第9章「患者さんから学んだこと」

「ねえ、宮藤さん。私、精神科医をやってると本当に色んな患者さんに出会うのよ」

 麗華は、真面目な顔で語り始めた。

 

「色んな患者さん、ですか。確かに、悩みも十人十色ですもんね」

 宮藤さんは、興味深そうに頷く。

 

「そうなの。でもね、みんなそれぞれに実は人生の答えを持っているのよ。答えっていうか、実感っていうか」

 麗華は、にやりと笑う。

 

「人生の答え、ですか。患者さんが?」

 宮藤さんは、驚いた表情を浮かべる。

 

「そう。例えばある患者さんは、信仰で救われていたの。神様への祈りが、生きる支えになっているって」

 麗華は、感心したように言う。

 

「なるほど、信仰の力ってすごいんですね」

 宮藤さんは、納得した様子だ。

 

「でも、信仰だけじゃないのよ。ある患者さんは、家族の絆に生きる意味を感じているの。家族を守ることが、自分の存在意義だって」

 麗華は、微笑む。

 

「家族か……。確かに、家族がいるから頑張れる、ってことはありますよね」

 宮藤さんも、共感する。

 

「そういうこと。十人十色っていうか、正解なんてないんだなって気づかされるのよ。むしろ、自分なりの答えを見つけられた人は、きっと幸せなんだろうなって」

 麗華は、目を輝かせる。

 

「自分なりの答え、か……。先生は、どうなんですか?」

 宮藤さんは、興味津々に尋ねる。

 

「私? 私はまだ模索中よ。患者さんほど、確固たる答えは持っていないわ」

 麗華は、照れくさそうに笑う。

 

「でも、患者さんと接していく中で、何か見えてきたりするんじゃないですか?」

 宮藤さんは、期待を込めて言う。

 

「そうね……。ちょっとずつ、見えてきたことはあるわ」

 麗華は、真剣な表情になる。

 

「どんなことですか?」

 宮藤さんは、身を乗り出す。

 

「例えば、ある患者さんは言っていたわ。『人生に意味なんてない。でも、意味がないからこそ、自分で意味を見つけるんだ』って」

 麗華は、感銘を受けたように語る。

 

「なるほど……。意味がないことが、意味になる、ってことですか」

 宮藤さんは、深く頷く。

 

「そう、パラドックスよね。でも、なんだかすごく腑に落ちたのよ。意味がないからこそ、自分で見つける。その姿勢が大事なんだって」

 麗華は、力強く言う。

 

「確かに、そういう生き方もありですよね。先生は、その言葉に共感したんですね」

 宮藤さんは、麗華の気持ちを汲み取る。

 

「ええ、共感したわ。だって私も、人生の意味なんてわからないもの。でも、だからこそ自分なりの意味を見つけようと思えたのよ」

 麗華は、にっこりと微笑む。

 

「先生らしいですね。前向きな考え方だと思います」

 宮藤さんは、感心した様子だ。

 

「でしょう? でも、これも患者さんから学んだことの一つよ。皆、知恵の宝庫なのよね」

 麗華は、患者さんへの感謝の気持ちを込めて言う。

 

「先生、患者さんから学ぶことが多いんですね。私も、もっと色んな人の話を聞いてみたいです」

 宮藤さんは、意欲的に言う。

 

「ええ、ぜひ聞いてみるといいわ。でも、変な人の話は聞かない方がいいわよ。特に、自称霊能力者とか」

 麗華は、苦笑する。

 

「霊能力者、ですか。なぜです?」

 宮藤さんは、不思議そうな表情を浮かべる。

 

「だって、霊なんて見えるわけないじゃない。あれは単なる詐欺よ。『あなたの前世はクレオパトラですね』なんて言われたら、笑っちゃうわ」

 麗華は、くすくすと笑う。

 

「先生、クレオパトラは褒め言葉じゃないですか。美人って意味で」

 宮藤さんは、からかうように言う。

 

「あら、私が美人だって言いたいの? でも、クレオパトラほどの美貌は持ち合わせていないわよ」

 麗華は、わざとらしく謙遜する。

 

「いえ、先生は十分美人だと思いますけど……」

 宮藤さんは、真面目な顔で言う。

 

「ちょっと、宮藤さん。そんなこと言ったら、私調子に乗っちゃうわよ。でも、ありがとう。褒められると素直に嬉しいわ」

 麗華は、にまにまと笑う。

 

「先生、私も患者さんから学びたいです。色んな人生観があるんですね」

 宮藤さんは、目を輝かせる。

 

「そうね。患者さんは、それぞれに人生の答えを持っているの。でも、その答えは人それぞれ。だから、宮藤さんも自分なりの答えを見つけることが大事よ」

 麗華は、優しい眼差しで言う。

 

