第20話 間話 パート ゴーラ

ギルディアの拳が娘を殴り飛ばす。

その一撃で娘は意識を失い倒れてしまう。

俺は倒れた娘を背負い、その場を凌ぐ、四方八方から襲いかかる看守とギルディアは容赦がなく、下手をすれば命を落とすような一撃ばかり。どうにか時間を稼ぐ、俺はどうか娘だけでも助ける方法は無いかと模索するが、集中が途切れるほど攻撃が掠り、傷が増える。その瞬間

「〈動くな〉」

ギルディアのオーダーにより一瞬動きが止まる

そしてギルディアの拳が腹にめり込む

今まで溜まった疲労とダメージにより

俺は膝を着く。


少しの間静寂が訪れる


「やっと膝を着いたか」


ギルディアの声が俺たちに降りかかる

その重圧は変わらず、俺たちを見下す


そしてギルディアは指を指し宣告する


「その娘は今日が処刑日だったな、ならばこそ今ここで処した所で変わらないだろう」


俺はギルディアの言葉に絶望する、ルールや正義を遵守するギルディアだからこそ、ハッタリや脅しではなく本当の事だと分かるからだ。


カッカッカッ


ギルディアのヒールの音が響く

それと同様に俺の心臓の鼓動も早くなる

痛みを忘れて恐怖が身を包む


1歩音が近づく事に、断頭台を歩くように

絶対的死が訪れると予感するように


瞬間


天井が崩れる


目に入るのは、暗黒の魔力に包まれ魔族の少女を抱えるエルグの姿、俺は安堵と驚愕からか間抜けた声をだす


「なっ!」「うぉっ!?」


それはギルディアも同じようで、エルグはギルディアと俺達の間に降りる


俺は感謝か、もしくは疑問からか声を出す


「エルグ、、お前、、」


どうしてここに、そう声を出す前に

ギルディアの重圧が場を支配する


「貴様、、!その娘がなんなのか分かっているのか?」


ギルディアが地に響くような声で叫び、その顔は焦りと怒りからか目尻が吊り上がる。


俺は魔族の少女に目を向ける。

紫の髪の中、黒い2本のツノが主張しており、赤い双眸はこちらを見透かすようで、、、


エルグも同じように見つめると


「パパ?」


ぱっ、パパ?!


俺は驚きというか困惑というか、色んな感情がごちゃ混ぜになる。とにかく俺はギルディアのことを伝える。


「気をつけろエルグ!そいつは看守長ギルディアだ!」


するとエルグはギルディアを警戒しながら、構える。その体からは暗黒のオーラが滾り、それを見た看守は少し退く。

その中ギルディアだけは変わらず、その場で直立している。そして口を開く


「暗黒の魔力、暗黒騎士か」


ふぅ


ギルディアのため息がやけに響く


「暗黒騎士と関わりがあると思われる男が投獄されたと聞いたがまさか暗黒騎士とはな」


ギルディアは呆れつつも、戦闘態勢をとる


その瞬間、先程までと同じようにギルディアからとてつもない重圧を感じる。俺は先程の恐怖も少しぶり返したが、エルグに伝える


「おい、エルグ、ギルディアの時間を稼げ、その間に俺が看守を減らす」


俺は簡潔にそう伝える。満身創痍で時間稼ぎにもならない俺よりエルグに任した方がいいと考えたからだ。


エルグは俺たちに背を向けながらも言う


「任せとけ」


俺はその瞬間、どこか救われた気がした

敵を睨むエルグはスキルを発動する


「【聖なる鎧】【聖者の微笑み】」


途端、溢れ出た暗黒のオーラがエルグを包み、仮初の暗黒の鎧が作り出される。


それを見ていたギルディアは一言


「〈ゴーラを処せ〉」


そう来たか!!手負いの俺を看守に任せてエルグを片付けるつもりなのだと悟る。

オーダーにより強化された看守が俺に向かい襲いかかる。俺は身体強化を使い、ギルディアから距離を取りつつも何人かを殴るが、強化された看守は簡単には倒れず、起き上がり向かってくる。俺はアイラを落とさないように細心の注意を図りながら看守を牽制する。


