第61話 いつもの結末
食堂を出て、ネネさんとはすぐに別れました。
4人で帰宅します。
寮に入ってすぐ、寮長のセシリア先輩から声を掛けられました。ショートヘアーがよく似合う、まるで王子様のようにカッコ良い女性です。
「アリーシャ君、ニーナ君、聞いたよ。なんと1位と2位だったんだってね! 寮長として、実に鼻が高いよ」
そう言って、セシリア先輩は大変嬉しそうに笑い出しました。
お嬢様は特に表情を変えませんが、ニーナ様は悔し気な顔となりました。
「僕がいた間、このノース寮で1位と2位をとる快挙など始めてのことだよ。実に素晴らしい」
お嬢様とニーナ様のために、拍手までしていただけます。
「この2 年間、ウェスト寮が1位と2位を独占してきた。そのため、メイリーンはいつだって僕たちノース寮を馬鹿にしてきたんだ」
「メイリーン、さん?」
「ああ、すまない。メイリーンは向こうの寮長で、とてもお高くとまった、意地悪な女なんだよ」
言葉とは裏腹に、とてもお優しい顔で仰います。
「あいつはいつもそのことで僕や、ノース寮のことを馬鹿にしてきた。だから、僕は今からあいつに教えてやるんだ。今年から、ノース寮の時代が始まるってことをね」
「今からウェスト寮に行くんですか?」
「そうだよ、今すぐ行くんだ。だって、今なら悔しがるあいつの顔を拝めるはずだからね」
「セシリア先輩、嬉しそうですね」
「それはそうさ。だってこんな機会、もう2度とないかもしれないからね」
「先輩はメイリーンさんのこと、本当に好きなんですね」
「それはそう――」
言葉を途中で止めると、こちらへ顔を向けます。妙に硬い動きをしながら。
「――じゃない、よ。リッカくん」
「そうなんですか?」
私は、驚きの声を上げてしまいました。
すると、先輩は何故か口元を引きつらせます。
「あ、当たり前さ。因みに――何故、そう思ったんだい?」
何故かと、問われると困ってしまいます。
「そのー、何となく――そう思っただけです」
説明なんてできません。
私はただ、そう思っただけなのですから。
私の回答を聞き、セシリア先輩は笑い出しました。
「そうかい、そうかい、なるほど。だけどね、リッカくん。それはとんでもない勘違いさ」
「そうなんですか?」
「そうだとも!」
笑顔から一転、先輩は真顔で私に人差し指を突きつけました。
「いいかい、リッカくん。僕はメイリーンのことが大っ嫌いなんだ。それは、誰よりもね。だから、そのようなことはもう、2度と言わないよう頼むよ。……分かったね?」
「は、はい。分かりました」
私の言葉を聞き、先輩は再び笑みを浮かべます。
「分かってくれたのなら――それでいいんだよ、リッカくん」
「あ、ありがとうございます」
「感謝の言葉など不要さ。それでは、ここで失敬させてもらうよ」
「メイリーンさんの所へ向かわれるのですね。それでは、楽しんできてください」
私は頭を下げました。
そして、再び顔を上げて見えた先輩の顔は、何故か――引きつっています。しかし、それは気のせいかと思うぐらい、ほんの一瞬だけのことです。
「分かっているとは思うが、リッカくん。僕は今から友のもとへ向かうわけではない。宿敵と会うだけの話さ」
そう言って、セシリア先輩は格好良く髪をかきあげると、寮から出ていかれました。
「ニーナ様、天然とはかくも恐ろしいものなのですね」
「そうね、あんたと同じぐらい恐ろしいと思うわ」
「もしや――――褒めてくれているのですか?」
「んなわけないでしょ。何故そうなるのよ」
私がお二人の方へ視線を向けると、何故か目をそらされます。
私は首を傾げてしまいました。
「行くわよ、リッカ」
お嬢様に手をひっぱられます。
しかし、前のように強く引っ張ることなく、ゆっくりと優しく私をエスコートしてくれました。
部屋の前で、お二人に手を振って別れました。
扉が開き、私が入ってすぐ閉まります。
お嬢様が私から手を離すと、足を止め――こちらへと振り向かれました。
「お嬢様?」
言葉もなく、抱き締められます。
「リッカ――私、ここまで我慢したわ」
何をですか? とは――とても、聞ける雰囲気ではありません。
何処か――興奮状態に入られたような気がします。
私の気のせいであればよいのですが……。
落ち着いて貰うためにも、私はお嬢様の背中へと腕を回し――優しく擦りました。
「偉かったですよ、お嬢様」
そう言った瞬間、お嬢様の抱きしめる強さが変わり――少し、痛いです。
しばらく我慢しておりますと、急に身体の圧が弱まり、ほっとしたのも束の間――目の前にお嬢様の顔が現れ、キスをされました。息が苦しくなるほどの――そんな、キス。
「お、お嬢様、落ち着いてください」
「無理よ、リッカ。だって、あなたが私をそそのかしたのよ?」
ええ!?
私が驚いている内に、服を脱がそうとしてきます。
「お、お嬢様、ここはまだ玄関ですから!」
「大丈夫よ、リッカ」
「せめて、ベットで――」
再びキスで、私の口が塞がれてしまいます。
それは――本当に激しくて、身体の力が抜けてしまいました。
「それは無理な話よ、リッカ。ベットまであまりにも遠すぎる」
め、目の前……です、から、お嬢様。
――結局、ベットに辿り着けないまま、私は逝かされてしまいました。
お嬢様――せめて、シャワーはさせて――――。
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