カップラーメンを待つ間に読む小説

@marumarumarumori

地球で最も美味しい料理

ある日、地球に宇宙人がやってきた。

その宇宙人は、いわゆる典型的なUFOと共に現れたタコ型の宇宙人で、その見た目とは裏腹に高度な技術を有していた。

彼らの目的はもちろん地球侵略で、そんな宇宙人達に対し、当然ながら地球人達は大騒ぎした。

やれ地球は終わるだの、やれ宇宙人に食べられるだの、地球人が絶望し、最後の晩餐を行うために、スーパーに殺到した。


だが───地球人のトップと思われる人々に対し、宇宙人達がある条件を提示した。

それは、『地球で最も美味い料理』を提供すれば、地球の侵略は免れるという何とも厄介な条件で、当然ながら、地球人のトップ達はそのことに頭を悩ませた。

何せ、地球という星には無数の料理が存在するため、彼らが頭を悩ませるのも無理はなかった。

しかも、地球人のトップ達は自国の料理に誇りを持っていたので、一歩たりとも意見を退かず、我が国の料理こそが一番だと主張した。


そして、地球人のトップ達は話し合いの末、『地球で最も美味しい料理』の調理を世界に名だたる料理人達に依頼し、料理人達は早速その料理の調理に入った。

料理人達は、手分けをしてその料理の調理を始め───あっという間に、料理を作り上げた。


しかし、それだけではこの料理は完成しない。

何せ、この料理を提供するのは宇宙人。

地球人の味覚と合わない可能性を踏まえ、地球人のトップ達や味覚の専門家達の意見を貰いながら、味を微調整していった。


それから数日が経った頃───試行錯誤の末、とうとう地球で最も美味しい料理が完成し、宇宙人に提供するだけ────だったのだが、当の宇宙人達はその料理を食べなかった。


何故、宇宙人達がその料理を食べなかったのか。

その理由は簡単で───もう既に『地球で最も美味しい料理』を食べたからであった。

宇宙人を虜にした『地球で最も美味しい料理』、それは世間一般的に言うところのカップラーメンだった。


彼らがカップラーメンに出会ったのは、料理人達があくせく調理している最中のことで、たまたま夜の地球を散歩していた宇宙人のうちの一人が、公園で一人寂しくカップラーメンを食べている日雇い労働者を発見。

そのカップラーメンに興味を示した宇宙人は、日雇い労働者からカップラーメンを一口貰ったところ、その味に衝撃を受けた末に、カップラーメン目当てにコンビニに駆け込み、お目当ての品を買いまくった。

そして、そのカップラーメンを両腕いっぱいに抱えながら、UFOの中に帰還。

すると案の定、彼の同僚と上司はそのカップラーメンに興味を示していたので、彼はカップラーメンを仲間達に配ったところ───仲間達どころか、彼らのリーダーですらカップラーメンの虜になり、カップラーメンを『地球で最も美味しい料理』として認定したのが、ことの真相であった。


そんなわけで、地球は宇宙人達の魔の手から救われ、宇宙人達と地球は国交を結んだのだが───その救世主がまさかのカップラーメンだったことに対し、地球の命運のために料理をしていた料理人達は、何とも言えない気持ちになるのだった。

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