第11話 計画
早速俺は葉月ちゃんを伸ばす方法のことについて考え始めた。
葉月ちゃんの魅力はなんと言ったって、あの美貌だろうか。
優芽や叶ちゃんには悪いが、容姿に関しては葉月ちゃんに勝るものはいないと思っている。
神宮 葉月。艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、その整った顔立ちは可愛いと言うよりは綺麗という言葉を想像させる。
優芽は可愛い系、叶ちゃんは可愛いと綺麗の2つを組み合わせたような顔をしている。
だが、その2人でさえも葉月ちゃんの容姿には適わないだろう。
歌声では2人に少し劣るものの、それが逆にいい、というファンも一定数いる。
でもやはり、もっとファンを増やすためには全てにおいて完璧でいなければならない。
といっても全てが完璧と言える超人なんてこの世には存在しない。
誰だって1つや2つ、苦手なものがあって仕方ないのだ。
俺ができることは発信しかない。
もしかしたら優芽関係で顔を合わせることがあるかもしれないが、そうは言っても深く関わることは無いだろう。
となれば出来るだけ早く葉月ちゃんについて語る投稿内容を考えなければならないな。
……そう考えても今までずっと優芽のことについてばっかり考えてきたせいで、原稿を考えている途中にいつの間にか優芽のことについて書いてしまっている俺がいる。
これはダメな傾向だ。優芽ファンの前に俺はシャーベットファン。メンバー全員について語ることが出来ないなんて……なんて俺は最悪なやつなんだろう。
自分で自分を卑下してしまう。卑下するなと言われても、抑えることは出来ない。
「そうだ」
どうせなら今日のことを上手く活用しようではないか。俺は優芽の兄だ。
優芽が俺のことを許してくれたらシャーベットらと会える。
実際会ってしまったらアイドルしての、遠くにいる存在感、が薄れてしまうかもしれないがそんなことは気にしてられない。
神様は俺に運良く、このような機会を準備してくれたのだ。上手く活用しないでどうするというのだ。
約束の時間の2時間前になり、俺は出かけるための準備を始めていた。
ここからライブ会場まで電車で約30分かかる。長いと思えば長いし、短いと思えば短い距離。
昔からのくせで俺は約束の時間より早くついてしまう癖がある。これはこの年齢になっても治すことは出来なさそうで体が勝手に準備を始めてしまった。
だが俺はここである壁にぶつかった。
服装だ。妹の晴れ舞台。ファンの多くが俺が優芽の兄だということは知らない。
でも何故だがマシな格好をして行かなければならないという使命感が俺の中に湧いてきてしまったのだ。
10分ほど悩んだ結果。このような服装になった。
少し裾が長めの白パーカーに、ジーンズ。結局はこの格好に落ち着いた。
普段から俺はこの格好で外を出歩いており、1番のお気に入りコーデである。
優芽からドームの裏の方に来てと先程メールがあったから、特別席というのは相当な特別席なんだとわかったのだが、他には誰か来るのだろうか。
メンバーの親御さんなどいたらどうしようか。一応挨拶をした方がいいだろうか。
余計なお世話になったら……今は考えるような時間では無いな。
俺は必要最低限の荷物を持って家を出た。
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