第5話 カナの過去
近くにあった宿屋に入った。
下心があると思われるかと思ったがカナはそうは思っていないようだ。
「それで、あの……私をこれからどうするのでしょうか?」
良く見ると手が震えているし、目も潤んでいる。
大きな目からは涙が今にもこぼれそうだ。
「ただ一緒に暮らす相手としてカナを選んだだけだよ『一緒に暮らしたい』そう考えていただけで、そこから先はまだ特に考えてないな」
なんでだろう?
カナの顔が驚いた顔になった。
「あのご主人様はもしかして貧乏なのですか?」
「普通だと思うけど? なんで?」
装備だって普通だし、貧乏に見られるような恰好はして無い筈だ。
「だって私みたいな醜い女奴隷を買う位ですから……お金があるならもう少し真面な奴隷を買う筈ですよ? 違いますか?」
カナが真っすぐに俺を見つめてくる。
やはり凄く可愛い。
緑色の髪に大きな目、透き通るような肌にスレンダーな体型。
身ぎれいにしてミニスカートを履かせれば、そのまま悪夢を狩る女の子に、髪を短く切ってピンクの学生服を着せればドジな美少女ロボットに……虎のビキニを着せたら鬼娘になる。
此処まで完璧なアニメ顔を見た事が無い。
ちなみに水色シャギーにしたら、盾を持って守ってくれる女の子にもなりそうだ。
ただ、背の高さが少し低いから大柄なキャラクターは難しそうだけど……着替髪型を変えれば、かなり多くのアニメキャラになれそうな気がする。
「俺から見たらカナは凄く可愛いと思うけど?」
「嘘はやめて欲しいです……私がどれ程醜いかは自分でも解っています。 私を産んだお母様は化け物を産んだとお婆様に蔑まれました。 そしてお父様もお母様も絶対に『お父様』『お母様』って呼ぶなって言ってましたわ。兄妹を含む家族からも居ない物として扱うって言われて家畜小屋で生活していたんですよ。裕福な家に生まれたのに使用人以下。家畜以下の扱いだったんです」
「そう……なのか?」
「朝から晩まで家畜の様に働かせられて貰えるのは残飯だけです。 そればかりじゃありません。『銅貨1枚の価値すらつかない』そう奴隷商の人が言っていたのを覚えています。最後には奴隷商に『無料で良いから引き取ってくれって』言っていました。結局は他の奴隷と抱き合わせで私は引き取られたんです……」
幾らそう言われても俺には美少女にしか見えない。
ドーラーと言って人形のマスクを身に着けるコスプレもあったが、そんな物と全然違う本物……
本物のアニメキャラ……俺にとっては借金しても欲しい位の価値がある。
「それでも、俺には凄く可愛いく見えるよ!」
なんでかな? 更に嫌そうな顔をしだした。
「嘘はもう良いですよ。私の檻の中に毛布はありましたか? 無かったでしょう? 商品にならないから何も貰えないんです!奴隷商の義務の最低限の食事と水を一日1回貰えるだけ、寒くても毛布も貰えない……鉱山送りの奴隷ですら貰える毛布も与えたくない価値が無い存在、それが私なんですよ……それが可愛い訳ないじゃないですか......」
どう言うば良いんだろうか?
「世間一般ではそうかも知れない……だけど俺にとってカナは俺の好きな人(フィギュアとか人形)に凄く似ているんだ。 はっきり言えば容姿も声もスタイルの全部好みなんだ。これは嘘じゃないよ……幾ら言われてもこれは本当の事だからね」
カナはなんだか考えている。
「それが本当なら、ご主人様の好きだった人も凄く醜かったんですね……ご主人様が言った事が本当ならですけど? 本当に信じられません」
国民的、某ロボットアニメのヒロインフィギュア。価格は60万円。
うんうん、そっくりだ。
「理由は上手く言えないけど、俺にとって間違いなくカナは可愛いよ」
「そうですか? それで私は何をすれば良いんでしょうか?」
なんだか信じてくれて無さそうだな。
「取り敢えず、お風呂に入って貰えるかな」
「あの……もしかして夜伽ですか? 本当に私で良いのですか?」
顔を赤くしてモジモジしている。
「いや、それは嬉しいけどその服はボロボロだし、下着もまともじゃないから、お風呂で綺麗にしている間に服を買ってくるよ」
「お洋服……お洋服を買ってくれるのですか? 本当? 信じられない……」
たかが洋服位で凄く嬉しそうだ。
「それじゃ、俺は服を買いに行って来るから、お風呂に入って、そうだな毛布に包っていてくれる」
「解りました……その、ありがとうございます」
感情が薄い気がするけど、ほぼ初対面だからか.....
それはそうと、どんな服を買ってこようか?
カナに似合う良い服があるといいな……
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