〇04

じめついた灰色の空、今にも雨が降りそうだが幽霊の俺には関係ない。むしろ太陽が頑張っている日はなんとなく責められているようでテンションが下がっちまう。

さあて、今日も一日気楽な幽霊生活をエンジョイしますかね。意味もなく舌をペロっと出してから、煙草を消して屋根裏に戻る。


今日は家主が朝から出かけて行ったので、気兼ねなく作業に集中できる。自分の配信アーカイブに高評価をつけた後、動画の切り抜きを始めていく。切り抜き編集した動画は、別アカウントで上げなおす。我ながら痛いことをしてるなあ、と思いつつも、まだまだ切り抜き師がつくような身分ではないからしょうがない、こうした地道な努力も必要ってわけよ。


ん、マウスの調子が良くねえな。埃と湿気にまみれた屋根裏に置きっぱなしにしてるから、すぐに駄目になっちまうのも仕方ねえ。とはいえ、今から電気屋に行っても営業中の店内でマウスを失敬するのは難しいだろう。今度から夜中に忍び込むときは予備も含めてちょっぱるようにしよう。


さてどうすっかね。とりあえず、ここの家主のマウス借りておくか。天井からにゅっと顔を出して部屋を確認する。あったあった、ちゃぶ台の上に置かれたノートパソコンからマウスを引っこ抜く。ちゃぶ台の横をちらと見ると、ダンボール箱の中にケーブルやらゲームコントローラーに交じって、コンデンサーマイクとオーディオインターフェイスが見えた。


おや、ひょっとしてここの家主も配信者なのかな。ここに住み憑いて2週間ほど、若い女性の一人暮らしってこともあって、余計な面倒ごとを避けるために家主には興味ない振りをしていたから気づかなかった。


ちょっと、面白いことになってきやがったな。

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