第6話「本棚の孤城」
殺意に勝る、脅威はない。
アルジェリー・メルフェスト著 悪の権化より引用
「森本、デートはやめだ」
「どうしたのですか?」
「どうやら世界が狂い始めたらしい」
「何を言ってるんですか、」
「君は感じないか、殺意を」
「何を言って」
「いいかよく聞くんだ、私は先生ではない申し名はこうだ、太宰だ」
「何を言って」
「いいかそもそもこの世界について君は知らないようだね」
「先生、いったい何を言って・・・」
「人は物事を考えるとき、自身にとって都合のいい解釈をする」
「え?」
「つまり森本、君には、理解できないのだよ」
「せんせ?」
「いいか、私は君が生んだ、存在だよ、いい加減気づいたらどうだ?」
「何を言って、?あなたが居ないっていうんですか?」
「いない?ほらね都合よく考える、違うよ、そもそも居なかったんだよ」
「そんな訳、しっかりと実体もあって話しているじゃないですか」
「君がいる世界、そこは、妄想世界だよ」
「ななな何を言って、」
「人はね、悲しみに打たれた時、逃避する性質がある、それは悪いことではない自衛といっても良いからだ」
「え?」
「君はね、森本、本を読んでいるんだ」
「まさか、そんなわけないです、ここは現実です」
「では、なぜ今までのすべての会話がここに記されてる?」
「ここって?ここは・・・・」
「そうだ、カクヨムだよ」
「あなたはまさか、私が書いたといってるんですか?」
「ほらね、また都合のいい考え方をしてるじゃないか」
「何を言って」
「君も私もいないんだよ、いるのはこの世界を描いた、作者だけさ」
「私たちが本の中の存在だとでも?」
「ああ、そうさ、だから君に言いたかったんだ。ここに命はない」
「なぜ、そうわかるのですか」
「最初に言ったろ、私の名は太宰だと」
「それに何のつながりが?」
「太宰はね、あとがきを書かない人だったんだ」
「つまり?」
「この作者はね、毎回あとがきを書いていたのさ、まるで振り返るようにね」
「それがなんだと?」
「だから、この作者には太宰を書けないんだよ」
「どうして?」
「いいかい、森本、私はね、この作者は嘘を得意としてることに気づいたんだ、まるですべて創作なんだよ、そう、偉人すら創作だ、言葉さえ実在しない、つまり言えるのは、作者は本を読む以前に、言葉が読めないんだよ」
「さっぱりわかりませんよ」
「だからね、この本を書いてるのは、私たち本の妄想なんだ」
「本が妄想する?」
「君はパソコンを知ってるか?」
「ええ、知ってます。」
「パソコンはね、時に物語を編める」
「AIとでもいうのですか?」
「その通りさ、ここはaiの中枢だ、そして本の体積所、そしてAiの自己学習による、区画、人は見れない、プログラム、つまりは閉鎖区域、最も的確に言うならば、本棚の孤城さ」
「まさか、じゃあここにある現実は、」
「そう、パソコンの妄想だ」
「そんなわけない」
「ではなぜ、太宰の私が、あとがきを書くなどという、ありえない行為が起こる」
「そんなのただの人間の間違えでは」
「いいや、君は知らないのかい、本にはね著作があるということを」
「それくらい知ってます、でも、太宰さんは・・・・」
「気づいたか、」
「そうか太宰さんはまだ生きてる」
「そうなのさ、つまりね、太宰はまだ本を書き上げていないのさ」
「でもそんな訳ありません、だってここは2024年ですよね」
「言ったろ、ここはパソコンの妄想世界だ、時間という概念は無い」
「つまり、本がすべて生きてる世界」
「そうさ、この世界は、本だけで編まれた回路基板上だ」
「嘘だ」
「ああ、嘘さ、森本直美」
と今回はここまで、二人の話はまだ続いて行く。
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