第3話「笑いのち相方」
死を知らぬ人間は死を恐れず
エルニキア・ファラオ著 無知無欲より引用
「先生、なぜ寝ようとしてるんですか」
「君ね、私だって一人間、睡魔くらい訪れるわ」
「でも既に12時間は寝てますよね」
「いいか森本、人間とは機械ではない、故に乱気流することを念頭に入れてくれ」
「なぜ偉そうなんですか、」
「事実、私のほうが先輩だろ」
「立場を言い訳にするなど、みっともないですね」
「君ね!どうも喧嘩腰じゃないか」
「いえ、これは例に習った事を言ってるのであり、そこに付議を思うのは常識人ではない証拠ですよ」
「常識など道徳の限界に過ぎないのだ、そんなものに収まる道理は私にはない」
「なぜ、開き直れるのですか・・・」
「正しい罪を知っているか?」
「確かマキニアス・マタンザスの作品で出てきましたよね」
「そうだ、つまりはその本の如く、人とは罪を犯してまで正したい事があるのだよ」
「トンチを聞かしても二度寝は許しませんよ」
「森本、君はレイニーアルゼリアのあの言葉を知らないのか」
「知ってますよ、檻を作るものは自ら檻には入らない、でしたよね」
「そうだ、つまりは自ら術中にははまらないのさ!」
「いえ、そこまで頭回るなら、もう起きたほうが楽なのでは?」
「森本、良いことを教えよう、人は危機として力が出るものだ」
「火事場のなんとやら、でしたっけ・・・とにかくもう起きてください」
「ひゃあああ」
「なんで悲鳴上げるんですか」
「だって君、紳士の布団をひっぺがすなど、それはもう禁忌だぞ!」
「次は水掛けますよ」
「なんて恐ろしい奴だ・・・」
「大の大人というプライドを持ってください」
「致し方なし、では今日のモーニングプランはなんだ」
「依頼はありませんね」
「じゃあなんで起こした」
「朝は起きる、常識です」
「君はもっと常識を疑うべきだ」
「先生は、もっと常識を守ってください」
「ふんだ」
「いじけないでください、子供が見てますよ」
「え?」
「嘘です」
「君、なかなか私を転がすのが上手くなったね」
「いえ、それほどでも、あります」
「認めるんかい!」
「ええ、しかし先生にも見るべきところもありまして」
「おお!?なんだなんだ、言うがいい」
「先生って、良い性格してますよね」
「だろ~?ん、?や、褒めてるんだよな」
「ええ、褒めてますよ、底抜けない過信とか、ずば抜けた自己愛に感服してます」
「森本、正直に言うがいい、君、私を・・・尊敬してるな?」
「ええ、いい意味でも悪い意味でも、とても勉強になります」
「んんん?つまり、私のほうが優れているという事でいいのだよな?」
「それで満足するなら、それでいいと思います」
「森本、お前、やっぱ嫌いだ」
「ごめんなさい、先生は寛容ですからイタイケな事をしてしまうんです」
「そうか、なんか、まーともかく、もうどうでもいいわ!!!」
「はい、じゃ、朝ごはんにしましょう」
「そうだな」
「で、森本、なぜ、私はパンの耳だけなんだ」
「ああ、切らしてしまって、」
「で、なんで君は、パンの中心部を食っている」
「ああこれは、適材適所といった配慮でしょうか」
「全然、配慮になってないよ、なんか完全にこっちが下の存在って意味に聞こえるよ」
「心配しないでください、先生は尊敬してます」
「言ってることと、やってることが、違うよな?」
「仕方ありませんね、では8対3で割りましょう」
「なぜ、君が8なんだ・・・」
「え?いや、ほら、だって」
「言わんでいい、半分こでいいだろ普通!!!」
「そうでしたね、すみません、つい先生のツッコミ欲しさにボケちゃいました」
「なんだ、まさか漫才師にでもなりたかったのか」
「それもいいですね、コンビ名は8対3とかにして」
「やらんわ!!!というか8対3って釣り合ってもないよな!」
「あ、気づいちゃいました、3はローマ数字で愛って意味なんですよ」
「え?じゃあ君は、まさか」
「ええ、先生がとても愛らしくて、」
「ん?愛らしい、それは愛か?」
「愛ですよ~」
「そ、そうか、君がそんな目で見てたとは、ま~別に、私も今はフリーだし」
「じゃ、私の相方になってくださいね」
「そっちかい!!!」
「え?なんだと思ったんですか?」
「いや、なんでもないわ」
「なんか顔赤いですよ」
「だから、だな。なんでもないと、言ってるだろ!」
「うろたえてますね、可愛い」
「森本、君は、もう!知らん!!」
「すみません、せんせッ」
「罰として、これからは大先生と呼べ!」
「はい、大先生!」
「普通に呼んじゃうんかい!プライドはないんか!」
「え、だって本当の事でしょ?」
「そ、そうだぞ、大先生であたりまえだ、そうそう、」
「フフフ。」
「森本ーー!!おかしなことでもあったか!!!」
「いえ、ただレイニーアルゼリアを思い出して」
「何!?私が自分の術中にハマったとでも!?」
「私はそこまで言ってませんよ~」
「もう知らん、もう知らんからな、君がそんなにも、私を笑い種にするなどもういい!!!」
そうして二人の朝はそんな風に燃えていた
しかし、ここまで全てに反応してくれる先生の心の良さは
私はとても尊敬している
悪気はないのである、本当なのだ。
「先生、私、あなたの最高の相方になれますよ」
「笑ってるのは君だけだ!!」
と、今回はここまで。
まだ二人の話は続いていく。
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