女、ギルディアは口を閉じて相手を見る


「おや?黙りかい?あっ!それとも私が名乗るべきだったかな?私は聖騎士団団長ヤイバと申します!司祭もこなしているので司祭ヤイバとでもお呼びください!」


それでもギルディアは何も口にしない


「うーん?仕方ないね、現行犯だしっ!」


男はすかさず剣を抜く


「〈私は硬い!〉」


ギルディアはすかさず自己強化で防御力をあげる


ギィィィインッ!


鉄と鉄がぶつかり合うような音が鳴る


「おおっと?君硬いねぇ、今口に出して言った言葉通りだ?てことは天啓持ちかな?」


男は揺さぶるように言葉を吐く


「ねぇー答えてよー?独り言みたいじゃんっ!」


それでも剣を振るいギルディアに迫る

1歩のステップの範囲が広く、その勢いを足で止める勢いを利用して剣を振るう


ゴォオォオオオン!


先程より大きな音が鳴り響く

まるで鐘を鳴らしたかのような音に不快感をギルディアは覚えた


「うぇー!うるさっ!君ほんとに硬いね、でもローブはそうでも無いようだ」


ローブは破れており、その合間から血が垂れている


「おっ!血が流れるってことは!ゴーレムとかじゃないみたい!良かったぁ!人か!なら喋れるんじゃないの?」


そう平然と話しかけながらも騎士は猛攻を振るいギルディアに手傷を与える


「チッ!」


ギルディアは大きく舌打ちをする


「あっ!喋った!けど舌打ちかぁ悲しいなぁ」


そう男が油断している隙を見て


「〈私は速い〉」


高速の動きでその場から離脱する


「あっ!ちょっと!まだ始まったばっかでしょ?帰るのはやめてよー!」


ギルディアは森の方へ走り去る


「へぇ、森に逃げるんだ、じゃあ追いかけるのは難しいや、あーあ平野で逃げるなら理があったのに、調子に乗って飛ばしすぎたなぁ」


男は剣を鞘に戻してそう独白する


「次会うときは本気の剣で君と相対したいなぁ」


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