瞬間、轟音が走る


何かが上を飛んでいく音が聞こえた


それが2回、恐らくエルグが吹き飛ばされて、それをギルディアが追いかけたのだと理解する。


ギルディアが追いかけたことにより、統率が少し乱れるも襲いかかる看守を殴り、飛ばし、いなす。


幾度も繰り返すと俺の体力も減り始めて、動きに陰りが見え始める。その隙を狙い看守が俺に警棒を振りかぶる、曲線を描いた一撃が俺の腹に吸い込まれるが、俺はそれを耐える。


「はぁっ!効かねぇなぁ!!」


俺は近づいた看守に渾身の拳を振りかぶり、壁に叩きつける。一撃で仲間がやられたことにより、周りの看守が少し距離をとる。


これが俺の武技〈溜め返し〉

しっかりと認識した攻撃を溜めて

その威力を俺の拳に回し、放出する。


俺の拳と溜めた攻撃が合わさり、とてつもない威力を生み出せる。


「さぁ!かかってこいよ!!」


簡単に出せる技では無いが看守は一撃で倒された事に危機感を持ち、距離を取りつつ牽制する。しかし看守は埒が明かない!とばかりに俺に襲いかかる。


それにより〈溜め返し〉を溜めて何人かを倒す

それを見ていた看守は少し日和る。


しかし溜め返しはダメージが残るため

このままじゃあ、ジリ貧だ。


俺が一撃必殺とばかりに使ったことで

看守は距離を取っているが俺も限界が近い。


俺は不意に膝を着いてしまう、どうやら疲労が溜まりすぎて足が震えちまったようだ。


その様子を見た看守が勢いを増して攻めようとする


俺はなんとかアイラを守ろうと震える膝を堪えながら立ち上がるが、看守の後ろからレジスタンスが駆け寄って来るのが見える。


レジスタンスは後ろから看守に襲いかかる。


俺たちの様子を見たからかその勢いは激しく、

看守も俺たちに構う余裕が無いのかレジスタンスに対応する。看守とレジスタンスを抜けて幾人かが俺たちに歩み寄る。


「ゴーラさん!お怪我は!?」

「アイラさん!大丈夫ですか!?」


レジスタンスの精鋭のひとりと

細い男が俺とアイラを心配をしながら近寄る


「すまねぇ、俺が守り切れなかった」


俺は謝罪の言葉を口にする


「そんな事ないですよ!俺たちが来るまで耐えきっただけで充分やってますよ!!」


俺はその言葉に少しばかり自信をつけられる


「じゃあ、かっこ悪いところ見せてられねぇな」


俺はその場を立ち上がり、ギルディアとエルグが向かった方を向く


「どこ行くんですか!」


細い男が声を出して言う


「新しく仲間になった男んところだ、ギルディアを抑えてんだ」


精鋭はそれを聞いて驚き、細い男は心当たりがあったのか


「エルグさんのことですか!?」


とエルグのことを口にする


「知ってんのか?」


俺が聞くとその男は頷く

なら


「アイラを守ってくれ、俺はエルグを助けなきゃならねぇ」


そう言い残すと俺はエルグが戦っている方へ向かう。


するとものすごい音が響き渡る、エルグとギルディアが戦ってんだとすぐに気づいた。俺はある程度走り、近づくとギルディアの声が聞こえる


「まぁ、良い」


「これだけは言っておこう、奴らは既に脱獄しただろうな?」


何?


