第22話 花子さん?


「ただいま~カナ、友達になれそうな子が居たから購入してきたよ!」


宿に戻って来た。


「ミアです……宜しくです」


「え~とカナです……それより、リヒトその子大丈夫なのですか? 体弱そうに見えますが」


まぁ、おぶさっていればそう見えるよな。


「ミアは、この通りの体なので皆に協力頂けないと生きてはいけません。カナさんにも迷惑をかけると思いますが宜しくお願い致します」


ミアを背中から下ろすとフラフラと歩き、カナに手を差し出した。


「え~と、私もこの容姿ですから、殆どリヒト無しじゃ生きていけないんで一緒ですよ! 気にしないで下さい」


「そうですか……助かります。それじゃお言葉に甘えて椅子と机をお借りします」


そう言うとミアは椅子に座り……前世で言う教室で机で寝ている学生みたいにテーブルに伏せた。


「なんだか、大変そうですね」


「まぁ、この体ですから、諦めています」


カナが理想の美少女だとすればミアはそれより幼い感じの美少女みたいに見えるな。


髪型こそ、違うが……ピンクの髪の使い魔がいる爆裂魔法使いか、同じピンク頭で大人に変身できる魔法少女というか、勘違いじゃなければ俺が前世で見た魔法少女の変身前はミアみたいな等身だった気がする。


あれはアニメだから違和感が無いんだな。


だって着ている服があの頭を通ると思えない。


「それじゃ、自己紹介も済んだ事だし、二人とも仲良くしてね」


「「はい」」


少し二人とも緊張しているみたいだが、そのうち慣れるだろう。


「それじゃ、カナ悪いけどミアをお風呂に入れてくれるか?」


「あれぇ~ご主人様が入れてあげないんですかぁ~」


ご主人様ね……


カナは基本的に仲良くなってからリヒトと呼んでくれるようになったけど、最近遊びで『ご主人様』とか『お兄ちゃん』と呼んで貰う事がある。まぁコスプレの延長戦みたいなものだ。


これはこの間したメイドさんプレイの真似だな。


女の子同士の方が良いと思ったんだけど……


「カナがそう言うなら、俺も一緒に入ろうかな」


ミアが転んだら危ないから、その方が良いかも知れない。


◆◆◆


「しかし、凄い汚れだな」


「仕方ありませんよ……奴隷、しかも買い手がつかない厄介者なんてこんな物です……水と固いパン、気が向いたらカビの生えたチーズしか貰えなくて、お風呂どころか水浴びすらさせて貰えないんですから」


「ミアはほぼ放置でしたから……汚くてすみません」


「気にしなくて良いんですよ! 私だって同じような物でしたから、今は違いますが……ね!」


俺がフォローする前にカナがフォローしてくれる。


結構良い関係になれそうだな。


俺とカナでミアを綺麗に洗い上げ、体を拭きあげ髪を乾かした。


しかし、二人が並んでいるのを見ると……魔法少女の変身前、変身後みたいに見える。


「リヒトどうかしたの?」


「ご主人様、どうかしたのです?」


「いや、二人とも凄く可愛いな……そう思ってつい見惚れていたんだ」


カナはもう言われ慣れたのか少し顔を赤くするだけだが、ミアは違ったようだ。


顔をまるで茹蛸のように真っ赤にし、アワアワしている。


「ミア……リヒトにとって私達はエルフよりも誰よりも可愛くて綺麗なんだそうですよ」


「うそじゃ無くてですか?」


「はい」


ミアが俺の方を驚きの顔で見ている。


「ああっ、本当だよ!」


「うっうっうあああああっーー」


泣いているミアに抱き着かれた。


二人が居る。


それだけで、俺はこの世界の主人公になったような気がする。


魔王とは戦わないけどな。


◆◆◆


「リヒト……大変そうですね!」


「私の為に、すいません……」


「良いんだ、その代り今日の夕飯は手抜きメニューで済まないな」


「これでも充分ご馳走ですよね。ミア」


「こんな美味い物、ミアは初めてです。ハグっ、うまうまうまいです……本当に美味いです」


「それなら良かった」


柔らかい白パンに、簡単なスープ。


それに果実水の簡単なご飯だ。


最近の俺が作るメニューの中じゃ凄い手抜きだ。


これから、ミアの服を作らないといけないから、今は僅かな時間が惜しい。


幸いカナの服を作る為に生地は結構買ってあるから問題は無い。


間に合わせで一式作らないとな……


ミアは頭が大きいから前ボタンのシャツの方が良いだろう。


それに赤い吊り下げのミニスカートに下着、取り敢えずこんな物か。


うん? これってなんのキャラクターの服だっけ。


まぁいいや、これで作っていこう。


「リヒトは本当に器用ですね。 料理も上手で優しくて理想の旦那様です!」


「ご主人様凄いです……ご飯も美味しかったし、裁縫まで出来るんですね」


「まぁ、少しね……」


「それだけじゃないんです! リヒトはあの『英雄リヒト』なのですから!」


「英雄リヒト……カナさん、それは幾らなんでも嘘ですよ……私を騙していませんか? 確かにご主人様はカッコよくて優しくて最高ですよ……ですが……あのリヒト様だなんて、そんな……」


「本当にリヒト様なのです!」


「あの……俺ってどんな風に伝わっているの? そんな有名人」


「「はい!」」


カナとミアの話では俺は『英雄リヒト』と呼ばれているらしい。


困っている村人を助ける為に大勢の盗賊と戦ったり……竜ですら倒せるカッコ良い人物として伝わっているそうだ。


うん……かなり美化されている。


盗賊と戦ったのはギルドの依頼だし、竜は一番弱い亜竜のワイバーンしか倒したことは無い。


まぁ、わざわざ訂正はしないけどな。


ようやくミアの服が出来た…….


「さぁ……できたぞ……あっ?」


「ご主人様、凄く素敵な服ですね」


「早速、着せてみましょう」


カナと一緒に着せてみたんだが……


完全にキャラクターを間違えた。


「ご主人様似合いますか?」


「凄く可愛らしいですね、私もこう言うの欲しいです」


「これは急ぎ作ったから間に合わせだよ! こんどもっと可愛いの作るから……」


「え~ご主人様凄く可愛いと思います。 こんな可愛らしい服ミア初めてきました……ううっううっ、本当にありがとうございます」


ミアは感動して泣いているし、カナも目を輝かせているが、これは失敗だ。


「私も可愛いと思いますが……」


「本当に急いで作った間に合わせだから、明日にでもしっかりした物作るからね」


自分では魔女っ娘の誰かの服を作ったつもりだったんだけど……


前世の記憶が虫食いなせいか失敗してしまった。


この服は『トイレの花子さん』だ。


まぁ、ミアが着ると凄く可愛いし、同人紙とかで描かれる美少女花子さんになるけどね。





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