アガサ山荘殺人事件
『8月24日 アガサ山中腹にある洋館にて、合計7人が殺害される事件が起こった。
被害者は、向島剛(23)、水島樹里(22)、筧雄馬(22)、丹波圭人(21)、国崎美空(21)、黒島来実(21)、梅野司(22)の7人となっている。
被害者の1人である黒島来実が警察に証言した情報によると、梅野司が犯人であるとされている。
しかし、彼女が説明した梅野司が犯人であるならば、おかしい点があった。
それは、国崎美空の死因が毒殺でなく、出血死であったことと筧雄馬の死因が溺死ではなく、感電死であったことだ。梅野司が犯人であるためには、国崎美空の毒殺が必要である。そして、筧雄馬の感電死を溺死と偽る必要もない。
そのため、梅野司が犯人であるという彼女の説明は、この事件の真相を説明するものではないと考えられる。
では、別の推理をするために、警察の捜査から分かった情報を書いていこうと思う。
まず、吊り橋から落ちて転落死した丹波圭人は、吊り橋があった崖下に酷く全身を打った状態の死体が吊り橋の残骸と共に見つかっている。死体はDNA鑑定から丹波圭人であることは確定している。
丹波圭人の死体があった崖下は岩がごろごろと転がっており、地下水がある様子ではなかった。また、死体の回収は困難を極め、回収に参加した隊員が負傷したため、丹波圭人の死体回収のみが行われた。しかし、その死体回収の際、吊り橋の一部と吊り橋のロープを切ったとされるナイフが回収された。
回収された吊り橋の一部からは、どのロープが切られたのか、落下の際に壊れたのかは分からなかった。よって、黒島来実の証言にあったルバの吊り橋が誰によって行われたかは不明である。
そして、吊り橋と一緒に見つかったナイフであるが、非常に切れ味のいいもので、ロープを一撃で斬れたものとされる。黒いナイフの柄の上部は日で焼けて、色が薄くなっており、下部は日に焼けておらず、黒いものであった。この日焼けはくっきりと直線で分かれていた。
次に、洋館内の死体について説明していくが、最終的に洋館が燃えてしまったため、洋館の死体の一部は焦げてしまっている。しかし、洋館は防火性に優れた設計となっていたため、洋館の構造自体は崩れていなかった。
そして、2階で手前から2番目の個室には国崎美空の死体があり、この死体は2度に渡って、燃やされた形跡があった。これは、刺殺された後に、燃やされたという来実の証言に合致している。
国崎美空の死体には、背中から心臓を一突きにした傷跡があり、この傷が致命傷となって、出血死したとされている。背中の傷は刺された本人が直接刺すことのできる位置にあらず、何者かに刺されたものである。
彼女の死体の背中には、木の板などのナイフを防ぐことのできるものは隠されておらず、毒針の傷跡および、体内からの毒の検出は確認されなかった。また、ナイフも見つかっていない。
また、彼女の部屋のチェスト裏には、他の部屋にはないくぼみがあった。このくぼみには天井裏へと続く小さな空間があり、その空間にはすすが詰まっていた。よって、この穴には木の何かが詰まっていたとされる。その穴が通じる天井裏には、自動発火装置の残骸と不自然な空間があった。
次に、水島樹里の死体はキッチンの床に放置されていた。死因は毒殺で、毒はヒ素である。このヒ素は通常よりも硫黄がたくさん含まれていた。そして、水島樹里は致死量を遥かに超える量の水を飲み込んだことにより、即死であったと考えられる。
キッチンの水道は、止水栓が止められており、水道が出ない状態であった。そして、蛇口全体が何者かによって、根元から破壊されていた。蛇口本体は現在も見つかっていない。
また、水道管にヒ素が含まれているか確認したところ、ヒ素もヒ素以外の毒も検出されなかった。これはトイレのタンクに毒を入れ、毒水を拡散させたという証言に矛盾するものである。
次は、向島剛の死体は、2階の奥の部屋で見つかり、口から喉をライフル銃で撃ち抜かれたことによる死亡である。死体は歯が折れており、口元が火傷していたため、銃口を口から離して発砲したと考えられる。
しかし、銃口は布で拭かれた形跡があり、発砲時に埃などは付いていなかったと考えられる。よって、証言と矛盾する。
向島剛が銃を両手で握った部分に硝煙反応が見られなかったが、死体全体に硝煙反応が見られた。また、死体の銃創の角度は、向島剛が床にライフル銃を置いて発砲したことと合致している。
よって、向島剛は他殺ではなく、拳銃自殺をした可能性が高い。
そして、筧雄馬が感電死した原因は風呂の底に沈んだドライヤーである。ランプのコンセントにドライヤーをつなげ、それを水を張った風呂に落としてしまったことによる感電死だった。