俺は忍びつつギルディアに近づく

それに伴いギルディアは声を荒らげながら言う


「奴らは仲間のこと以外は信用せず、それ以外は容赦なく切り捨てる」


俺は途端に顔がニヤける、あぁそうかもな

だってエルグは俺達の仲間だからな、信用してる。だから助けるんだよ


「そうして奴らはレジスタンスなどというものを築き、我らに反逆することが出来たのだか」


俺は我慢できず、ギルディアに殴りかかる


「よぉ」


反射的にギルディアは振り向くが、俺は既に拳を振りかぶっている。


ドォン!


ギルディアは子気味よく壁に叩きつけられる。


「ゴーラ!!!」


エルグは片膝を着き、俺の名を呼ぶ

俺は皮肉混じりにエルグを呼ぶ


「随分とボロボロじゃねぇか」


俺は笑いがこぼれながらもエルグに手を伸ばす


「お前もだろ」


それを見たエルグも笑いながら俺の手を掴む


「〈私は力がある〉」


俺たちはその声を聞いて反射的に飛び退く


瞬間、地面にクレーターが出来る


「おいおいマジか」


俺は渾身の一撃でギルディアを殴ったが、まだ意識があったことに驚く。


既に満身創痍で、片目は見えていないようだが、片目には俺たちへの執念が滾っている。


「クズどもが、、、この私に!」


ギルディアの瞳がこちらを睨みつけている。


俺たちは一瞬アイコンタクトを取り、同時に駆けだす。それと同時にギルディアは動き出す。

俺は身体強化を入れ直し、気合いを入れて拳を握る。エルグは盾を器用に使い、ナックルダスターのように握る。


同時に殴りかかるが、ギルディアは両拳を突き出し、俺たちの一撃を対処する。


凄まじい轟音


「ぐぉっと!」


俺は声を出した仰け反り

エルグは盾を飛ばされる


「チィっ!」


ギルディアは舌打ちをする


全員が飛ばされて距離ができる。


俺はエルグからの目配せをされて

押し切るんだな?っと一瞬で理解する


「行くぞゴーラ!」


そう声をかけられて俺も応える


「任せろ!エルグ!」


それを聞いたギルディアは身構える


俺は上からの大振りをフェイントに、下からのアッパーを決めようとするが、簡単にいなされて目にも止まらぬ速さで連撃を食らう。何発かを〈溜め返し〉で吸収して、その威力を使い、拳を正面でクロスさせながらタックルをする。


ギルディアはそれをいなし切れず、吹き飛ばされる。しかしすぐさま接近して俺に連撃を繰り出す。そして俺たちを通り過ぎてエルグが盾を回収しに行く


俺はその意図を理解して


「貴様ッ盾を!」


エルグに向かおうとするギルディアより早く動き、進路を塞ぐ


「行かせねぇぜ?」


俺は拳を振りかぶり、ギルディアを殴ろうとするが、するりと避けられて、腹に連撃を決められる。拳と手刀など様々な攻撃を食らう。


俺は〈溜め返し〉で一矢報いようと

拳を振りかぶったが、ギルディアはそれを受け流し、俺を地面に叩きつける。俺は何が起こったか分からず、顔から叩きつけられ、意識が一瞬朦朧とする。


「はぁっ!クズが!」


ギルディアの声を聞いて意識が鮮明になり、立ち上がる、目に入ったのは漆黒の盾。それを投げるエルグ、しかしギルディアが大袈裟に避ける、そして飛んできた盾を反射的に俺はつかみそれをギルディアに投げる。しかしそれすらも飛び避けるギルディア。だが、エルグが掴み斬撃を放つ。


「トドメだァ!」


「なっ!私はかたイ’’ッ!」


ギルディアは盾から飛び出た斬撃をモロに喰らう。そして吹き飛び廊下に仰向けに倒れる。


「こ、んな、、、雑魚にぃッ、、、」



それを最後にギルディアは白目を向き気を失う。


俺はやり遂げた、感謝と喜びをエルグに伝えようとするがエルグは膝から崩れ落ちる。


「おい!エルグ!大丈夫か!?しっかりしろ!」


俺は焦りと共にエルグを抱き上げるが意識がなかった

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