第3話 スキルが目覚めたけど
そんな感じで業務を続けて二ヶ月経った。仕事自体にも慣れてきて隙間時間も見つけられるようになってきた。
ある日、飛竜の一頭が自分のメシをぶち撒けた。機嫌悪いのかな? 暑くて食欲が無いのかもしれない。でも無駄にしてはいけないのでかき集める際に微妙に混ざりきってない餌に両手で触れた途端‥‥‥
【合成しますか?】
脳内で声がした。
なんだ、こりゃ‥‥‥?
なんだかわからないけど、とりあえずしてみよう。【はい】
ぶち撒けた餌が光り出し見た目の色合いの違う餌に変わった。なんじゃ、こりゃ?
それを見つけた飛竜が俺を鼻先で押し退けて食べ始めた。
「グルゥルゥ!!」
さっきまでの餌に見向きもしなかった飛竜が一心不乱にガツガツ食べている。
他の飛竜も騒ぎ出す。
なんなんだ? 何が起きている?
騒ぎを聞きつけたロザリーがやってきた。
「アル、どうしたの? どうして飛竜達が騒いでるの?」
「いや、わからない。どうしたんだろうな?」
結局その日は他の飛竜達が落ち着くまでかなり時間を要した。
あの頭の中の声はいったいなんだったんだろう?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
仕事の合間の時間にもう一度餌に触ってみた。
片手で触った時は何も起きない。今までも片手で触る機会はあっただろうけど別に何もなかったよな。
両手で一つの器に入っている餌に直接触れるとさっきと同じように声がした。
検証してるんだからもちろん【はい】だ。
するとまた餌が光り出し緑の餌と茶色の餌を混ぜた色合いのはずが‥‥‥赤と青の鮮やかな色の餌に変わった。
この変化した餌の匂いが強いのか昼寝中の飛竜達まで起きて騒ぎ出した。
なんとなくわかったのはこの変な餌を飛竜達が欲しているという事だ。この間みたいに一頭だけにあげると騒ぎ出すので飛竜達全員にあげざるを得なかった。
だって飛竜の殺気がすごいんだもの‥‥‥。
この間のように一心不乱にがっつく飛竜達。食べ終えた後はみんな大人しくなり世話がしやすくなった。
なんだろうな? これ‥‥‥
ロザリーに相談してみようかな?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ロザリー、相談があるんだけどいいかな?」
「何〜? いいよ、飛竜達の事?」
ポケットから例の餌を取り出して見せる。
「この餌ってなんだかわかる?」
「え? コレって‥‥‥飛竜の餌(上)じゃない!!? どうしたのよ、コレ?」
「飛竜の餌(上)?」
「飛竜の餌にもランクがあってコレは高ランクのやつよ!! 予算が足りなくて買えないのに。まさかアル、勝手に買ってきたんじゃ‥‥‥?」
「いやいや、そんな訳ないじゃん」
餌にランクがあるなんて今初めて知ったんだし。餌なんてどこに売ってるのかも知らないよ。
「じゃあ、どうやって手に入れたのよ!?」
「‥‥‥作った?」
「なんで疑問形なのよぉぉ!?」
まあ、実際にやるから見てもらおうか。
「俺もよくわかんないんだよ。やってみるから見てて」
緑の餌と茶色の餌をいつも通り器に出す。
そして両手で触れると‥‥‥出来た。
「と、まぁこんな感‥‥‥」
「なんなのよぉ!! それぇ!?」
興奮したロザリーが俺の首根っこを締める。
く、苦し‥‥‥。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ホントにごめんなさい、アル」
「死ぬかと思ったよ‥‥‥」
平謝りしているロザリーと涙目の俺。
「でも、その能力って‥‥‥?」
「俺のスキルだろうな。でも自分でもよくわかってないんだ」
「そうなんだ。じゃあとりあえず‥‥‥ここにある餌全部やってもらっていい?」
「え‥‥‥? 全部?」
結局、定時になっても全部終わるまで解放してくれなかった。かなり疲れた。
なんで残業代も出ないだろうにこんなことをさせられているのだろう‥‥‥?
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