第4話 真実

 朝食を済ませた俺達はお互いに学校へと行く準備を始めた。


 今となっては優芽は日本中で大人気アイドルなので、外で歩くのは危険があるということで兄の俺がついて行くことになっている。


 テレビ局が学校の前に集っていることも少なくなく、ここ3日間大変苦労している。


 義妹が人気になることは嬉しい。だが、プライベートまで侵害してくるメディアは許せない。


 プライベートとメディアでの対応は違うのは想像すれば分かるはずで、あいつらは相手の気持ちを1度考えて見てほしい。


 自分が仕事以外で、プライベートで何かを楽しもうとしているのにそこにいったら仕事関係のヤツらが集まっていて何かをさせてこようもする。


 俺は絶対に嫌だね。


 俺は優芽よりいち早く準備を終えると、リビングで天気予報を見ようとテレビを付ける。


 するとたまたま着いた番組がちょうどよく優芽のニュースをしていた。


 他の局に変えてみても優芽のことではなくても、シャーベットのことに関して報道しているところがほとんどだった。


 どの局でも同タイミングで同じニュースを発信することなんてあるのか。仕組まれているみたいだな。


 今日の天気は一日中満点の晴れらしい。雨よりはましだがずっと日が照っているというのもあまり好きでは無い。

 曇りイズ正義。


「準備できた」


「お、そうか」


 俺と優芽は一緒に家を出た。








 今、私の隣を歩く人物。つい半年前にお母さんが再婚して出来た新しい家族。


 義兄の結城。


 私は最初、彼や新しいお義父さんのことを家族として認められなかった。

 私とお母さんの幸せな生活空間に突然無理やり割り込んできたゲス野郎だと思っていた。


 でも最近、その印象はガラッと変わってきた。


 本当のお父さんが亡くなって約17年。その間お母さんは私のことを大事に大事に育ててくれた。


 私はそんなお母さんが大好きで恩返しがしたいと、中学生の友人達と組みアイドルユニットを作ることにしたのがつい2年くらい前だ。


 ユニット名は『シャーベット』。私が考案した名前でとても可愛いという理由でつけた。


『シャーベット』はなんと初投稿の歌が大ヒットし、瞬く間に日本中に広まることになったのだが、そこで注目が集まったのはリーダーである叶だった。


 私が作ったユニットだが、リーダーキャラでは無いとして叶にして貰っていたのだがそれが仇となったのか。


 私は全くといって注目されなかった。

 前提にはまず私は歌とダンスが絶望的だったのだ。

 自分でアイドルユニットを作っておいて、人1番歌えず踊れないのだったら意味が分からない。


 叶と葉月と私。シャーベットは明確な人気差が出てしまったのだ。


 でも4日ほど前。私にある転機が訪れた。


 なんと昼の大規模番組にシャーベット代表として出演してみないかと言われたのだ。


 理由が私がネットで今、大拡散されているかららしかった。某つぶやきSNSで私の名前がトレンド入りしているとか。


 私はそんなわけがあるかと疑い、確認してみれば本当だということがわかった。


 その番組に出演した後、私の人気は自分でも言うのもなんだがうなぎ登りになった。


 でも私は気になったのだ。


 何故私が注目されるようになったのかと。


 今までSNSは基本、叶のことが多く投稿されていたから見ないようにしていた。それを見てしまったらやる気がなくなってしまうと感じたからだ。


 そこで私は原因を探すことにした。その人に単純に感謝したかったし興味本位もあった。


 探っていくとあるアカウントを発見したのだ。『yuki』というアカウント。


 この人は有名なラノベ作家らしく、数日前から朝に私のことについて熱弁した投稿がされていた。


 私はその投稿を見て恥ずかしくなってしまい、お礼を送ろうとしていたのをやめてしまったのだが、それで良かったと思っている。


 人気にならせて頂いてから、私は学校で時の人となった。すれ違えばサインをねだられる。そんな経験、今まで1度もなかったというのにあの日から貰えるようになったのだ。


 喜びを隠しきれなかった。


 義兄の結城。彼も私がアイドルだということは知っていた。


 ある日、結城のクラスの前の通るとなんと彼がクラスの前で私のことについて熱弁していたのだ。


 私はその瞬間、恥ずかしくなってしまいその場を直ぐに離れたのだが学校で彼の姿を見かける度、私のことについて熱弁していた。


 きわめつけは義兄の秘密を知ってしまったことだ。ある日、たまたま興味で結城の部屋に入った時机の上にパソコンが開かれていて表示されていた画面を見たらなんと私のことを熱弁していたラノベ作家さんと同じ名前だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る