第3話 君が壊した

僕にとって孤独は、自分を他人と隔絶する檻であると同時に、自分を守る盾だった。


一人であれば、誰も僕を傷つけられないから。


その檻の中で、ままごとのように落書きを描いていた。


それで良かった。


たとえ、食事が砂を噛むように味がしなくても。


たとえ、見るもの全てが色褪せて見えても。


たとえ、他人の声が全て狂ったラジオのノイズのように聞こえていても。


それで良かった。


誰かに傷つけられるよりかは、ずっと良かった、はずなのに。


君が全てを壊したんだ。


強引に檻を、盾を壊し、僕の手を掴んだ。


君と食べたものには味があると感じられた。


君の紺碧の瞳に映るものは、素直に綺麗だと思えた。


君の太陽よりも鮮やかな金の髪を見てから、世界に色を感じられた。


拒絶しても、何をしても。


『燈紀‼︎』


君は何度も、柔らかい声で僕を呼ぶから。


僕は君から、逃れられなくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る