信仰と軌跡
フランの公演は
一般販売のチケットは完売した。集まった客層は若い世代が多く、男女比もおおむね想定通りだが、女性や子供連れの姿もそれなりにある。定点カメラから逐一送られてくる映像を、ユーロゥは公演場の情報管理室で眺めていた。
客席の照明が落とされると、舞台の中心にフランが現れる。
身にまとうのは新進気鋭のデザイナー、パルテナ・ミレイの手がけたドレスだ。
上半身を覆う目の覚める
古来、歌は祈りであったらしい。
彼女はどちらなのだろう。音を捨て、神を捨て、死後は高温焼却の後に公共機関によって処理される
金の髪に被された冠から垂れる
フランが顔を上げた。
胸元の
(そう、この表情は
一曲目はフラナデール・リティが
穏やかな旋律で紡がれる子守歌は、精神を安定させる音程を脳神経研究所と共同で組み上げた。無償で配信したのは
『未知への探求』を
ミレイ社から『彼女をイメージした衣装を制作したい』と
(……五年、長いようであっという間だった)
(ああ、そうだ。初めて君の歌を聴いたその時から、僕はとっくに君のファンだった。不自由な篭の中にいるとは思えない、どこまでも自由な君の歌に、僕はずっと心惹かれている)
やがて舞台の幕が下りる。
ユーロゥは息を整えた。
今の顔は、絶対に彼女に見せられない。自分は雇い主として、そして無二の戦友として、喝采の余韻に浸る彼女を穏やかな表情で迎えに行かなくてはならない。
(……ん?)
関係者通路を歩く、大きな花束を持った女の姿。その特徴的な
ユーロゥは眉を寄せると足早に管理室を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます