第7章「魂の重さを測ってみたい」

「ねえ、宮藤さん。魂ってあると思う?」

 麗華は、ふと真剣な顔で尋ねた。

 

「魂、ですか。そうですね、宗教的には存在するとされていますが……」

 宮藤さんは、考え込むように言う。

 

「科学的には証明できないから、なかなか信じられないのよね。でも、心霊写真なんてあるくらいだから、何かしら存在するのかもしれないわ」

 麗華は、目を輝かせながら言う。

 

「心霊写真、ですか。あれは写真の撮影ミスとかいろいろ言われてますけどね……」

 宮藤さんは、懐疑的な様子だ。

 

「そうなのよね。でも、もし魂があるなら面白いことができるんじゃない?」

 麗華は、にやりと笑う。

 

「面白いこと、ですか?」

 宮藤さんは、不思議そうな表情を浮かべる。

 

「そう、魂の重さを測れないかなーって思うのよ。だって、魂があるなら質量もあるはずでしょ?」

 麗華は、真剣な顔で言う。

 

「魂の重さ、ですか。でも、どうやって測るんですか?」

 宮藤さんは、困惑した様子だ。

 

「簡単よ。死ぬ直前と直後で体重を測れば、その差が魂の重さってことになるんじゃない?」

 麗華は、得意げに言う。

 

「えっ、そんな……。でも、それって患者さんの協力が必要ですよね?」

 宮藤さんは、驚きを隠せない。

 

「そうなのよ。だから、患者さんに協力をお願いしようと思ったの。『人類の謎に挑戦する素晴らしい機会ですよ! 』って」

 麗華は、熱心に語る。

 

「先生、それは倫理的にアウトでしょう……」

 宮藤さんは、呆れたように言う。

 

「あら、そうだったわね。倫理委員会に却下されちゃったのよ。『患者さんは実験台じゃありません! 』って」

 麗華は、しょんぼりと肩を落とす。

 

「当たり前ですよ、先生。そんなこと、普通は思いつきませんって」

 宮藤さんは、呆れながらも笑ってしまう。

 

「普通じゃつまらないわよ。だって、魂の重さがわかったら大発見じゃない? ノーベル賞ものよ!」

 麗華は、夢見るような表情で語る。

 

「ノーベル賞、ですか。先生、欲張りすぎです……」

 宮藤さんは、苦笑する。

 

「だって、精神科医としては究極の研究テーマじゃない? 魂の正体を解明できたら、画期的よ!」

 麗華は、興奮気味に言う。

 

「確かに、魂の正体は気になりますけどね。でも、科学で証明するのは難しいんじゃないですか?」

 宮藤さんは、現実的な意見を述べる。

 

「そうなのよね。だから、証明できないなら想像力を働かせるしかないのよ。例えば、魂の重さが21グラムだったらロマンチックじゃない?」

 麗華は、うっとりとした表情で言う。

 

「21グラム、ですか。どうしてその数字なんですか?」

 宮藤さんは、不思議そうに尋ねる。

 

「あのね、映画で『21グラム』ってのがあるのよ。そこで魂の重さが21グラムだって設定になってるの」

 麗華は、得意げに説明する。

 

「えっ、先生。映画の設定を真に受けてるんですか……」

 宮藤さんは、呆れ顔になる。

 

「ちょっと、想像力が大事だって言ったでしょ? もし21グラムが本当だったら、ロマンがあるじゃない」

 麗華は、不満そうに言う。

 

「まあ、魂の重さを想像するのは自由ですからね。でも、あくまで想像の範疇ですよ」

 宮藤さんは、苦笑しながら言う。

 

「そうねえ。でも、想像するだけでも楽しいわ。もし魂が軽かったら、死んだ後に天国に行きやすいのかしら?」

 麗華は、楽しそうに考える。

 

「先生、さすがにそれは飛躍しすぎです」

 宮藤さんは、呆れつつも微笑む。

 

「あら、もっと大胆に想像しなさいよ。だって魂の重さなんて、誰にもわからないんだから」

 麗華は、にっこりと笑う。

 

「確かに、わからないからこそ想像が膨らむんですよね。先生の発想力には感心します」

 宮藤さんは、感嘆の声を上げる。

 

「でしょう? 私の想像力は誰にも負けないわよ。だから魂の重さを測りたいなんて思いつくのよ」

 麗華は、自慢げに言う。

 

「でも、倫理的には却下されましたけどね」

 宮藤さんは、からかうように言う。

 

「ああ、そうだったわね……。残念だけど、仕方ないわ。でも、想像することは誰にも止められないもの」

 麗華は、負け惜しみを言う。

 

「そうですね。魂の重さを想像するのは自由ですから。先生なりの答えを見つけてください」

 宮藤さんは、優しく微笑む。

 

「そうね。私なりの答えを見つけるわ。例えば、魂の重さは人によって違うとか」

 麗華は、真剣に考え始める。

 

「どういうことですか?」

 宮藤さんは、興味深そうに尋ねる。

 

「そうね、善人の魂は軽くて、悪人の魂は重いとか。だって、罪を重ねれば魂も重くなるんじゃない?」

 麗華は、得意げに説明する。

 

「なるほど、面白い発想ですね。でも、善悪の基準は人によって違いますよ」

 宮藤さんは、鋭い指摘をする。

 

「あら、そうねえ。善悪の基準か……。それなら、自分の良心に従って生きた人の魂は軽いとかどうかしら」

 麗華は、さらに想像を膨らませる。

 

「先生の想像力は底知れないですね。でも、魂の重さを測る方法がない以上、想像するしかないですね」

 宮藤さんは、納得したように頷く。

 

「そうなのよ。だからこそ、想像力が大事なのよ。科学で証明できないことでも、想像することで楽しめるでしょ?」

 麗華は、にっこりと微笑む。

 

「先生の言う通りですね。想像力を働かせることで、人生がより豊かになるのかもしれません」

 宮藤さんは、感心した様子で言う。

 

「そういうこと。魂の重さを測ることはできないけど、想像することはできるのよ。そして、その想像が私たちの人生を面白くしてくれるの」

 麗華は、満足そうに言う。

 

「先生、魂の重さについて考えるのは楽しかったです。想像力の大切さを教えてくれてありがとうございます」

 宮藤さんは、心から感謝の言葉を述べる。

 

「どういたしまして。私も宮藤さんと話せて楽しかったわ。これからも想像力を大切にしていきましょうね」

 麗華は、にこやかに言う。

 

「はい、先生。一緒に魂の重さを想像しましょう。善行を積むと軽くなるとか、面白いですよね」

 宮藤さんは、楽しそうに言う。

 

「ええ、そうね。善行を積むのは大事よ。そうすれば、私たちの魂はスルスル天国に行けるはずよ」

 麗華は、ウィンクをする。

 

 魂の重さを測ることはできないけれど、想像することはできる。そして、その想像が人生に彩りを与えてくれる。麗華はそう信じていた。科学では証明できない魂の存在も、想像力があれば楽しく考えられる。そう、魂の重さは測れないけれど、想像は誰にも止められない。麗華は、そんな風に魂の重さについて語るのだった。宮藤さんも、彼女の想像力に付き合わされながら、不思議と楽しくなってくる自分がいた。魂の重さなんて、結局はわからないことだけれど、想像することで人生が豊かになるのは確かなのかもしれない。

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