筧雄馬は短髪であったので、ドライヤーを使う必要はないと考えられている。また、洋館には自噴の地下水による水道しか通じておらず、電気、ガス等は無かった。
そして、水道には毒が含まれているという証言からも事件中は、水道水を使うことは躊躇われていたものと考えられる。よって、筧雄馬は入浴中にドライヤーを落としたという訳ではなさそうである。
また、筧雄馬の近くにはビニールで出来た黒い紙が発見されている。その紙は焼けてしまい、何が書いてあったか不明である。筧雄馬の自宅のゴミ箱からも、似た形状のビニールの紙が見つかっている。
しかし、雄馬宅で発見された紙も焼かれていた。どうやら、筧雄馬自身がライターで
次は、梅野司の死体は2階の1番手前の個室にあり、金槌で殴られたことによる撲殺である。後頭部を何度も何度も殴られていた。これは、梅野司が犯人であるという告白の後、彼が黒島来実を襲った。そのため、彼女は自己防衛のために、彼の頭を何度も殴りつけたためである。
彼の死体には硝煙反応があり、ライフル銃の火薬と拳銃の火薬が検出された。彼が向島剛の殺害に関わっているわけではなく、蛇口、玄関の鍵穴を壊す際に2つの銃を使ったためだと考えられる。
おそらく彼は国崎美空殺害に使われたナイフも処分したと考えられる。それらの3点はがけ下にある可能性が高い。しかし、先ほど説明した事故に加え、崖が崩落する可能性が高いため、崖下の捜索は成されていない。
最後に、黒島来実の死体は1階の真ん中の個室にあった。扉の近くに倒れており、外からは死体が引っ掛かって、開かないようになっていた。死因は煙を吸い込んだことによる窒息死であると検死された。
右手にはスマートフォンが握られており、110番と通話中だった。そして、彼女の死因となった煙に関しては、天井裏の通信機能抑止装置が発火したことによるものだとされている。
通信機能抑止装置は充電が切れると、発火するようになっていたようです。この装置の発火から煙が出て、洋館中に充満したようです。洋館内の窓がすべて閉まっていたことで、煙が外に出て行かない構造になっていたことが煙の充満を引き起こしたようです。
7人全員が死亡した後、吊り橋が壊れているので、救助は困難を極めました。ヘリコプターで近づこうにも火災が起こっているので、近づけませんでした。消火しようとヘリから水を撒きましたが、洋館近くは風が強く、消火には時間を要しました。
消火には3時間以上かかりました。消火と言うよりは、燃えるものが無くなっての鎮火と言う方が正しかったかもしれません。消火後の洋館は全体が焦げて、黒くなっていました。洋館の中には生きた人間はいませんでした。どんなところに隠れていても、あの煙と熱を3時間耐え凌ぐ場所はありませんでした。
また、洋館を囲む穴を吊り橋無しで渡ったような跡はありませんでした。救助ヘリ以外にアガサ山周辺を飛んだヘリはありませんでしたし、洋館を囲う穴周辺に杭やロープで結んだ跡はありませんでした。また、穴の崖はロッククライムできるような岩でなく、底に行くにつれ、手をかける場所の無いつるつるした岩肌となっていました。
よって、吊り橋が壊れた洋館からの脱出は不可能であると結論付けました。
事件の概要はこれでおしまいです。
ここからは、少々おかしな点を少し紹介します。
まず、梅野司が破壊した玄関の鍵穴は、ただの鍵穴にも関わらず、何か配線の跡がありました。何かの電子機器が鍵穴に仕込まれていた可能性があります。また、蛇口についても、不審な点があります。
壊された蛇口が太さの割に、水の通る管が小さいことです。おそらく、自噴する地下水の水圧に耐えるためだと推測できますが、それにしても太い気がします。
次に、雨どいについてです。実は、雨どいには大量の毒が塗りたくられていました。そのため、雨どいから水が流れ出る地面には、毒が大量に検出され、植物を枯らしていることが分かりました。
最後に、おかしな点ではありませんが、推測されることがあります。
金庫にしまわれた兵隊の人形です。それらは、7人の死体の状況と酷似していました。さらに、金庫の暗証番号である1939は、”そして誰もいなくなった”が出版された年であることから、その作品を意識していることはお分かりかと思います。
そして、アガサ山、全員が死んでしまう状況、クローズドサークル。ここまでそろうと、やはり、犯人の手記が入った
しかし、現在、それに似通った壜は発見されていません。
ですが、その壜にはこの事件の真相が示されていることでしょう。
僕はついにこの事件を解くことを止めました。しかし、誰かがこの事件ノートを読み、事件の真相が解かれることを止めることは出来ません。
ぜひ、この事件の真相を解き明かしてください。
能登羽』
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