期間限定の誘惑

いつものようにコンビニに行ったら、いつも買うカップラーメンの新作が出てた。

しかも、それが期間限定の味というオマケ付き。


それを見た瞬間、僕は買わねばという衝動に襲われた。

どうして新商品はこうも魅力的なのか。

どうして期間限定の味はこうも衝撃的なのか。

どうして人間はこういう物に弱いのだろうか。

まぁ、アダムとイヴが禁断の実を食べた時点で、人類は昔から欲に弱いんだろうな。

そんなことを思いながら、僕はそれに手を伸ばそうとした。


しかし、そのカップラーメンを手に取ろうとした瞬間、それを買うためだけにお金を消費しても良いのだろうか?という天使の囁きが聞こえた。

その瞬間、僕はそのカップラーメンから手を離した。


確かに、カップラーメンはいつでも買える。

なら、無理して買わない方がいいのではないか?

そう思った僕は、その場から立ち去ろうとした───が、足が自然とカップラーメンの売り場の方はと戻ってしまった。


今日はお菓子を買うだけだったのに、どうしてこうも僕は誘惑に弱いんだろう。

そう思いながら、期間限定のカップラーメンをジッと見つめる僕。


そもそも、このカップラーメンは美味しいのだろうか?

そう思った僕は、手に持っていたスマホを使って、期間限定のカップラーメンの評判を調べようとした。

だが、そこでも天使がこう囁いた。

予め調べたことで、食べた時の感動を失ってもいいのか───と?


天使の言う通り、先にカップラーメンの評判を調べることによって、どんな評価なのかが分かる反面、食べた時の感動は減る。

ならば、調べない方が良いだろう。

そう思いながら、僕はスマホをズボンのポケットへとしまった。


それから、僕は阿呆でも天才でもない頭脳をフル回転し、このカップラーメンを買うかどうかを熟考した。

こんなことで頭脳を使うのはどうかと思うが、僕にとっては、それほどまでに重要な事案だったのである。


どうする、どうすると考えていた時───どこからか、こんな声が聞こえた。


「あの、早くしてくれませんか?」


その声を聞いた瞬間、僕は我に返った後、急いで期間限定のカップラーメンをカゴの中に入れて、いそいそとレジへと向かった。

何だ、僕に足りなかったのは催促する声だったのか。

レジで会計されているカップラーメンをボーッと見ながら、そんなことを思う僕。


そして、レジにいた店員にお礼を言った後、僕はカップラーメン入りのレジ袋を片手に家への帰路に着いた。


その後、僕は念願だった期間限定のカップラーメンを食べたものの、その味は何とも言えない味だった。

その時、僕は思わずこう思った。

真剣に考えていた時間を返せ!!と───

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