第6章「死んだらどうなるのかなんて、死んでみないとわからない」
「さて、宮藤さん。人生について考えていくと、避けては通れない問題があるわよね」
麗華は、真面目な顔で切り出した。
「避けては通れない問題、ですか?」
宮藤さんは、不安そうな表情を浮かべる。
「そう、それは……死よ」
麗華は、ドラマチックに言葉を区切った。
「死、ですか……。確かに、誰もが避けては通れない問題ですよね」
宮藤さんは、深いため息をつく。
「そうなのよ。でもね、死後の世界なんて誰も証明できないから、本当のところはわからないのよね」
麗華は、肩をすくめてみせる。
「そうですよね。輪廻転生を信じる人もいれば、無になると思う人もいますからね」
宮藤さんは、考え込む様子だ。
「私としては、死んだら無になりそうな気がするのよね。だって、生きている時だって無になる時があるもの。寝てる時とか、酔っ払った時とか」
麗華は、にやりと笑う。
「先生、それは無じゃなくて意識がないだけでは……」
宮藤さんは、ツッコミを入れる。
「あら、そうね。でも、意識がないのと無ってあんまり変わらないと思うのよね。だって、意識がないと自分の存在すら感じられないもの」
麗華は、まじめな顔で言う。
「なるほど……。でも、死後の世界が無だと思うと、ちょっと寂しいですね」
宮藤さんは、しんみりとした表情を浮かべる。
「そうね、寂しく感じるのは当然よ。生きていれば、色んなものに囲まれて、刺激も受けるけど、死んだら何もなくなっちゃうんだもの」
麗華は、遠くを見つめるように語る。
「だからこそ、今を大切にしないとですよね」
宮藤さんは、力強く言う。
「そういうこと。死ぬまでに、美味しいものをたくさん食べて、良い思い出をいっぱい作らないとね。たとえ死んだら無になっても、生きている間の思い出は残るはずだから」
麗華は、にっこりと微笑む。
「先生の言う通りです。今を精一杯生きることが大切なんですね」
宮藤さんは、頷く。
「でもね、正直言って死んだら無になるなんて、あまり本気で思ってないのよ。だって、もし本当に無になるなら、せっかく頑張って生きてきた意味がないじゃない」
麗華は、わざとらしく眉をひそめる。
「えっ、でも先生は無になると……」
宮藤さんは、驚いた様子だ。
「そう、無になるかもしれないけど、そう簡単に諦めるのも癪なのよね。だから、死んだ後のことも考えておかないとね」
麗華は、にやりと笑う。
「死んだ後のこと、ですか?」
宮藤さんは、不思議そうな表情を浮かべる。
「そう、例えば天国よ。キリスト教では、良い行いをすると天国に行けるって言うでしょ? だから、日頃の行いには気をつけないとね」
麗華は、真剣な顔で言う。
「先生、キリスト教徒だったんですか?」
宮藤さんは、驚きを隠せない様子だ。
「違うわよ。でも、もしかしたら死んだら天国があるかもしれないじゃない。だったら、念のために良い行いをしておいた方がいいと思うのよ」
麗華は、あっけらかんと言う。
「先生、それって パスカルの賭けみたいな考え方ですね」
宮藤さんは、感心したように言う。
「そうそう、パスカルの賭けよね。天国があるかどうかわからないけど、あると信じて行動した方が得だっていう考え方」
麗華は、にっこりと笑う。
「なるほど、死後のことはわからないけど、良い行いをしておくのは損はないってことですね」
宮藤さんは、納得したようだ。
「そういうこと。でも、良い行いをするのは死んだ後のためじゃなくて、生きている間のためでもあるのよ。だって、良いことをすれば気分が良くなるでしょ?」
麗華は、ウィンクをする。
「確かに、人助けをしたりすると、すごく気持ちが良いですよね」
宮藤さんは、微笑む。
「そうなのよ。だから、死んだらどうなるかなんて考えるより、今をどう生きるかが大事なのよ。でも、死んだ後のことを考えるのも悪くないわ。だって、それで今を大切に生きようって思えるなら」
麗華は、優しい表情で言う。
「先生の言う通りですね。死ぬまでに、たくさん良いことをして、たくさん笑って生きたいです」
宮藤さんは、前を向いて言う。
「それでこそ宮藤さんよ。きっとそうやって生きていけば、死んだ後も困らないはずよ。天国に行けるかはわからないけど、少なくとも地獄には行かないでしょうからね」
