妹より妹の後輩が、今日も俺を困らせる!

みみっく

妹より妹の後輩が、今日も俺を困らせる!

俺にはヒナタという幼馴染がいる。彼女はまるで太陽のように明るく、いつも俺の心を照らしてくれる存在だ。中学1年生になったばかりで、人懐っこくて元気いっぱい。小学校時代からずっと俺に懐いていて、実の妹以上に妹のような存在だった。


俺が先に中学に入学してから、自然と会う機会が減ってしまった。中学生になると、勉強に追われる日々が続き、中学生の友達と遊んだりすることも増えたため、ヒナタと過ごす時間はほとんどなくなっていた。それでも彼女のことは少し心の片隅にあった。


ヒナタが中学に入学してきた初日、校庭で俺を見つけると、一目散に駆け寄ってきた。まるで子犬が主人に飛びつくように。その姿を見て、小学校時代からの友達は笑顔を浮かべたが、中学からの友達たちは目を見張っていた。


「お、お前……彼女がいたのか!?」


「この裏切り者っ!」


「ち、違うって!妹みたいな感じの後輩だっての!」


クラスメートが騒ぎ始める中、ヒナタは笑顔で俺を見上げていた。彼女の瞳はキラキラと輝いていて、俺を見つけた喜びが溢れているようだった。俺は内心、少し安心していた。


「ユウくん、ひどいっ!」


「お前、学校では先輩って呼べよな」


「じゃあ、先輩ひど〜いっ!」


彼女の明るい声が校庭に響き渡る。俺は肩をすくめて、照れ隠しに頬をかいた。ヒナタが懐いてくれているのは嬉しいけど、こうもあからさまに抱きつかれると、ちょっと困る。


「で、何か用なのか?」


「べつに〜?寂しそうだったんで来ただけだよ?」


その言葉に、俺は少し胸が温かくなった。ヒナタはいつも俺のことを気にかけてくれる。


「お前……羨ましいヤツだなぁ〜超可愛い妹系じゃん!」


「やっぱり、こいつ……裏切り者だな……一人だけ良い思いしやがってー!」


周囲の友達が嫉妬混じりの声を上げる中、俺は必死に弁解する。


「ちょ、ちょっと待て……良い思いしてないしっ」


「してるだろ!なんで抱きつかれてるんだよっ!」


「羨ましすぎるって……」


ヒナタが俺に抱きついていた。俺の胸元に顔を埋める彼女の温かさが伝わってきて、心が揺れた。


「お前らうるさいから、どっか行けっての!」


「お前たち、二人だけで何をするつもりだよ〜」


「ずるいぞっ!」


ヒナタはニヤニヤしながら俺を見つめている。その表情から、彼女が俺の反応を楽しんでいることがわかる。俺も思わず微笑んでしまったが、すぐに真顔に戻した。


「せんぱ〜いっ♡ 二人だけで何してくれるんですかぁー?」


「うわぁ。ヒナタまでからかう方に参加するなよ。まったく……」


内心では、ヒナタに会えたことが少しうれしかった。しかし、その感情を抱えたまま、俺は皆を置いて一人で教室に戻った。廊下を歩きながら、ヒナタとのやり取りが頭をよぎる。彼女の笑顔と、周囲の冷やかしの声がまるでリフレインのように繰り返されていた。


昼休みが近づくと、心臓がだんだんと高鳴り始めた。今日はついに、ずっと好きだった女子に告白しようと決意したのだ。これまでの数週間、ずっとそのことばかり考えてきた。


教室の窓から校庭を眺めながら、俺は深呼吸を繰り返した。手に持った携帯電話の画面には、彼女に送るメッセージが表示されている。簡潔な内容だけど、それでも送信ボタンを押すのには勇気が必要だった。