「はい、先生。自分なりの答え、探してみます。先生との対話も、ヒントになりました」

 宮藤さんは、感謝の気持ちを込めて言う。

 

「どういたしまして。私も患者さんとの対話で、たくさん学ばせてもらっているのよ。お互い様ね」

 麗華は、にこやかに笑う。

 

「先生、これからも患者さんから学んだことを、私に教えてくださいね。先生の人生観、とても興味があります」

 宮藤さんは、期待を込めて言う。

 

「ええ、喜んで。でも、私の人生観なんてたいしたことないわよ。ほら、『ある女性精神科医の人生考察~まあ、そんな大したことじゃないけどね★~』ってタイトルでしょ?」

 麗華は、わざとらしく肩をすくめる。

 

「でも、先生の考察は私にとって貴重ですよ。大したことだと思います」

 宮藤さんは、真剣な表情で言う。

 

「そう言ってもらえると嬉しいわ。でも、私の考察もまだまだ未完成よ。これからも患者さんから学びながら、ブラッシュアップしていくつもりよ」

 麗華は、意欲的に言う。

 

「先生の成長、楽しみにしています。私も負けないように、自分なりの人生観を育てていきたいです」

 宮藤さんは、力強く宣言する。

 

「ええ、一緒に頑張りましょう。そして、お互いの人生観を披露し合うのよ。面白い考察ができたら、ノーベル平和賞ものよ!」

 麗華は、大げさに言う。

 

「ノーベル平和賞は流石に狙えないと思いますけど……でも、先生との対話は私にとって平和な時間ですね」

 宮藤さんは、にっこりと微笑む。

 

「まあ、平和賞はともかく、対話を楽しむことが大事よね。だって、人生について語り合うなんて、なんだかロマンチックじゃない?」

 麗華は、うっとりとした表情で言う。

 

「確かに、ロマンチックですね。哲学的な対話って、心が躍るような気がします」

 宮藤さんは、麗華の言葉に同意する。

 

「そうそう、哲学って素敵よね。難しいことを考えているようで、実は人生について真剣に向き合っているのよ」

 麗華は、きらきらとした目で語る。

 

「先生、哲学者みたいですね。麗華・ソクラテスとか」

 宮藤さんは、からかうように言う。

 

「まあ、私はソクラテスほどの知恵は持ち合わせていないけどね。せいぜい、ソクラテスの弟子の弟子の弟子ぐらいかしら」

 麗華は、謙遜しつつも嬉しそうだ。

 

「でも、先生は患者さんという最高の師匠に恵まれているんですよ。一人一人が、人生の教科書みたいなものだと思います」

 宮藤さんは、真摯な眼差しで言う。

 

「宮藤さん、素敵な表現ね。患者さんは確かに、私の師匠だわ。一期一会の出会いを大切にして、たくさん学ばせてもらっているのよ」

 麗華は、患者さんへの感謝の気持ちを込めて語る。

 

「先生、尊敬します。私も先生のように、色んな人から学びを得られる人になりたいです」

 宮藤さんは、憧れの眼差しを向ける。

 

「ありがとう、宮藤さん。でも、私はまだまだ未熟者よ。これからも患者さんと真摯に向き合って、もっと成長していきたいの」

 麗華は、謙虚な姿勢を見せる。

 

「先生の姿勢、尊敬します。私も負けないように頑張ります」

 宮藤さんは、気合いを入れて言う。

 

「ええ、一緒に頑張りましょう。そして、いつか二人で『患者さんから学んだ人生の答え』という本を出版するのよ。ベストセラー間違いなしよ!」

 麗華は、壮大な夢を語る。

 

「出版、ですか。先生の想像力は恐ろしいですね……」

 宮藤さんは、呆れつつも微笑む。

 

「想像力は大事よ。夢を描けない人生なんて、つまらないじゃない。だから、私は想像力を武器に、これからも患者さんと向き合っていくつもりよ」

 麗華は、きらきらとした眼差しで宣言する。

 

 患者さんから学ぶこと。それは、麗華にとって尊い財産だった。一人一人の人生観に触れるたび、麗華の世界は広がっていく。答えは一つじゃない。十人十色の答えがあることを、麗華は患者さんから教わったのだ。

 

 これからも、麗華は患者さんと真摯に向き合い、学び続けていくのだろう。そして、いつかその学びを『ある女性精神科医の人生考察』という形で世に問うことを夢見る。まあ、大したことじゃないけれど、麗華にとっては意味のある一歩なのだ。

 

「さあ、患者さんから学ぶ旅、まだまだ続くわよ!」

 

 麗華は、希望に満ちた笑顔で、新たな一日の始まりを告げるのだった。

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