屋根裏の配信者

我孫子営業所

〇01

「あっはははは!……んじゃ、今日はこの辺で……来て下さった方ー、よろしければチャンネル登録と高評価お願いしまーす。んじゃ、まったねー。」

……カチッ、タカタカ……タカタカ……タン……暗がりにクリック音とキーボードの打鍵音が響く。さぁてぇ、とぉ、あ痛たたた、狭い場所で3時間も縮こまって配信してたせいで全身が固まってやがる。ちょっと伸びをしただけで、体の其処彼処からパキポキと音が鳴る。


じめついた屋根裏を抜け出して、もぞもぞと屋根の上に出てタバコを取り出す。シュボッ、ふう。さぁてとぉ……

『配信終わりました。来てくれた皆さん、ありがとうございました。』

よし、SNSでの挨拶もオッケー。戻って誰かの配信でも見っかね。タバコを携帯灰皿に押し込んで屋根裏に戻る。


くっくっく、あはあはあは、くそ、皆面白い配信しやがるなぁ。俺ももっと尖った企画考えんとな。これからの配信者、トーク力だけじゃやっていけねぇ。サムネだけで釣れるようなものを考えんといかん。・・・ぐう、くっそ、腹が減ったなぁ。まだ家主は帰ってこなそうだ。貧すれば鈍するとも言うし、一旦飯を食ってから考えよう。この家、缶詰ぐらいあるかな。


こそこそと屋根裏から台所に移動し、戸棚を漁る。冷蔵庫には手をつけない、毎日見るものはちょっとした変化でも気づかれるからね。その点、戸棚の中の缶詰やレトルト食品はめったにチェックしないから、多少変化していても「あれ?あった気がするけど・・・食べたっけ?」てなぐあいに自分の記憶を疑うのが普通だ。戸棚を物色すると丁度いい具合にサバ缶が三缶あったので、一つ失敬させてもらう。

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