第28話 カナSIDE 心配です
「凄い事になっていますね……」
「リヒトお兄ちゃん、本当に凄いからね……」
私はミアと顔を合わせて思わず、驚いてしまいました。
毎日リヒトくんが服を作ってくれるから……
気がついたら、服やアクセサリーで一部屋まるまる埋まる分位あります。
「此処まで洋服を持っているのって、余程のお嬢様しか居ないですよねぇ」
「貴族令嬢とか解らないけど、こんな上等な服は他の人は着ていないと思います! 」
夜の営みで『愛している』って囁かれて抱かれるだけでも嬉しいのに……リヒトくんの愛が止まりません。
一緒に出掛けたら、いつも生地屋さんに行きますが、そこでリヒトくんが手にするのは高級な生地です。
貴族様が着るようなタキシードクロスの様な質の良い生地をいつも買われます。
この生地が自分の為でなく、全部私達の為なのです。
そして生地を買ったら、次はアクセサリー屋さんに行きます。
そこではリヒトくんは目を皿のようにして隅から隅まで見て気に入ったのがあると幾つも買います。
それが全部私達の物なのです。
私もミアも奴隷なんです。
奴隷なのに平民どころか貴族の令嬢並の生活をさせて貰っています。
外食に行けば席を引いてくれて同じ物を食べさせてくれます。
他の奴隷は粗末な服を着て床に座り硬いパンとスープを食べています。
こんな生活、最高級の奴隷エルフですらしていません……
普通は奴隷と言えば朝から晩まで働くものです。
それこそ、酷い者は鉱山で働き、普通の者でも朝から夜まで働き詰めの筈なのですが……
私もミアも何もしていませんよ。
食事を作るのも、洗濯をするのも、掃除をするのも全部リヒトくん。
私やミアがする事と言えば……リヒト様が作る服で着飾り、一緒に暮らしているだけです。
なにかしようとすると『一緒にいて貰えるだけで幸せだから』と微笑みながら言って手伝わせてくれません。
しいて、何かしているとすれば、それは伽の相手なのですが……
此処までしてくれるなら相手がどんなブサイクでも頑張りますよ。
ですが……相手はリヒトくん。
『英雄リヒト』と呼ばれている人気者です。
そんなリヒトくんが耳元で『愛している』『大好き』と耳元で囁かれながらのお相手です。
女の子の憧れリヒトくんに抱かれる。
これは……もうご褒美でしかありません。
今迄、誰からも愛された事が無い私やミアにとっては至福の時間です。
誰からも愛されず……抱きしめて等貰えない。
そう思っていた私達ですから……嬉しくて……たまりません。
少しでもリヒトくんに喜んで貰いたくて恥ずかしいのですが……貪るように激しく求めてしまいます。
多分、こんなに愛されている奴隷は何処にも居ないんじゃないでしょうか?
世界中の人に嫌われた、私やミアですが……
現金な物ですね。
たった1人に愛された……それだけでこんなにも幸せに思えるなんて……
リヒトくんが愛してくれるなら、全世界の人に嫌われても良い。
そう思える位にリヒトくんに愛される喜びを感じてしまいます。
だけど……
私もミアも、リヒトくんが心配で仕方ありません。
だって、リヒトくんは全く休まないのですから……
◆◆◆
「リヒトお兄ちゃん、いい加減休もうよ」
「リヒトくん、そのうち倒れちゃうよ!」
「大丈夫、これを縫ったら横になるから」
今日もリヒトくんは朝から夕方までゴブリン狩りをし生地を買いこみ私達の服を縫っています。
リヒトくん、目の下に凄い隈が出来ています。
そのうち本当に倒れてしまいそうで心配です。
「あのぉ~リヒトくん、どうしても今みたいな生活をしたいなら、家事奴隷を購入した方が良いんじゃないかな?」
「リヒトお兄ちゃん……ミアもそう思うよ! どうしてもって言うなら、家事が出来て裁縫も出来る家事奴隷を購入した方が良いと思うな」
いつか倒れる……そう思うと心配で本当に仕方ありません。
「家事奴隷!? 確かに居れば楽なんだろうけど、敷居が高くてね」
「家事奴隷なんて普通に売られていますよ」
「うん、沢山いるよ」
「カナやミアみたいに愛せそうにないから! 一人だけ扱いが違うのはその子にとって悲しいんじゃないかな? そう思えるんだ……多分、カナやミアみたいな美少女そうは居ないからね」
「「美少女!? ふわぁぁ」」
こんな事真顔で言われると顏が真っ赤になって口元が緩んでしまいます。
ミアも同じようです。
「うん、二人は俺にとって最高の美少女だもん」
「ありがとうございます、リヒトくん」
「リヒトお兄ちゃん、ありがとう」
こんな事を言われたら……どうして良いのか本当に困ってしまいます。
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