第11話 ゴブリンだ。
「あの~リヒト様、他の依頼にしませんか?」
「知らん! そんな事よりゴブリンだ……」
今、俺はカナを置いて冒険者ギルドに来ている。
下のランクの冒険者の仕事は幾らでも受けられる筈なのに、何故か受付嬢に反対されている。
「リヒト様はAランクなんですから、せめてオーガ位にしましょう? ゴブリンは下のランクの冒険者に任せてあげましょうよ」
「そんな事知らない……な、俺はゴブリンの討伐を受けたいんだ」
「ハァ~仕方ないですね。ルール的には問題ないですから……はいどうぞ!」
嫌な顔をされながらようやく俺はゴブリン討伐の依頼を受ける事が出来た。
さて……今日から暫く俺は『ゴブリンバスター』だ。
◆◆◆
此処までゴブリンに拘るのには理由がある。
オーガは基本的に集団でいる事が少ない。
その為、単体でいる事が多い。
オークもオーガほどでないが精々数体。
やはり大量に狩る事が難しい。
しかも探す為に遠くまで行かないとならないケースが多い。
それに対してゴブリンは割と近くの森や洞窟に居て、かなりの数でいる事が多い。
その為『巣』ごと滅ぼすなら二十を超える事が多く、大きな巣なら百近い場合もある。
つまり、1体の金額は少なくとも『数を狩る』事が出来るから、結構稼げる。
そして何よりも近場なので朝出て行き夕方には帰ってこられる。
これなら……充分カナとの時間がとれる。
だから俺は……ゴブリンだ。
俺は……ゴブリンを狩る為に近くの森に来た。
探せば幾らでも居る……それがゴブリンだ。
『居た』
ここで普通の冒険者なら狩りに行く。
だが、俺は幾らでもゴブリンなら狩れる。
だから、一般的な冒険者なら近づかない『巣』を狙う。
数の暴力は案外怖い。
かなりの実力のある冒険者Cランクでも『巣』は狙わない。
もし狙うなら10人位で狙う。
だが、俺はA級だ。
ゴブリンなど、幾ら居ようが関係ない。
好きなだけ狩り放題だ。
そのまま、後をつけ『巣』までついて行った。
洞窟だ。
洞窟なら数が期待できる。
これなら最低20体は期待できる。
ここにはゴブリンしか居ない。
それなら……これが使える。
相手は格下……周りに誰も居ない。
「スキル、バサーカー」
これは、バサーカー状態で相手を倒しまくるスキルだ。
仲間をも攻撃してしまうから、仲間がいる状態じゃ使えない。
また、余程の怪我じゃないと正気に戻らないから、格上に使ったら死にかけない。
「グワルッ?」
「あーははははははっ……死ね、死ね、死ねーーっ」
剣を抜き、俺は情け容赦なくゴブリンを殺しまくっていった。
一体、二体……ゴブリンの死体がどんどん積み重なっていく。
気が付くと俺は……
「ハァハァ、ようやく終わったようだ……」
目の前に無数のゴブリンの死体が転がっている。
ざっと見ると100体は余裕でありそうだ。
ゴブリン一体、銀貨1枚(約1万円)だから、ざっとこれだけで100万円位か?
見た感じ、ホブゴブリンやゴブリンナイト、そしてゴブリンキングも居るから……金貨20枚(約200万)位いくかも知れない。
これだからゴブリンはやめられない。
オークやオーガだと見つけられなければ0だからな。
「あとは、宝物がどれ位あるかだが、ゴブリンじゃ期待できないな」
死体から討伐証明の右耳を切断していきながら倉庫を探した。
奥に扉が二つある。
一つは、所謂苗床だった。
可哀そうに……誰も生きていなかった。
もう一つの扉には……売れそうな物は無さそうだ。
錆びた剣や使い物にならない鎧。
討伐証明の右耳を刈り取り終わり、俺は苗床に火を放った。
火葬してあげないと可哀そうに思えたからだ。
洞窟に火が広がるなか、俺はゴブリンの巣穴を後にした。
恐らく洞窟だから、森には火は広がらないだろう。
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