第28話 八月 第二の堰(せき)
私たちの川旅は平穏に続いていた。
岸辺の道や広場には、散歩する老人、サイクリングを楽しむ人、ベンチで本を読む若い女性、親子連れで散歩する人などが、それぞれの人生の貴重な時間をゆったりと過ごしているのが見える。
そちこちにメジロやシジュウカラのかわいいさえずりが聞こえ、浅瀬では細い脚を水にひたしたシラサギがじっと川面を見つめ、川の中の石の上では数羽のカワウが時おり羽を広げながらひなたぼっこをしている。上空ではトンビが輪を描いている。
私たちが笑顔であいさつすれば、見知らぬ人たちも笑顔で応えてくれる。温かな心のやりとりを繰り返しながら、私たちはゆったりと川を下っていく。
あまりにも平和でのどかて気持ちの良い風景だ。こういう幸せなひとときを、いつまでも味わっていたい。
私たちはパドルの手を休め、ゆったりとした川の流れに身を任せた。
やがて再び大きな堰が近づいてきた。堰の手前では水の流れはぴたりと止まり、湖のようにゆったりと水をたたえている。だが、さっきの堰にあったような魚道は見当たらない。私たちは、いかだを岸に寄せた。川岸は水面から高さは二メートルほどの崖状になっている。いかだを崖のすぐ近くの木の枝にひとまず結びつけ、私たちは傾斜した壁を苦労して登って上陸した。そして崖の上から手を伸ばしてロープをつかみ、いかだを四人で引っ張り上げようとした。
しかし、私たちの背たけより高い岸に、重いいかだを四人だけで引き上げるのは難しい。何とか四人の力で半分ほど引っ張り上げたところで、いかだはズルズルと滑り落ちた。クスシが言ったとおり、重いいかだを岸に上げるのはとても困難だったんだ。
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