第4話「地を駆ける恋」

教祖が死そうと、思想は生きる。

 エルデリカ・クライアン著 万感の根底より引用


「先生、朝ですよ」

「そうか、報告ご苦労」

「いえ、起きてください」

「君ね、マクマリアンの書架を読んだことあるか?」

「当然です、寝る子は育つですよね」

「その通り、故に、寝ているのだよ、」

「では私はマーキュリーの言葉を借りてこう付け加えましょう」

「まさか・・・」

「早起きは三文の徳ですよ、先生」

「まったく、張り合えるほどの知性は褒めてやるが、私の心は動かせなかったようだな」

「何言ってるんですか、水掛けますよ」

「これが背水の陣か!!!」

「いやもう、先生、ただ語呂合わせしてるだけですよね・・・」

「いいか森本、朝は朝であって、起きる場面ではないのだよ」

「何を言いますか、日本に住んでるなら、あの意味を知らない訳もないでしょ」

「まさか君は国旗を人質にする気か??」

「ええ、日本の旗には、みんなで朝を迎えようって言う、希望が込められているんです」

「く、、、やりおる・・・少しは心も動かさせるようだな・・・」

「では、起きてください」

「分かったよ」


「で、今日の子守歌は何を歌ってくれる」

「なぜまた寝ようとしてるんですか」

「ほれ、今起きたろ、つまり、次は寝るという行為が来る。実に自然な法則だろ」

「そこまで寝たいのなら、いっそ埋めてあげますよ」

「怖すぎるわ!!!」

「先生の突飛押しのない思想を見ると、私先生の行く末が不安で仕方ありません」

「問題ない、君は一生居てくれるんだろ?」

「ふぁ!?や、え。あくまで、私は、探偵社の一員ってことですよね?」

「何を言う、三年以上も暮らしてるんだ、もう、家族みたいなもんだろ?」

「え?や、それって?まさか。」

「だからさ、ずっとやしなってくれよ」

「・・・」

「痛!!!なんで殴るんだよ!!!」

「あなたのような無神経な人、知りません!」


「頼むよ、森本、機嫌直してくれ」

「はい、これ」

「なんだこれは、」

「婚姻届けです」

「なんだお前、結婚するのか?」

「・・・・・」

「痛!!!なんでまた殴るんだよ!!!」

「私、先生が好きなんですよ」

「そうか、え?」

「だから結婚したいんです、先生と」

「待て待て、え?保険金目当てか?」

「・・・・・」

「痛!・・・ってあれ殴られてない?」

「あのですね、本気なんです」

「つまり、結婚がしたいのか、俺と?」

「はい。」

「結婚すると、いいことあるのか?」

「あなたって人は・・・」

「あ~。ごめんごめん、結婚っていいよな~・・・?」

「分かってないでしょ、結婚はですね、何よりも大切な契りなんですよ」

「そうか、だが私は、まだ君を知らない」

「嫌、な。ん、ですか・・」

「違うぞ違う、ただ、生まれてこの方、恋愛したことがなくて」

「では、教えます」

「ん?」

「デートをしましょう」

「え?」

「では、行きますよ」


「まて。まだパジャマだぞ私、」

「そうですね、ならば、服を買いに行きましょう」

「いや、待て待て、なんでもう玄関出ちゃったんだ」

「だって、服を買うんでしょ?」

「いや、パジャマで外出して服買いに行くやつがいるか?」

「いるじゃないですか。私の隣に」

「それは君が連れ出したからだろ!!!」

「ほ~ら、気にしないでください、先生は、私にだけ見てもらえばいいんですから」

「君の愛、怖いわ!!!」

「まだまだですよ、乙女の愛は、言葉で片付けれるほど、甘くないですよ」

「いやいや、なんか不純だな」

「あれれ~、何をお思いなんですか?ほら」

「や、え!?」

「手、繋いじゃいましょ」

「君なんかキャラ変わってないか?」

「だってデートですもの!」

「危険だ、危険な香りがする~~~!!!」

「ほら、先生、手をしっかり握らないと、こうしますよ」

「ふぇ!?君、何を!?」

「これは、恋人つなぎです」

「手を絡めるなど、もうこれは・・・シュバ」

「先生、エンストしないでください!!!」

「あ、ちょっと、休もうな、、、森本、」

「どんだけ耐性ないんですか」

「森本よ、お前をあなどっていた・・・」

「死なないで!!せんせ~~!!!」


と、二人の恋路が危うげに始まった

先生は純粋なので、顔を真っ赤にして思考停止状態

森本も実は恋愛経験ゼロで見切り発車状態


「先生、はやく起きてください」

「え?や、夢か?」


と、今回はここまで。

まだ二人の話は続いていく。

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