第40話 かっての仲間たちへ 今を楽しめば良い。
ライト達はどうやら奴隷を11人も購入したらしい。
奴隷商から聞いた。
これで良いのかも知れない。
恐らくライト達は魔王どころか幹部にすら勝てない様な気がする。
確かに4人は強い。
だが、それは俺に毛が生えたような物だ。
ライトが強いと言っても、もし俺が3人居たら倒せる。
もし、勇者パーティ4人が揃っても、俺が20人居たら倒せる。
たかがA級冒険者20人で倒せるような勇者パーティが魔王に勝てるとは俺には思えない。
巻き込まれたとはいえ、幼馴染だ。
所属していた時は、どうやって勝たせるか考えていたが……どう考えても勝たせる事は出来なかった。
『死の運命』から逃げられないのなら……自由にして良い。
そういう思いが日に日に強くなった。
追放された時も、カナの事もあったが、頭のどこかに『死の運命から逃げられる』そんな思いも無かったとは言い切れない。
ライトは……強い勇者じゃない。
ちょっと調べればわかる。
勇者とは魔王を倒せる兵器。
言い方を変えれば『魔王すら倒せる化け物』じゃ無ければならない。
だが、ライトはどうだ……俺には化け物には見えなかった。
俺に倒せる方法が浮かぶような人間が魔王に勝てるとは思えない。
『魔王討伐』それは、勇者というジョブを持つ人間が『死ぬ程努力』した結果……成せる偉業だと思う。
勇者としての才能が低いライトが努力しないのだから、そこに到達できる筈はない。
聖女のマリアンヌだってそうだ……魔王を討伐出来た時の聖女の多くは、『エリアヒール』『パーフェクトヒール』が使えた。
エリアヒールは周りの人間すべてを回復するヒールだ。
パーフェクトヒールは死んでいなければ確実に回復させる最強の回復呪文。
その二つが恐らく魔王討伐には必要な筈だ。
だが、マリアンヌはハイヒールもいまだ覚えていない。
悪いがライトと同じで才能が無いとしか思えない。
剣聖のリメルも同じだ。
才能のある剣聖は何でもぶった切ってしまう。
実力のある剣聖なら、オリハルコンを只の鉄の剣で切断出来る。
だが、リメルはようやく『斬鉄』鉄で鉄が切れるだけだ。
このままリメルが成長しても『何でもぶった切ってしまう恐ろしい剣聖』になんてなれないと思う。
そしてリリアだ。
精神的に甘えん坊で、いざという時に冷静な判断をしなくてはいけない『賢者』の役目が果たせていない。
賢者が使う呪文には『灼熱呪文』『絶対零度』など如何なる敵にも効果がある呪文がある。
それを覚えられるかどうかが魔王攻略のカギだが……まずリリアには無理な様な気がする。
つまり、何が言いたいのかと言えば、誰一人魔王の前に立つ資格すらない。
恐らくは旅の途中で死んで終わる。
そんな弱い勇者パーティに俺には見えていた。
一番成長できる時期を遊んですごしたんだ。此処から、心を入れ替えても奇跡でも起きない限り、魔王討伐どころか幹部にすら勝てずに旅は終わる。
お前達の性格が悪くなってくれて良かった。
ライト……
子供の頃の様に正義感が強く優しいお前だったら、きっと俺はお前を見捨てられなかった。
だが、勇者になり傲慢になり、俺を常に馬鹿にしてきて、俺に見せつけるように幼馴染との逢瀬を見せつけてきたライト……
努力しろと幾ら言っても『勇者だから大丈夫』だと話を一切聞かなくなったライト……
マリアンヌ……
俺の両親が死んで、絶望していた時に毎日の様に顔をだして食事を運んできてくれた、優しい子だった。
お前のジョブが聖女だった時、マリアンヌなら、可笑しくない。
そう、村の人間も俺も思っていた。
ライトと相思相愛だから、諦めていたが俺のこの世界での初恋は間違いなくお前だった。
だが……勇者パーティとして旅をし始めてからどんどん性格は変わっていった。
権力に溺れて、性格が歪んでいき表の顔は兎も角、裏で人を馬鹿にする女になったよな。
リメル……
男みたいで俺が両親を失った時に、無理やり外へ連れ出したのはお前だった。
外へ無理やり連れ出されてした魚釣り。
泣きながら塩魚を食べてのは今でも覚えている。
お前は楽観的で、今も変わらない。だが、『怠け者』だ。
幾ら言ってもジョブに頼って剣の腕を磨かない。
剣聖のジョブのせいで俺はお前に敵わない。
そのせいで『僕に勝てないリヒトが何を言うんだ!』そう言っていたが……お前の敵は俺じゃない。
強大な魔族だ。
そして模擬戦じゃなく、一度負けたら人生が終わる。
そんな戦いなんだぞ……
ミスリルを身につけた敵。
硬い鱗のドラゴン……それらと今のまま戦ったら死ぬしかない。
そんな運命が待っている。
だが、お前より弱い。
その一言で俺の苦言を一切聞かなった。
そしてリリア……
賢者は勇者パーティの司令塔。
常に冷静に戦況を見極めて、勇者に進言しなくちゃならない。
幾ら言っても本も真面に読まなかったな。
魔法の修行も気が向いた時だけだ。
幾ら言っても『四職でもない癖に』そう言っていたな。
『馬鹿にしてくれてありがとう』
性格が悪くなってくれて助かった。
きっと、昔の……優しい幼馴染のままのお前達だったら、きっと別に好きな人が居ても『見捨てられない』
一緒に多分俺は死んだのかも知れない。
だが、見捨てたのは俺からじゃない『お前達からだ』
それでも……失望させてくれてありがとう。
追放してくれてありがとう。
おかげで俺はこれからも生きていけるからな。
◆◆◆
ライト達が奴隷を11名買った。
これでますます『死に近づいた』
リヒト達はなんで4人なのかまるで解っていない。
それは隠密行動だからだ。
もし、魔王討伐に人数制限が無いなら数百、数千の部隊で動けば良い。
だが、それはしない。
それには理由がある筈だ。
恐らくそれをすれば、動きが魔族側に筒抜けになり常に居場所を知られる事になる。
その結果、魔族を追い詰め、魔王を追い詰める勇者側が、逆に追い詰められる事になる。
まして全員で15名での行動……どう考えても恰好の餌食じゃないだろうか?
人数を揃えるならそんな少数じゃない方が良い。
沢山の人数を指揮して戦えば良いと思う。
多分、15名という人数は悪手だ。
中途半端な人数で不利な気がする。
目立つ割には軍相手に戦える人数ではない。
恐らく、取り囲まれて死ぬ運命が待っている様な気がしてならない。
尤も、これは俺が考えているだけの話だ。
実際の所は解らない。
だが、俺には、明るい未来はどうしても見えない。
だから……今を思う存分楽しんで欲しい。
15人でハーレムを楽しむも良し。
教会のお金を湯水のように使って贅沢をするのも良いかも知れない。
皆が羨むような楽しい生活をすると良い……
11人の高級奴隷は村人なら決して手に入らない物だ。
思う存分、今を悔いなく楽しんでくれ。
そして……願わくば、死なないでくれ……
だが、それは恐らく叶う事は無いだろう。
だから、今を悔いが無いように思う存分楽しむんだ.......皆。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます