第6話 カナと過ごす初めての夜
宿屋を飛び出して俺は商業地域に来ている。
もう暫くしたらお店が閉まってしまう。
急がないとな……
しかし……碌な物が無いな。
可愛らしい下着とメイド服は買った。
冒険者用の可愛らしい服と装備は買った。
だが、これ以外の服は碌なのが無かった。
前世なら秋葉原や中野に行けば幾らでも売っていたのに……
アニメという文化が無いし、俺みたいな異世界人もそう言った文化を伝えて無いのか何処にも無い。
こちらに来た異世界人に俺みたいな人間は居なかったのか……
マヨネーズもケチャップもあるのに、何故無いんだよ。
今迄は気にしなかったが探してみると本当に無い……
まぁ良い……今はある物で我慢するしか無いな。
最終的には『無い物は自分で作るしかない』
だが、異世界にミシンが無いから果たして作れるのか……今度生地を買ってきてチャレンジしてみるか。
後はと、アクセサリー……アクセサリーを忘れちゃいけない。
久しぶりだから今一、人形者の感覚が鈍っている気がする。
まぁ良い、今買える物は全部買った。
今日の所は飯でも買って帰るか……
◆◆◆
「ただいま~」
「おかえりなさい……」
床で毛布に包っている状態でカナが待っていた。
凄いな……
毛布越しでも解る、スレンダーな体つきなのに胸は小ぶりでおわん型だけどしっかりある、ウェストはこれでもかという位細くて、お尻は小さいけどしっかりとボリューミー、そして凄く足が長い。
こんな完璧なプロポーションはやはり想像の中にしか普通は居ない気がする。
「……」
「なんですか!? その目……ガッカリしたんですね……私は顔だけじゃ無く、体のバランスも可笑しいんです……おかしいですよね! 手足が細くて長くて体がこんな小ぶりで……こんな可笑しな体、見たくも抱きたくも無いですよね?」
月明かりで見るカナは凄く綺麗に見えた。
この際、しっかりと話をした方が良いだろう。
「下着と服を買って来たんだ、取り敢えずこれ着てみてくれるかな」
そう言うと俺はカナの前に下着とメイド服を置いた。
「新しい下着と服……私にですか? こんな服私に勿体ないですよ。醜い私にはボロキレで充分です」
「まぁ、良いから、隣の部屋で待っているからそれに着替えてからきて」
「……解りました」
折角、理想の彼女が居るのに……なかなか話が弾まない。
引き取った初日だから仕方ないのかも知れない。
テーブルの上に買ってきた食事を並べる。
オーク肉のステーキにシチュー……あとパンケーキにサラダ。
この世界じゃこれでも割と豪華な食事だ。
「さぁ、カナ食事も買ってきたんだ食べよう」
「食事って私のは何処ですか? 見当たらないのですが?」
「そこにあるじゃないか?」
俺はテーブルの上の食事を指さした。
「それはご主人様のものでは? 床に食事がありません......」
「そんな沢山俺一人で食べる訳ないだろう? 食器もフォークもちゃんと二つ並べてあるじゃないか」
「それを私が食べて良いんですか?」
「ちゃんと二つあるだろう……良いから座ってほら食べよう」
「本当に食べてい良いんですね?」
「ああっ」
「それでは……」
カナは椅子に座ると凄い勢いで食べ始めた。
ムシャムシャガツガツ、うんぐっモグモグ。
「そんながっつかなくても良いよ! なんなら全部食べても良いんだから」
「(もぐもぐ)ふぉんとでふか?」
カナは嬉しそうに食べている。
いいや……こんなに嬉しそうに食べるなら、俺の分もあげちゃえ。
◆◆◆
「すみません……つい美味しかったので……本当にごめんなさい」
「気にしなくて良いからね、こんな物で良いならまた買ってくるから」
カナは二人分の食事を食いつくし、顔が青くなっていた。
食べっぷりを見て、きっと粗食に耐えていたんだろうな……
そう思い止めなかったんだから、気にする必要は無い。
「あの……それはこんなに、美味しいご飯がこれからも貰えるって事ですか?」
「そういう事だけど? どうかした」
「いえ……」
また驚いているし。
「あのさぁ、何度も言うけどカナは凄く可愛い! 他の人は化け物と言ったかも知れないけど、俺はそうは思わない。昔好きだった人に(フィギュア)に似ているっていったよね? 確かに奴隷として買ったけど、俺は決して酷い扱いなんてしないよ」
「私、化け物ですよ……目だってこんなに大きいし、鼻や口もこんなに小さい……体だってどうみてもバランスが可笑しくて気持ち悪いじゃないですか?」
そう言ってカナが俺を見つめてくる。
いや……どう見ても等身大フィギュアみたいな完璧美少女でしょう。
顏からスタイル、全部が俺の好みだ。
だけど、それを今言っても信じて貰えない。
