群れからはぐれる
「特典の確認が終了いたしました。」
特典の鑑定士である私、シルロス・プレーリーは呼応者たちの特典の結果を持ち、雇い主に報告をしている。
しかし、依頼主の要望にどうにも違和感を抱いてしまう。
なぜ特典が無いものにもあるように伝える必要があったのか。
特典が目覚める時期は人それぞれなはず。
目覚める可能性をわざわざ潰しておくのがどうにも否めない。
勇者として召喚したならばそのような事は行わないはず。
「ただ1人だけでしたが、特典を発現させていないものがおりました。」
結果を書き記した紙を渡し、依頼主である大臣の様子を伺う。
「…ふむ、ご苦労であった。」
顎に手を当て難しい顔をしていらしたが、兵に耳打ちをし、こちらに振り直る際には既に国民に見せる笑顔を浮かべて労いの言葉をかけていた。
「では失礼いたします。」
これで仕事は終わりなのだが、やはりどうにも気になって仕方がない。
今度様子を見に行くのも良いかもしれない。
◇◇◇
「いい湯だったー。」
「そうだね。湯は良かったね。」
湯の部分を強調したことから、まだ怒りは収まっていないようだ。
「あはは…」
苦笑いをしてピリついていた空気を元に戻す。
「…まあとりあえず部屋に戻ろうか。」
「りょうかい」
部屋に戻り、軽くくつろぐ。
「…これからどうする?」
「そうだな…正直ここにいて安全かと言われるとそうでも無いように思えるんだよな。」
どうにも胡散臭いし
「それもそうなんだよね。」
「まあでもここのこともわかってないしな、それまではここに居るしかないだろうな。」
「……そうだね。」
少しの間沈黙が訪れる。
それを破るようにドアがノックされた。
「お食事の用意が出来ました、1階へお越しください。」
そう外から声が聞こえた。
「…いくか?」
「…いこうかな。」
2人で廊下を進み、階段まで行く。
階段には豪華な手すりが備え付けられており、天井にはシャンデリアがある。
やはりここは城か屋敷なのだろう。
1階に降りると既にほとんどの人間が来ていた。
各々バイキングのように料理をとって食べており、他愛もない会話をしていた。
「食うか?雅人。」
そう俺が聞くと少し考えるような素振りをしながら雅人は顔を顰めた。
「…っ、いや、やめておくよ」
「そうだな。」
俺らは1階にいても特にやることも無いので部屋に戻ることにした。
「おい待てよ」
そう背後から肩を掴まれる。
突然の事で驚いて後ろを振り向く。
「獅子島…」
「少し付き合えよ」
「何の用だ?」
「いいから着いて来いって言ってんだろ!」
引っ張られ、バランスを崩しそうになったので獅子島を突き飛ばす。
「…あ?」
突き飛ばされた獅子島は怒りを露わにする。
「颯汰、お前今俺に何しやがった?」
「いや、転びそうになったから…」
「うるせえ!」
そう言って殴りかかってくる。
すると獅子島の腕を横にいる雅人が掴んだ。
「獅子島君、すこしふざけすぎじゃないかな。」
そう宥めるように雅人が言う、それでさらに激昂したのか青筋を立てながら次は雅人の腹に目掛けて殴り掛かる。
さすがに見ていられないと思い、獅子島の腕を掴んで背中にまわし、足を掛けてうつ伏せの状態にする。
「ぐっ!はなせ!」
「獅子島、もっかい言うぞ、何の用だ?」
拘束を解いてもう一度聞いた。
「っく!」
俺に取り押さえられたのが悔しかったのか歯を食いしばりながら去っていった。
周りを見てみるとすっかり注目を受けていた。
しかし、その時の俺を見る目がどうも違和感があった。
まるで、俺を非難するかのような。
───────
少し忙しくて執筆ができていませんでした。申し訳ありません。
これからバンバン書いていくのでよろしくお願いします。
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クラス転移したと思ったら俺だけ呼ばれてなかった マキシマム @makishimam
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