第42話 休息

酒場では新生レジスタンス全員がエールを飲み、戦いの疲れを癒していた


カウンターの隅で一人の女性に服を着崩した男が寄る


「やぁ、お嬢さん今空いてまっか?」


話しかけるのはライネルであった

彼は体質によるものか酒に強いが、かなりの量飲んだ為か顔は少し赤くなっている


対して隅の方で酒を程々に飲むのはギルディアであった


「なんだ?ナンパなら他所でやれ、私の好みでは無いのでな」


厳しい態度で寄せ付けないようにするがライネルは気に求めず、隣の席に手に持った酒瓶を置いて話し出す


「ほんで、どうするつもりなん」


酒場の喧騒に紛れながらも1拍の間が空く


「どうするも、大賢者様になぜ記憶が無いのかが何も分からんのであれば、最後に場にいたエルグと聖女と出会わなければならない」


「つっても、2人に出会って何も分からんかったら手詰まりやないんか?」


ギルディアは少し考えた後に話し出す


「私はな昔、大賢者様に助けられたことがある、それも利用価値などの思惑もなく、ただ純粋に助けられたのだ。」


ギルディアは遠くを見ながら続ける


「初めての体験だった、昔の記憶にある温かさ何てものは感じた事は無かったが、この恩は忘れることは無かった。そしてあの方が魔王を討伐し、世界に平和をもたらした功績で大賢者という名誉職に付き、魔道帝国に絶大な貢献をなさった」


「ほーん、、、ほんで?」


「そして私は大きな失態を犯した、それを救ってくださったのも大賢者様だ、だから私は大賢者様が望む未来に追従する」


ライネルはギルディアの顔を見る


「ほんまか、今ならワイもお前の考え分かるかもしれん」


ギルディアはクスリと笑いながら聞く


「あの享楽主義で、自分本位のお前がか?」


「酷い言い方やで、ほんまに、、でもそうや

ワイは自分だけおりゃなんとでもなろうと思ってたわ、でも実力で太刀打ち出来ず、相手を煽って油断誘おうにも、やり過ぎたあまりにぶち殺されそうになってもうた」


苦虫を噛んだような顔してギルディアは言う


「洗脳されていた大賢者様のことか」


「まぁ、正気マトモじゃなかったな、ほんで死ぬんやと思った時に、死にたない思うてん」


「それは当たり前のことだろう」


少し間が空く


「そうやな、でも初めてのことやってん」


「やからワイは命が尽きる間際に魅せられたあの圧倒的力に、心酔してもうたんや」


ギルディアは乾いたように笑いながら言う


「私が言うのもなんだが、貴様は悪質な詐欺にかかっているような物だぞ、そんなもの実際の人物を知ったら覚めるものだ」


ライネルは酒瓶に残った酒を一気に飲み干す


「ぐびっ、はぁっー、確かにそうかもしれん

けどな、それならええんや自分を取り戻せるだけや、でもな心酔これがもし本物であるかをワイは知りたい」


「そうか、偽物だったらどうするんだ?」


「そりゃあもちろん」


〈殺す〉


「はぁ、だから貴様は短絡的で享楽主義の馬鹿なのだろう」


「まぁ酒も切れたし、新しいもん見つけてくるわ、ほんならな」


ギルディアはカップを揺らし

中の氷を眺める


「私も決めきらねばならんのだろう、、、」


その吐露した言葉は酒場の喧騒に紛れていく

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