第4話 違和感
「タカヤくん!放課後、デートしよ♪」
俺が教室に戻ると、水口さんが僕に近づいてきてそう提案してきた。
俺はさっきのこともあり一瞬ためらったが、二つ返事で了承した。
・・・・・・
水口さんとのデートは多くの学びがあった。これまで生きてきたグループが違ったのだから当たり前だが、それでも平然と放課後のデートで流行りのものを買い食いする人が実在したことには思わず関心してしまった。
なんか流行ってるらしいとコンビニでそれっぽいパチモノを買う俺とはえらい違いだ…
なんて色々言ってみたものの、何より水口さんのことをしれて嬉しかった。
けれど、俺の心にはずっと引っかかるというかモヤモヤというか…とにかく形容し難い違和感があった。
そしてそろそろ解散する流れになったところで水口さんが俺に尋ねてきた。
「楽しかった?」
「うん、もちろ…」
ここで俺の言葉が止まった。それは楽しかったかどうかが違和感の正体だったからだ。
俺はこのデートで水口さんのことと、その界隈のことを知った。好きな人のことを知れたのだからこれは凄く嬉しいし光栄なことだ。
けれど、それとデート自体が楽しいものだったかは話が別だ。俺は水口さんが勧めてくれたものを無意識に自分には合わないと感じていたのだ…
「どうしたの?タカヤくん?」
俺はその水口さんの言葉で現実へと戻る。
「えっと、うん!水口さんのことしれて嬉しかったよ!」
そう答えると、水口さんは満足げな笑顔を浮かべて解散しようとした。俺はそんな彼女を引き止めて行った。
「水口さんは、なんで俺とお試しで付き合おうと思ったの?」
するも水口さんはキョトンとした表情で答えた。
「えっと…もっとお互いのことを知ってから決めたかったから?」
「そっか…そうだよね」
「うん!そうだよ♪それじゃっまた明日ね♪」
彼女はそう言うと軽い足取りで改札をくぐり行ってしまった。
・・・・・・
俺は家に帰り1人もの思いにふけっていた。水口さんはお互いのことを知ってから結論を決めたいと言っていた。それはきっと嘘じゃない…嘘じゃないと分かっているのに、何故だか胸の中で腑に落ちていない自分がいる。
そんな中不意に携帯に目をやると、不在着信が入っていたことに気づいた。おやすみモードにしていたから気づかなかったが、綾音からだった。
それに気づくと俺はすぐに綾音に折り返しの連絡をした。出ないかもしれないとも思ったが意外にもすぐに綾音は電話に出た。
「もしもし…」
「おう、悪いなすぐに電話出れなくて」
「いいわよ別に…ただ水口さんとのデートがどうだったのか聞きたかっただけだから」
その言葉に俺は驚き、言葉が出なかった。
「…おーい、隆哉?どうしたの?」
「あ、ああ…えっと」
俺がそう言い淀むと、綾音はため息を1つ吐いて尋ねる。
「何かあったのね、言ってみなさいよ。どうせ1人で悩んでたんでしょ?」
あまりにも全てを言い当てられてしまい、思わず失笑してしまった。昔からコイツには敵わないな…
「そうだな、聞いてくれるか」
そうして俺は今までの事を全て話した。すると、綾音は『なるほどね』と呟いて話し始める。
「つまりアンタはお互いのことを知ってからってところにモヤっとしてるのよね?」
「だと…思うが」
「そう…それなら原因は…」
「水口さんがアンタのこと知ろうとしてくれてないからじゃないかしら?」
意外にもその言葉はスッと俺の胸を通った。確かにあの時水口さんは俺の意思は半ば気にしていないような状態だった。
しかし、問題は次の言葉だった。
「で?アンタはその状態でいいの?」
その言葉に俺は何も答えられなかった。普通そのままでいいはずがない。けれど、ただ何となくで決めちゃいけないと思っている自分がいる。
「あーっ…どうなんだろうな…」
すると、綾音は痺れを切らしたのか大声で言った。
「あーもう!まどろっこしいわね!いい!?今すぐいつもの公園に来なさい!」
「説教してあげるから!」
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