防音材と音楽
ポピーウールは、ユネイル社が開発した防音材の名称だ。
『採掘した
リラは薄い笑みで頷くと、深みのある
『そうして一代にして巨万の富を築いたユネイル社が次に着手したのが、音楽事業でしたね』
ポピーウールで得た莫大な財を、ユネイル社は当時ごくごく限定的な娯楽であった音楽という分野に投資した。
リラは軽く小首を傾げて尋ねる。
『一連の流れを、世間では皮肉と受け取る目もありますが。ユネイル社はポピーウールで作り上げた壁を自ら壊そうとしている、と』
完璧な静寂を推し進める中に、敢えて音を浸透させようとする行為。そこに矛盾はないのかと問う視線をユーロゥは穏やかに受け止めた。
『ポピーウールは原料の採掘から加工まで、
ユーロゥは隣に座るフランに視線を向けた。
『これからは
『その象徴が
『その通りです』
そこからは、二週間後に予定されている彼女の
『ミズ・マーズ』
『今度のフランの公演、あなたにもチケットをお送りしましょう』
『いえ、そんな』
『ぜひ一度、彼女の歌を聴いていただきたい。もし予定が合わなければ廃棄してしまって構いませんよ』
それ以上固辞するわけにもいかないと判断したのだろう。リラは困ったような笑みを浮かべて頷いた。
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