第3話 布教の日々③
あの後1時間くらいたった後に無理やり優芽に熱を計らせたのだが、本当に何事ももなかった。
ならば何故さっきはあんなに頬が赤くなっていたのだろう。熱では無い他の病気か?
心配になった俺は某検索サイトで『頬 赤くなる 病気』と調べてみるも風邪関係の病気しか出てこない。
ふざけたものに『恋の病』というものがあったが、どうせ嘘だろう。恋しただけで頬を赤くしたら恋人なんて作れないだろうし。
まぁ、具合が悪かった訳では無いのだし俺が心配することなんてないか。
もう夜も遅い事だし寝ることにしよう。明日は学校だからな。
きっと学校でも優芽の事で話題がいっぱいなんだろう。容易にみんなが話しているところが想像出来てしまう。
恐るべし俺の影響力…あ、そういえば原稿を書かなければならないんだった。最近、優芽のことに全振りしていたせいで全く覚えていなかった。
ヤバい。急がなければ編集の土井さんから叱責を受けてしまう。あの人、怖いんだよなぁ。
チュンチュン…。
小鳥が囀っている朝、俺は重たい身体をどうにか動かして朝食の準備を行っていた。
原稿の方はどうにか半分ほど終わらせることが出来た。後の半分は今日、家に帰ってきてからだな。
優芽はまだ起きてきていない。歌っている様子もないし、ここ数日は忙しそうだったから睡眠も深くなるのは当然だろう。
とりあえず、朝になったのだからいつもの投稿をしなければ。
俺はこう考えている。
優芽のことについて語り始めてから俺のフォロワーは20万人くらい増えた。
みんな俺が優芽大ヒットの根源だと気づいてきたのかよくダイレクトメッセージが送られてきている。
これでも俺は人気作家なので直接返事をすることは無いが、編集社を通して送られてきたものはしっかりと呼んでお返事を書かせていただいている。
今でも投稿するだけですぐさま1万いいねは当たり前、調子がいい日は2万を超えていく。
俺が就寝に入る前なんて20万いいねは余裕で超えてくる。
今日の原稿は既に頭に浮かんでいる。
特別新しい文章という訳でも中、シンプルに優芽のことについて1ファンとして語ったものだ。俺はいつの間にか本気で『シャーベット』の、優芽のファンになっていた。
『優芽のことについて語り出してもう1週間も経っちゃいましたね。皆さんのおかげで優芽の人気はうなぎ登りです。優芽とは全くの他人だというのに我ながら幸せです。
これからも皆さん、優芽のことをファンとして追いかけていきましょう。恋仲になんかなろうとしちゃダメですよ。
アイドルは恋人がいてはダメなんです。僕らとは違う世界に生きるからこその需要。
でも彼女が引退したいという程に好きな人が出来たのであればそれは応援してあげましょうね』
投稿ボタンを慣れた手つきでスムーズに押す。直ぐにいいね数は増え始めてくる。
本当に読んだのか、と思えるほどに早い。
『優芽ちゃんしか勝たん!』
『優芽命!』
『優芽&結城先生のカップル志望!』
最近はよくこのようなコメントばっかり着く。3つ目は何を言っているのか分からないが、投稿を始めた日より確実に人気は強くなっている。
このまま頑張ろう。
「優芽起きろー。朝飯だぞー」
「な、バカッ!勝手に部屋に入ってこないで!」
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