「昼休み、話があるから学校の裏庭に来てくれない?」


送信ボタンを押した瞬間、胸の中で何かがはじけたような感覚がした。待ち時間は永遠に感じられたが、やがて返信が届いた。


「わかった、行くね。」


彼女の返事に、俺の心臓はさらに激しく鼓動した。昼休みまでの時間が、一層長く感じられる。


昼休みになり、俺は裏庭へ向かった。そこは普段誰も来ない静かな場所で、俺たちの秘密の話をするのにぴったりだと思った。空は澄み渡り、風が心地よく吹いている。そんな中で待っていると、彼女が現れた。


彼女が近づいてくると、心臓がさらに高鳴った。彼女の笑顔が、今まで以上に輝いて見えた。頬が少し赤くなっているのが、自分でも分かる。深呼吸をして、覚悟を決めた。


「ユウヤ君、何か用?」


彼女の問いかけに、俺は一度大きく息を吸い込んでから、意を決して言った。


「ずっと好きでした。俺と付き合ってください!」


一瞬、時間が止まったような気がした。彼女の表情が驚きから少し困惑に変わり、次に申し訳なさそうな微笑みを浮かべた。


「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるの。」

その言葉に、心がズキリと痛んだ。興味がないとはっきりフラれた瞬間、世界が一瞬で冷たくなったように感じた。頭が真っ白になり、何も言えなくなってしまった。彼女は軽く頭を下げて、その場を去っていった。残された俺は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


校舎裏で落ち込んでいると、ふとヒナタが近寄ってきた。淡い陽射しが彼女の髪を照らし、風が優しく彼女のスカートを揺らしていた。彼女の登場は、沈んだ気持ちに一筋の光を差し込むようだった。


「せんぱ〜いっ♪」


彼女の明るい声が、重たい心を少しだけ軽くしてくれた。ヒナタはいつも俺のことを気にかけてくれる、そんな優しさが心に染み渡る。


「なんでお前が校舎裏にいるんだよ?」


俺は驚きと共に問いかけた。


「え?それはぁ……先輩を見かけたからですけど?」


ヒナタは笑顔で答え、俺の顔をじっと見つめた。その瞳に映る自分の姿が、少し情けなく思えた。


「お前は、ストーカーか?」


俺は冗談半分で言ってみたが、彼女は無邪気に笑い飛ばす。


「えぇー、違いますって!だから見かけただけですってー」


彼女の無邪気な笑い声が、沈んだ心を少しだけ明るくした。ヒナタの笑顔は、どんな時でも俺を元気づける。


「またフラれたんですかぁ?」


彼女の問いかけに、俺は苦笑いを浮かべた。


「またってなんだよ」


「だって、さっきの人たちが言ってましたよ?」


「はぁ?あいつら……」


「去年は10戦0勝10敗の完敗だったって」


「うっさいわっ!」


俺は照れ隠しに反論したが、ヒナタの笑顔を見ると少し気が楽になった。


彼女はクスクスと笑いながら、俺を慰めるように近づいてきた。その姿がとても愛おしく思えた。


「そんなに落ち込むことはないじゃないですかぁ。近くに先輩のことを良く知ってて〜とても可愛い子がいるじゃないですか〜!」


その言葉に、俺は思わず辺りを見渡したが、誰もいない。


「どこにいるんだよ?いないじゃん!」


「うわーっ。ひどっ!ここにいるじゃないですかぁ!」


彼女は自分を指差し、可愛らしく頬を膨らませた。その仕草がまた、俺の心を和ませた。


「お前は妹分だろ〜うちの実の妹より妹じゃん」


「うわぁ。何ですかその存在……嬉しいような嬉しくない感じですけどぉ……」


俺はため息をつきながら、彼女の言葉を真剣に受け止めた。確かに、ヒナタは特別な存在だ。


「ちなみにですけどぉ〜、先輩の好みを教えてくださいよ?」


「好みか……えっと……可愛くて、優しくて、明るくて、俺のことを理解してくれて、一緒にいて楽しい感じかな……」


俺が言うと、ヒナタは満面の笑みで頷いた。


「うん、うん……うわぁ♡それって……わたしじゃないですかっ!」


彼女の嬉しそうな笑顔に、俺は一瞬驚いた。


「はぁ?」


「全部、当てはまってますよっ!」


俺は驚きと共に心の中で整理を始めた。確かに、彼女は可愛くて、優しくて、明るい。そして、俺のことを一番理解してくれている。一緒にいると楽しい。全て当てはまっている。


