第14話 興味
俺は葉月ちゃんの向かいに配置されてある椅子に腰を下ろす。
正面にシャーベットのメンバーが、それも2人きりでいることに興奮を抑えきれないが、あくまで冷静を保った振りをしておく。
変な態度を取って引かれてしまえば俺はこの場で終了のお知らせの鐘が鳴ってしまうからだ。
「わざわざ俺みたいな奴のために時間を取ってくれてありがとうございます」
俺は葉月ちゃんに敬意を込めて頭を下げる。本当に俺みたいなぼっち野郎に時間を割いてくれるのは神でしかない。
「いえ、こちらこそです。優芽のお兄さん。敬語はおやめ下さい。私の方が年下なんですから」
「なら遠慮なく、タメ口で行かせてもらうね」
「はい。よろしくお願いします」
「今回、なんで葉月ちゃんにこのような場を作ってもらったかと言うと、実は俺シャーベットの大ファンなんだよね」
「あ、ありがとうございます!」
「それでさ、俺は優芽の兄だから優芽のことは基本的に理解してるんだけど、まだ葉月ちゃんのことは正直失礼だと思うんだけどあんまり知らないんだ」
「仕方ないですよ。私はあの二人と比べて人気が乏しいですから」
葉月ちゃんも自分で認識しているようだ。
これは本当に悲しいことだと俺は思う。だからそこ、真の理由は彼女には言えないが少しでも力になれることがあればと考えている。
「俺、それがめっちゃ悔しいんだ。なんで葉月ちゃんはこんなに魅力的なのに」
我ながらキモイことを言ってるかもしれないが、事実ではあるので訂正するようなことなんてない。
ふと葉月ちゃんの様子を伺ってみると、彼女は何やら顔をおさえて俯いている。
俺、結構キモがられるのかな?
いや、今そんなことを思っていたら今からの取材がゴミみたいな雰囲気になってしまう。それだけはどうにか避けなければならない。
「そ、そんなお世辞を貰ったのは初めてですて……」
彼女は俺の言葉をお世辞だと捉えてしまったらしい。
ここで否定してもいいとは思うのだが、初めて会った俺から執拗に褒められても嬉しくないだろうし、きっとしつこく言えば言うほどお世辞に聞こえてしまう可能性もある。
俺は敢えて反応しないことを選んだ。
そして俺は取材を始めた。
取材が終わると、俺は葉月ちゃんに最大限のお礼を込めてお茶菓子をプレゼントした。
予め用意していたのは正解だったな。
収穫は十分なもので、取材を進めていくうちに彼女との距離もなんだか近くなった気がして、投稿の内容もあっという間に頭に浮かんだ。
本人に直接取材をしたおかげが優芽の時よりもいい投稿が出来るかもしれない。
優芽には話など聞いた事がなかったから新鮮な感じ。
既に夜の11時になってしまっている。
叶ちゃんはもう帰ってしまったようだが、優芽は俺と帰りたいらしく取材が終わるまで待っててくれていた。
葉月ちゃんのことを俺は送っていこうと考えていたのだが、俺の心配は要らなかったようで迎えが来てくれているらしい。
話を聞けば葉月ちゃんの実家はちょっとしたお金持ちだとか。
これはシャーベットの重要関係者しか知らない情報らしく俺みたいな奴が把握していていいのか疑問に思ったが、俺の事を信用してくれているの結果だと受け取らせて頂いた。
「すまんな優芽、結構待たせてしまって」
「全然大丈夫。待ってる時間も愛し……ううん、なんでもない!」
今、日本でシャーベットの嵐が来ていると言っても過言ではない。
有名人という人達は外を歩く時、変装をすると聞く。
もちろん優芽も有名人に含まれるわけで、しっかりと変装をしている。
深めのハットに黒サングラス、マスクもしている。
傍から見ればただの不審者である。
芸能人は大変だな。
だが、1度でも外で正体がバレてしまえばいつも間にかネットで拡散されて人混みが出来てしまうのだろう。
最近は優芽のアイドル関係のことに関してずっと関わっていたからか、プライベートのことは全く知らない。
そうだ、どうせなら優芽の恋愛話でも聞いてみるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます