第15話 興味Ⅱ

 アイドルの恋愛話を聞くのはもしかしたら

 禁忌かもしれないなんて、思いながら俺は優芽に語りかける。


「優芽は今、恋愛とかどうなんだ?」


 今思えば、俺。優芽の口から好きな人がいるなんて聞こえたら血の涙を流してその場でぶっ倒れる自信がある。

 自分で話題を振っておきながら、何をやっているんだか。


「それ私に聞く?」


 今になってもういい、なんて言えるはずもなく俺は小さく頷いた。

 後悔はあるけれど、完全に興味が無い訳では無い。

 いずれは優芽もお嫁に行くわけだから今聞くのと未来に聞くのとではさほど変わることは無い。


 時期が少し早まるだけだ。俺の心が壊れるのが。


「そうだな。やはり妹の気持ち。俺も気になるわけだ」


「私の気持ち。それ兄さんが聞く…いや、分かった」


 どうやら優芽は俺に語ってくれる決心が着いたらしく、深呼吸をし始めた。

 兄弟間での恋バナなんて少し前の俺たちでは有り得なかったであろう。


 過去の俺に盛大に感謝しつつ、優芽が心の準備ができるのを待つ。


 優芽の好きな人はどんな人なのだろう。チャラ男などは正直やめて欲しい。

 優芽のことを真面目に考えてくれる優しい人が優芽の彼氏になってくれるのであれば俺は歓迎する。


「私ね。結構アタックしているつもりなんだよ。でも鈍感なのか全く気づかない。前にあんな宣言したのにさ」


 優芽は好きな人に凄いアピールをしているらしい。その男は本当に幸せだな、と心の中で涙を流しつつ優芽の言葉の続きを聞く。


「私、前までは冷たく当たってたでしょ。それがやっぱりダメだったのかなって。…でも仕方ないよね。最初私は仲良くするつもりなんて毛頭なかったのだから」


 優芽の言葉から推測すれば、優芽はその人のことをあるきっかけで好きになった。

 元々は一欠片の興味もなかった男にそのきっかけが起きたことで好きになったと。


 まるで数日前までの俺たちのかんけいのようだ。


 異なる点があるとすれば、その男が鈍感だということだろう。

 俺は鈍感ではない…はず。


 恋なんてしたことないから分からないが、俺は鈍感なやつではないと思う。

 2次元ラブコメ作品で色々な鈍感主人公を見てきたが俺は彼らとは違う、と思っている。


「優芽はもうその人まっしぐらなのか?」


「うん、もう…しか考えられない」


「そうか…いつかは優芽もお嫁に行くわけだもんな」


「う、うん。絶対にね」







 あの後はお互いに何故か気まずい空気になり無言のまま帰路についた。

 俺はシャーベット、優芽のファンである前に優芽の兄という立場にある。


 1番に考えなければならないのは優芽の幸せ。二の次にアイドル活動のことだ。


 俺はただ、あの無言の時間を無駄に消費していた訳では無い。


 葉月ちゃんへのインタビュー。今日仕入れた葉月ちゃんの情報のおさらい。考えた原稿の改稿作業などを行っていた。


 今はもう夜遅い。今の時間に投稿しても十分な成果を得られるとは思えない。


 だからこそ今の時間に原稿をまとめておいて、明日の朝にまとてて投稿することにしている。


 最近は便利な世の中になってきたことで、予約投稿というありがたい制度があるから今回はそれに頼ろうと思っている。


 優芽は家に入ると、ライブで相当疲れていたのかあっという間に寝床に入っていった。

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