「でも、お前は妹分だろ?」


「えっと……それって関係あります?」


「関係あるだろ〜?だって妹だろー」


「え?妹ではないですよね?当たり前ですけど、親が違いますし」


彼女の言葉に、俺は一瞬言葉を失った。確かに、血の繋がりはない。でも、それでも俺は彼女を妹のように思っていた。


「まぁ……そうか……って、ヒナタと付き合えないだろ」


「え?どうしてです?」


首を可愛く傾げて聞いてくる彼女。その無邪気な姿に、俺は心が揺れた。


「お前……俺と付き合いたいとマジで思えるのか?」


「はいっ♡ 大好きですねぇ……せ〜んぱいっ♡」


ヒナタの即答に、俺は心が温かくなった。彼女の真っ直ぐな気持ちが胸に響く。


「だから学校で抱きつくなよっ」


「はぁ〜いっ。学校じゃなければ良いんですね?」


ヒナタと付き合う?どうなるんだ?いつも一緒にいたんだぞ?


「兄妹みたいな感じだっただろ?」


「それは小学校の中学年の時ですよねー?」


「ん?高学年の時は?」


「その頃から好きでしたよ?バレンタインも本命あげたじゃないですかぁ〜!もぉー」


「あれって義理じゃなかったのか?」


「えっ!本命ですってばっ!手作りですよ!手作りッ!」


その時のことを思い出しながら、俺は驚きと共に彼女を見つめた。彼女の頑張りを思い出すと、心が痛んだ。


「それは知ってる。でも……開けたら真っ二つに割れてたぞ。パリって真ん中から……」


「えぇ〜……ホントですかー。うぅ……丸一日、頑張って作ったんですよ〜ううぅ……」


彼女の涙ぐんだ目を見て、俺は胸が痛くなった。あの時、彼女がどれだけ心を込めて作ってくれたのかを考えると、自分の無神経さが恥ずかしくなった。


「っていうか……付き合ってもさ、今みたいな感じが続くだけじゃないのか?」


「それで良いんじゃないですか?楽しいですし、幸せですよ?」


ヒナタの言葉に、俺は少し安心した。彼女の無邪気な笑顔が心を温める。


「まぁ……そうだな。」


俺、納得しちゃったよ……違和感ないし……いや、むしろ心地よい。この感覚、何なんだ?


その時、柔らかくて温かいものが唇に触れた。甘い香りが漂ってくる。気がつくと、ヒナタが俺にキスをしていた。心臓が早鐘のように打ち、頭の中が真っ白になった。


「……先輩にファーストキスを、あげちゃいましたぁ♡」


ヒナタの声が遠くから聞こえるような感覚。驚きと共に、胸の中で何かが弾けた。


「……あ、ありがとう。俺もファーストキスだった」


ヒナタは嬉しそうに目を輝かせていた。彼女の目は喜びでキラキラと輝いている。俺の心臓は未だに落ち着かない。


「うわぁ♡ 先輩のファーストキス貰っちゃいましたぁ」


「えっと……俺で良いのか?」


「先輩じゃなきゃダメですね……先輩は、わたしじゃダメですかぁ?イヤでした……?」


俺は心の中で自分に問いかけた。いや、イヤじゃなかった。むしろ、心地よかった。


「はぁ……イヤじゃなかった。嬉しかったな」


「先輩も認めちゃいましたね〜♪」


「俺と付き合ってくれるのか?」


「はいっ♡」


その瞬間、俺たちは新たな関係に一歩踏み出した。これからどうなるかはわからないけれど、ヒナタと一緒にいると何か特別な未来が待っているような気がする。


この作品は共同作品です。ゆきのあめ・みみっく

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