麗華は、笑顔で言う。
「先生、さすがに地獄はないと思いますよ……」
宮藤さんは、苦笑する。
「そうね、地獄はないかもしれないわ。でも、自分の心に地獄を作らないことは大事よ。悪いことをすれば、きっと心が痛むはずだから」
麗華は、真剣な眼差しで言う。
「なるほど……。心の平安を保つことが、大切なんですね」
宮藤さんは、深く頷く。
「そういうこと。生きている間は、心の平安を大切にして、死んだらどうなるかなんて、あまり気にしない方がいいのよ。だって、死んでみないとわからないんだから」
麗華は、肩をすくめて言う。
「先生らしい答えですね。死ぬまでには、まだまだ時間がありますからね。今を精一杯生きることに集中します」
宮藤さんは、力強く言う。
「それでこそ人生よ。死ぬまでには、まだまだやることがいっぱいあるわ。美味しいもの食べて、良い思い出作って、それで死ねたら本望よね」
麗華は、明るい表情で言う。
「先生、さっきからそればっかりですね……」
宮藤さんは、呆れたように言う。
「だって、死ぬ前にやっておきたいことNo.1は、美味しいものを食べることなのよ。特に、ケーキね。ケーキは絶対に食べておかないと」
麗華は、真剣な顔で言う。
「ケーキですか……。先生らしいです」
宮藤さんは、苦笑する。
「でしょう? 人生の最後に食べるなら、ケーキがいいわ。甘くて幸せな味だもの。それを味わって死ねたら、最高よね」
麗華は、夢見るような表情で言う。
「先生、そこまでケーキ好きだとは知りませんでした……」
宮藤さんは、驚いた様子だ。
「ええ、ケーキは私の生きる原動力よ。だから、死ぬ前にはケーキを食べて、幸せな気持ちで旅立ちたいの」
麗華は、にっこりと微笑む。
「先生と話していると、死ぬことさえ楽しそうに感じてきました」
宮藤さんは、不思議そうに言う。
「そう、死ぬことを恐れる必要はないのよ。むしろ、死ぬまでの時間を楽しむことが大事なの。だって、死んだらどうなるかなんてわからないんだから」
麗華は、朗らかに言う。
「先生の前向きな考え方、尊敬します。私も死ぬまでの時間を、もっと楽しく生きたいと思います」
宮藤さんは、笑顔で言う。
「ええ、そうして欲しいわ。人生は一度きりだもの。後悔なく生きるのが一番よね。だから、死ぬまでにやりたいことリストを作って、一つ一つ実現していくのもいいかもしれないわね」
麗華は、宮藤さんの目を見つめて言う。
「やりたいことリスト、いいですね。早速作ってみます。先生も一緒に作りませんか?」
宮藤さんは、期待に満ちた表情で言う。
「私のリスト? そうねえ……」
麗華は、少し考えてから、にっこりと笑う。
「1番はケーキを食べること、2番は世界一周旅行、3番は宝くじで1等を当てること、4番は宇宙飛行士になること、5番は……」
「先生、だんだん現実離れしてきましたね……」
宮藤さんは、呆れたように言う。
「あら、夢を見ることは大事よ。だって、夢があるから頑張れるんだもの。死ぬまでに夢を叶えられたら、最高じゃない?」
麗華は、きらきらした目で言う。
「確かに、夢があると生きる励みになりますよね。先生の夢、応援します」
宮藤さんは、微笑む。
「ありがとう、宮藤さん。あなたの夢も、ぜひ応援させてね。死ぬまでに、一緒に夢を叶えましょう」
麗華は、宮藤さんの手を握って言う。
「はい、ぜひ。先生と一緒なら、どんな夢も叶えられる気がします」
宮藤さんは、力強く頷く。
「そうこなくっちゃ。私たちは死ぬまで、夢を追い続ける仲間よ。一緒に頑張りましょうね」
麗華は、宮藤さんと固く握手を交わす。
死ぬことは避けられないけれど、死ぬまでの時間は自分次第。その時間をどう生きるかが、何より大切なのかもしれない。二人は、そんな思いを胸に、これからの人生を歩んでいくのだった。
死んだらどうなるのか、誰にもわからない。でも、生きている間に精一杯夢を追いかけることはできる。そう信じることが、人生を豊かにするのだと、麗華は思うのだった。死ぬことを恐れずに、今を全力で生きること。それが、彼女なりの答えだった。
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