△01
「ただいま戻りました。」
一人暮らしのこの家には誰もいないので、当然ながら返事はありません。
『いいですか、挨拶は最も大切な素養なのです。挨拶のできない人間は誰からも愛されず、魍魎が跋扈するこの社会の中、一人ぼっちでおっかなびっくりぐずぐずとぼとぼと暮らしていくことになるのです。いいですか、いついかなるときも挨拶を忘れてはいけません。』
と幼い頃に母に言われてからは、挨拶こそが生活を豊かにし、社会で上手くやっていく要だと信じているのです。
ぐう、とお腹がなりました。予定の時間までにさっとご飯を食べてシャワーを浴びてしまいましょう、腹が減っては戦はできません。
冷ご飯をレンジで温める間に、おかずを用意します。ごそごそ、あら、サバ缶があったと思うのですが…。私のことだから、きっと夜中にお腹が空いて寝ぼけながら食べてしまったのでしょう。記憶にも残らないまま消費されてしまったサバ缶の気持ちを考えて、ちょっとした申し訳なさを感じながらウインナーを焼いて夕食としました。
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