第6話 資格はなくとも

君はあの日から行方不明になって、僕の前から消えた。


見つかったのはその二日後。


この海に身を投げて、冷たくなっていた。


君の両親からスマホに連絡がきて、混乱したままの僕がここに来た時にはもう。


君は僕の手の届かない所にいた。


いつも希望に輝かせていた目はガラス玉のように光を受け付けなくなり。


サラサラと風に揺れていた綺麗な髪は、水に濡れて冷たい板の上に広がっていた。


笑みを浮かべて柔らかな声を発していた口は、横に引き結んだまま沈黙を貫く。


僕の手を引いてくれた温かく、柔らかかった手は。


冷たく、硬くなっていた。


遠くから聞こえる叫び声が自身の声だと気がついたのは、君の両親が僕の事をそっと抱きしめた時だ。


まるで悪夢の中にいるようだと思った。


既視感のある、重苦しい空気の中で呼吸出来ている事が奇跡だと感じた。


抜け殻のようになったまま、君の葬式に出て。


両親を見送った時と同じように、君を見送って。


シワになるまで握りしめた制服の上に、ぽたりと水滴が落ちた。


君を引き留められなかった、僕に泣く資格なんてないのに。


拭っても、拭っても、止まらなかった。


同じように涙をこぼす君の両親に、声をかけられた時。


「一緒に悲しんでくれて、ありがとう」


「……今度、君が知っているあの子の話を、聞かせてくれないか?」


悲しむ二人を見て。


その時になって初めて、君は死んだのだという事が理解出来た。


僕の光は、希望は。


君の死によって、あっけなく散った。

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