第29話 そう簡単に居る者じゃない
「リヒトくん……リヒトくん……」
「リヒトお兄ちゃん……リヒトお兄ちゃん……」
カナとミアの声が聞こえる。
どうしたんだ?
「ううん……あっ、俺、今……」
「リヒトくん、今、気を失っていましたよ」
「リヒトお兄ちゃん、ちゃんと寝ないと駄目だよ」
「確かにそうなんだけど、これだけはどうしても……」
「駄目です! このままじゃ大変な事になりますから、今日はちゃんと寝て下さい!」
「そうだよ! 家だから良いけど、こんなの魔物の討伐中に起きたらリヒトお兄ちゃん死んじゃうよ! 」
確かにそうだけど、この環境だとな……
この世の者とは思えない位の美少女二人との生活。
どうしても無理してしまう。
本来なら絶対会えない筈のアニメのヒロインとの生活。
これが楽しくない人形者なんて居ない筈だ。
だから、つい衣装作りも精を出してしまう。
「だけど……」
「「駄目ぇーーっ」」
そう二人に言われベッドに運び込まれたけど……
この状態で眠れるわけがない。
自分の再現性が恨めしい……
三人川の字状態になっているんだが、左を見ればミアが居る。
今日のミアはツインテールに青いリボン。
セーラー服風の白いワンピース……海が似合いそうな美少女キャラだ。
右を見ればカナが寝ている。
片側だけ結んだ赤いリボンの長い髪。
赤茶色と灰色のブレザー風制服にミニスカート。
紺のロングソックス…….
この状況で眠れるか?
髪の色こそ違うが、アニメのダブルヒロインが横にいる状態で眠るなんて事そうそうできない。
「あの……」
「リヒトくん、今日は駄目です! 私だってその……したいですが、リヒトくん駄目ですよ!」
「リヒトお兄ちゃん、ミアも駄目!」
これが俗に言う蛇の生殺し状態か。
いつもは、ここからベッドの上で運動をするから眠れるのであって、そうでなくちゃドキドキして眠れない。
可愛らしい大きな目で見つめられてみな。
絶対に眠れないからな。
「美少女二人に見つめられて眠れると思う? 俺はドキドキして眠れないよ」
本当のことを素直に言った。
「えっえ~とっ……そう言う事ならねぇミア……」
「それじゃ仕方ないね……少しだけしようか?」
やり始めると少しで済むはずがなく、気がつくとまた朝チュンしてしまった。
◆◆◆
あぁ~もう朝か……日差しが眩しい。
横で二人は満足そうにスヤスヤ寝ている。
行為が終わった後も俺の手にしがみ付くようにして……
まるで宝物を手放したくない。
そんな感じで手を絡めて寝るか、腕枕で寝ているか、はたまた手を繋いで寝ている。
必ず体の一部が繋がった状態で眠るのがもう三人の定番になっている。
外見からスタートした恋だったが……今は違う。
二人が愛おしくて仕方が無い。
カナやミアに会うまで、俺はライト達幼馴染と一緒に過ごしていた。
前世の記憶があるから『大人だから』と思っていた。
ライトがハーレムパーティを作っていった時も気にしなかった。
だが、俺はもしかしたら、心のどこかで『寂しい』と思っていたのかも知れない。
幾ら前世の記憶があると言っても、今の俺は若い。
今の体に引きずられてか、やはり寂しさがあったのかも知れない。
すぐにカナを買ったから……その寂しさは埋まってしまい気がつかなかったのか……
兎も角、今の俺は二人が愛おしくて仕方が無い。
今日はゆっくりしようかな……ゆっくり寝て起きたらデートするのも悪くないな。
◆◆◆
デートする筈だったのに……なんでこうなったんだ。
今、俺は奴隷商に来ている。
二人をデートに誘ったら……
「リヒトくん、家事奴隷を買いに行こう!」
「うんうん、このままじゃリヒトお兄ちゃん倒れちゃうからね」
そう言われていく事になったんだが……困った。
「これは、これはリヒト様、今日はどう言った奴隷をお求めで……」
ハァ~ まぁ素直に言うしか無いな。
「この二人みたいな容姿で家事が出来る子が居たら欲しいんだけど?」
「はははっ、そんな化け物みたいな容姿の女性は当方には居ませんよ……」
「「……」」
ほらな、カナもミアも凄く悲しそうな顔になった。
だから、此処には連れて来たくなかったんだ。
「まぁ気を取り直してリヒトくん、家事奴隷を見せて貰おう」
「うんうん」
「そうですよ! 家事に容姿は関係ないですから、リヒト様も普通に見てみては如何ですか? 」
「そう言うなら……」
絶対に居ないよな……
安い奴隷は中年のおばさん。
そこそこの金額の奴隷は元貴族に仕えていたメイド。
高額な奴隷はエルフで家事が出来る奴隷だった。
多分、二人に会う前だったらエルフで満足したかも知れない。
だが、此処で無理して購入しても可哀そうな事になる。
どう考えても俺は二人と同じに扱えない気がする。
『駄目だな』
「すいません、また来ます」
二人を連れて奴隷商を後にした。
「リヒトくん、家事奴隷なんだから妥協しても良いんじゃない?」
「リヒトお兄ちゃん、私もそう思うよ!」
「そうなのかも知れない。だけど仲間外れの寂しさを俺は知っている……勇者パーティに居た時に嫌って程感じたよ『当時はそうでもない』そう思っていたんだけど、カナやミアと暮らす様になって、『当時の俺は寂しかったんだ』それが解ったんだ! だから、時間がかかっても、やはりカナやミアと同じように思える人を探そうと思う」
「「リヒトくん(お兄ちゃん)」」
とは言え探すだけ探すか。
実は、もしかしたらという当てはある事はある。
だが、そこにはカナやミアは連れていきたくない。
この日はカナとミアと一緒に美味しい物を食べて宿へと帰った。
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