新都市暦二六一年
ユネイル社の中庭に常設された
壇上には在りし日の歌姫、フラナデール・リティの
壇上の隅に置かれた花瓶に、金色の髪をした少女はポピーの花をそっと一輪挿した。
『……フラン』
年を経て深みを増した
『ユーロゥ様』
少女がしわの刻まれた顔を見上げると、彼は穏やかな笑みを湛えたまま伝えた。
『待たせてすまなかったね。今からなら、何とか昼前には
『はい』
二人は並んで本社のビルを後にする。振動の少ない無人自動車に乗り込むと、後部座席に座った少女は甘えるようにユーロゥの肩に寄りかかった。
『次の
『そうだね。最近はみんな良い
金色の髪を梳くように撫でながら伝えると、くすぐったそうに少女は笑う。けれどすぐに真剣な面持ちになって顔をうつむけた。
「……初代フランも、きっと、もっと歌いたかったでしょうね」
ぽつりと呟かれた言葉に、ユーロゥの手が止まる。しばらく考えた後で、そっと少女──三代目のフランに伝えた。
『案外今の方が、彼女は自由に歌えているかもしれないよ』
「そうでしょうか?」
『まあ、実際に聞いてみないことには分からないが。でも、
少女は何か言いたげな視線をユーロゥに向ける。けれどそれを声に発する前に、目的地に着いたことを知らせる人工音声が車内に流れた。
車を降りた先はユーロゥが創り上げた
『公演練習、がんばるんだよ。フェルマルークにもよろしく伝えてくれ』
小さく頷いた少女は、ふと内緒話を持ちかけるようにユーロゥの袖を引いた。
『思い残すことがないなんて言わないで、長生きしてください。
それだけ伝えると双子の
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