第22話 作戦会議・1

 私達から遅れて2日後、ユーバァ将軍率いる第三独立攻撃部隊が到着した。


 離れた国境から来た私達より遅いのが解せない。でも、その2日間で最終的な準備が出来た事、そしてブーレイ将軍と話す事が出来た。結果論だけど、むしろありがたい。


 そして、ユーバァ将軍は遅れた事に一切の悪べりもせず、すぐに私達に伝令を飛ばしてきた。


 * * *


「まさか、遅れてきたのにここに来いと言われるとは思ってもみなかったわ」


 その翌日、第三攻撃部隊に向かうコーネル様と私、そしてアドラーさんがいた。

 予定では街の会議室に集まる筈だったけど、出向く事に色々思う事があったのか。それとも単純に面倒くさいと思ったのか。


 ……いや、きっと両方だろう。半年間、副官として接してたから容易にその光景が想像出来る。


「それはまだいいよ。それよりも、これは一体なんだろうね」


 コーネル様は少し呆れたように言いながら、首を左右に振って周りを見渡す。


「……はぁっ」


 私達に複数の兵士が随行していて、どうやら遠くにも兵を配備しているみたいだ。

 たしかにお迎えや案内役は必要だろう。しかし普通はここまではしない。これではまるで――

 

「はい。まるで敵国に来た気分です。私達はえらく嫌われたものですね」


 その私のセリフを否定するかのように、アドラーさんは食い気味に言葉を重ねてくる。


「いや。オレが同行しているからかもな」


「へっ? どうしてですか?」


 確かに部隊同士の正式な会議では、最も階級が高い者と補佐として1人同行するのが通常だ。

 しかぃ、それ以上の同伴者もそこまで珍しい事ではないし、そもそもそれで警戒を高める理由にはならない。


 少し困惑している私の顔を見て、少し苦笑いしながらアドラーさんは答えた。


「あー。今回参加する第二独立攻撃部隊のディモス将軍とは因縁があってな。偶発的な事故に備えているんだろうさ」


「……あっ」


 それを聞いて、私は以前コーネル様から聞いた話を思い出していた。


――一般兵部隊の活躍を妬ましく思った貴族軍人がいてね。そいつの策略でアドラーは窮地に追い込まれた


 その貴族軍人って、もしや……


「まったくくだらねー。確かに奴に言いたい事は山ほどあるが、今回の目的はセラの護衛だ。大丈夫だとは思うがな」


「うん。悪いけど頼むよアドラー。向こうがセラに対して何かしてこないか心配だからね」


「……本当にくだらないわね」


 難癖をつけて追放したのにも関わらず、わざわざ遠方から動員させるその魂胆が情けない。私やコーネル様が嫌いなら嫌いで構わない。むしろ無視してほしい。仮にも味方、同軍なのだから。


「まぁ、僕やセラ、そしてアドラーは貴族に良く思われてないのは事実だからね。ちゃっちゃと終わらせて帰ろう」


「そうですね。私達は私達、そして国の為にやるべき事をするだけです」


 私はそう言いながら周りを改めて見渡す。


「それにしても……」


 ここに久しぶりに戻ってきたけど、皆の反応がここまでバラバラだと色々と考えさせられる。


 嬉しそうに声をかけたり手を振ってくれる人

 もう無関係だと気にも留めない人

 そして私を睨んで敵意を丸出しにしている人

 敵視してるのは貴族側にいる人だろう。


――私は第三独立攻撃部隊でそのような存在だったのだろうか


 * * *


 そうこうしている内に司令部に到着して、そのまま作戦室に案内された。


「……ここに入るのも久しぶりね」


 相変わらずの屋敷かと錯覚するくらい豪華な室内には、第一独立攻撃部隊のブーレイ将軍、そして第二独立攻撃部隊ディモス将軍が先に入っていた。


「おお。来たかコーネルとセラ副長、そしてアドラーか! 久しぶりじゃの!」


「ご無沙汰しております。ブーレイ将軍」


 私達に対して嬉しそうな顔を見せるブーレイ将軍とは対照的に、ディモス将軍の表情は一気に険しくなる。


「どうじゃ。身体の方は良くなったかの」


「おかげさまで少しは戦える様になりました。嫌いな将軍の首は十分に刈れますよ」


「ハッハッハッ! それは頼もしい事じゃて」


 ディモス将軍の顔をしっかりと見ながら、大声で話する2人。

 それを無視しようとするものの動揺が見え隠れするディモス将軍。


 少しずつ険悪な空気に包まれていく中、扉の向こうから聞き覚えのある大きな声が聞こえてくる。


「……」


 そして、主役登場とばかりに堂々とユーバァ将軍と副官のリリカが作戦室に入ってきた。



――遂にその時が来たのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る