彼が宇宙に行った理由
昔々、あるところに一人の少年がいた。
その少年は、特にこれといった夢もないまま成長し、気づけば高校生になっていた。
なので、進路希望表に『特に無し』と書いたところ、逆に親や先生から心配されていた。
そんな周囲の人々を尻目に、少年は夢を抱くことも、憧れを抱くこともなく、ただただ平凡に日々を過ごしていた。
それが、彼にとっての日常であった。
───少なくとも、それと出会うまでは。
それは、少年が夕飯時にテレビを見ていた時に映った物で、それを見た少年は、思わず食い入るようにテレビを見た。
そのテレビの画面を見る少年の目は、いつしか爛々となり、箸で持っていたご飯をポトリと落とした。
そして、少年はそれに魅了され、いつしかその職業に、宇宙飛行士に憧れを抱いた。
そのため、彼はその年の進路希望表に宇宙飛行士と書いたところ、彼のクラスメイトは途方もない夢だと笑った。
だが、少年が初めて夢を持ったことに対し、少年の親は飛んで喜び、教師は泣いた。
その時、少年は初めて夢を抱く幸せを実感した。
そして、その日から少年は夢に向けて努力し始めた。
あまり力を入れてなかった勉強をし始めたり、図書室に通ったり、ネットで調べたりと、宇宙飛行士について色々と行なった結果、彼は宇宙飛行士の候補生となった。
候補生となってからは、厳しい訓練が待ち構えていたが、彼はその夢のために歯を食いしばり、がむしゃらに、懸命に頑張った。
やがて、人々は彼の努力を認め、彼は晴れて宇宙飛行士となり───宇宙ステーションに行くことになった。
その瞬間、彼は自身の夢に一歩近づいたような感覚になり、自然と頬が緩んだ。
一方、少年の夢を嘲笑っていた人々は、掌を返したかのように彼を称賛し、褒め称えた。
そんな人々を気にすることなく、彼はスペースシャトルに乗り、宇宙ステーションへと旅立った。
──全ては自身の夢を叶えるために。
「よぉ、何食ってんだ?」
「ラーメン」
「ラーメン!!いかにも日本人らしいセレクトだな!!」
「言っとくけど、やらねぇかな」
「何だよ!!ケチだなぁ」
「ケチで結構。俺はこれを食べるためにここに来たんだからな」
彼が宇宙飛行士を目指した理由。
それは、宇宙食に加工されたラーメンを食べるためであったことは、今のところ、まだ誰も知らない
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