「本当に俺の目にはカナは凄く綺麗で可愛い女の子に見えるんだ!はっきり言えば一目惚れだよ! 見た瞬間カミナリに打たれたような衝撃を感じた……今迄の人生の中でこんなに誰かを好きになったことは無い」
「そういう冗談はやめてください! そんなわけないじゃないですか? 自分の醜さは自分が一番解っています! 多分、私より醜い人間なんてこの世にいませんよ……」
涙ぐみながらカナは俺に話してくる。
「会ったばかりだから信じて貰えないのは解る。だけど、本当に俺はカナが好みなんだよ! あの奴隷商の中に居たエルフよりも誰よりもカナの容姿の方が綺麗に見える。それは幾ら言われても変わらない……だいたい、嫌いな相手にご馳走を振舞ったり、新しい服を買ってあげたり普通はしないだろう? 」
「確かにそうですね……それじゃリヒト様に聞きますが、私はどう言う目的で買われたのですか? 本当に愛玩ようとして私を買ったのですか……」
これに答えるのはなんだか恥ずかしいな。
愛玩用って答えると……ヤル目的で買ったと言っているような物だ。
「え~とだな……」
「もし、リヒト様が愛玩用で私を買ったのでしたら、何をしても構いません。リヒト様が望むなら何でもしてあげますよ! だけど、私にこんな事言われても気持ち悪いでしょう? もういい加減に......うん!?うぐっぷはぁ……何を……するのですか」
俺はカナにキスをした。
此処までいっても信じてくれないなら、もうこうするしかないよな。
「何でもして良いって言ったのはカナだからね……」
「解りました……こんな醜い私を本当に愛玩用として望むのですね。私を欲しがる人がいるなんて思いませんでした。だったらカナは『何をされても構いません。リヒト様が望むなら何でもしてあげます』よ」
困ったな……
「いや……愛玩用じゃなくて……」
「嘘、騙したのですか……酷い、酷すぎますよ! 私必要とされていると思ったのに……勇気だして言ったのに……醜い化け物みたいな私を騙して嘲笑っていたのですね……すんすんヒクッ……酷いですよ……希望もたせて突き落とすなんて、そんな事しなくても良いじゃないですか.......」
「いや、そうじゃなくて……」
カナの大きな目から涙が流れだした。
「鉱山奴隷ですか? それとも魔物を狩る時につかうのですか? そうですよね……私なんてそんなものですよね……」
「いや、愛玩奴隷じゃ無くて『恋人になって欲しい』そう言いたかったんだ」
「え~と『恋人』ですか~」
顏を真っ赤にしてなんだか可愛い。
「さっき、俺キスしたよね? 普通に考えて『醜い化け物』そう思っている相手にキスなんてしないと思わない? それは解るよな」
「解ります……」
「今日会ったばかりでなんだけど、俺はカナの恋人になりたいって本当に思っているんだ」
ようやく……ようやくカナが真剣な顔になった。
冗談とか嘘じゃないと信じてくれたようだ。
「グスッ信じて良いんですか?」
「寧ろ信じて貰えないと困る……」
真剣な顔になってカナの手がプルプル震えだした。
そして思いつめた顔になると、メイド服のブラウスに手を掛けボタンを外した。
「だったら、カナは今からリヒト様の物です。なんでも喜んでしますし、リヒト様がしたい事自由にして貰ってもかまいません……どうぞ……」
綺麗な形の良い小ぶりな胸がプリンと飛び出した。
「ちょっと待って! そういうのは、そうカナが俺の事を好きになったら!うんうん、好きになってからで良いからっ!」
カナは俺の目をじぃーと見つめて来る。
そして……
「それなら気にしないで良いですよ! リヒト様はカナの事が好きなんですよね? カナもリヒト様の事大好きですよ! 胸でもお尻でも好きな所自由に触ったらいいじゃないですか? 直に! ああっ、そうですね、いっそうの事、このメイド服も脱いじゃいますか?」
「カナ、ちょっと落ち着こうか? そうだ、今日はもう夜遅いから寝よう……うん、なんだか疲れたな……うんうん疲れた」
「そうですか……ちょっと残念ですが、それじゃ仕方ないですね……それじゃリヒト様お休みなさい……」
そういうとカナはその場で寝転がった。
「え~とカナ?」
「はい?」
「なんで床で寝ているの?」
「私奴隷ですから、奴隷は床で寝るのが当たり前ですよ?」
「ちゃんとベッドも二つあるでしょう? 普通にベッド使って良いから……」
「あの……夜伽の相手もしないのに私、ベッドで寝て良いのでしょうか?」
「うん、構わないから……それじゃ今日は夜遅いからねよう……お休み」
「おやすみなさい」
ドタバタしているけど、なんだか楽しい。
だけど、明日は一日使ってゆっくりと話をした方が良さそうだ。
こうしてカナとの生活一日目はドタバタしながら終わった。
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