後編:飴玉の世界

意識が戻ったとき、亮太は自分の身体が動かないことに気づいた。周囲を見渡すと、自分は巨大な飴玉に囲まれていたのだ。状況が理解できず、恐怖が全身を駆け巡る。


「これは夢だ」と思いたかったが、現実は冷酷だった。自分自身が飴玉になっていることに気づいた瞬間、亮太は叫び声を上げた。しかし、その声はどこか遠くで響くだけで、誰も聞く者はいなかった。


亮太は、飴玉の箱の中に再び入れられることを感じた。彼は必死に抵抗しようとするが、その身体は飴玉に過ぎず、何もできない。


日が経つごとに、亮太の存在は徐々に薄れていった。彼を探す者もなく、その古びた駄菓子屋は再び静寂に包まれた。亮太が飴玉の中に取り込まれてからというもの、彼の姿を見た者は一人もいなかった。


それから幾年月、駄菓子屋は忘れ去られたまま、時折訪れる好奇心旺盛な子どもたちが箱の中の飴玉に手を伸ばす。彼らもまた、亮太と同じ運命を辿るのかもしれない。しかし、その結末を知る者は誰もいない。


飴玉の箱は、静かに彼らの運命を見守り続ける。静寂の中で、亮太の意識は薄れ、やがて完全に消えていった。古びた駄菓子屋の不気味な謎は、誰にも解かれることなく、ただそこに存在し続ける。


**完**

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飴玉恐怖談話 白鷺(楓賢) @bosanezaki92

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