第14話

 葬儀もまた午後からだと言うのにまたアラームよりも早く起きた。前日までと同じように仏間に行き線香を灯す。兄もほどなく起きてきた。簡単な朝食を済ませ、姉たちや姪一家を待った。取り立てて慌ててすべきことはない。ただお膳用にご飯を炊いておくだけだった。

 昼近くになると、花や果物籠が届けられた。一方で姪はお寺さんに出すようのお菓子を買いに出かけて行った。六畳間に二段の花が三つ、果物籠が三つ並べられた。

 簡単な昼食終え、着替えていると、参列してくれる叔母さんたちがやって来た。各々娘に運転してもらったり、姉が迎えに行ったり、息子に手を引かれたりして参集してくれたのだった。

 予定は午後二時からの葬儀だったが、お寺さんがもう一時過ぎにはいらっしゃって、 参列者はとうにそろっていて、お膳もひとまず供えてあったから

「どうしますか? もう始めますか?」

 とお寺さんが聞くものだから、

「参列者はもう揃ったので、少し早いですがお願いします」

 兄が告げると葬儀が始まった。お焼香を回し、数珠を片手に合掌をする。

「では、このまま引き続いて四十九日法要をします。お膳はどうするの?」

 お寺さんが読経を済ませて合図してくれるものだから、姉が午前中にこしらえた二つ目のお膳を持ってきて前のものと交換した。法要が始まった。お寺さんの読経の速度が速いのか、あっという間に終わった。(もうこれで終わり?)と正直思わなくもなかったが、じっともしていられない。午前中に準備しておいたお布施を兄に託してお寺さんにお茶とお菓子を差し出しながら、それを渡してもらっているうちに、花を姉が切り分け、お菓子や果物や餅を参列者用に私や姪たちが小分けした。実は姪一家も来ていたのだが、姪の子供が発熱し、旦那と共に居間に戻っていたのだった。もう終えたと言うので一足先に家に戻らせることにした。

 ひとまずお墓に持って行ける花をまとめたと言うので、納骨に向かおうと言うことになった。お墓につくと花を替え、兄が骨箱から骨を墓の中に入れた。お寺さんはその間鈴を鳴らし続けていた。骨箱も割って墓に入れた。

「はい、もういいですよ」

 お寺さんの合図でお墓をあとにすることに。お寺さんは自動車で行ってしまい、分乗した私たちは家に戻って、参列者への引き出物を仕上げた。午後とは言え、食事代を出さないわけにはいかないから商品券を兄から渡してもらっている間に、先ほどの続きで小分けを完成させ、叔母さんたちに渡した。

「じゃあ、もういいのかね」

「たくさんもらっていいだかな」

「花代渡すわ」

 叔母さんたちは各々一言二言告げてから帰路についた。私たちは肩の荷が下りて、ようやく着替えることができた。姉たちは一旦家にシャワーを浴びに行った。旦那が子供を連れて一足先に戻った姪も帰って行った。

 着替え終えた私と兄はアイスコーヒーを飲んでとりあえず一息入れることにした。

「後は仕上げ代わりだね」

「そうだな」

 私が言うとスマホをいじりながら兄が答えた。普通葬儀を終えたらお斎があるか、弁当を配るとかになるのだろうが、時間的にそれもないから、それに身内ばかりで行ったのだから、ということで仕上げ代わりに回転ずしへ行こうと言う算段になっていた。一家のある姪の動線に寿司屋があるので前乗りしておくと言う段取りで、十七時半過ぎに姉たちが私たちを迎えに来て揃って出発した。するとほどなくして姪から

「一時間待ちだって、どうする?」

 と言う電話が入った。

「他の回転寿司は?」

 運転する姉が言うのだが、別の回転ずし店にはこちらの方が早く着くようで

「ちょっと待ってな。寄ってみるわ」

 車を進めた。幟が立ってない。店内に灯りはない。駐車場に入ると休業日の看板があった。

「こっちも駄目だわ。休みになってる」

「じゃあ、どうする?」

「もう居酒屋でもいいんじゃねえ?」

 姪との会話に兄が入って来て、チェーン店の近くにいる姪たちが先行して入っていることになった。本当だったら、回転ずし店で一人前を持ち帰りにして父の仏壇に供えようと思っていたが、それもできなくなった。ほどなくして私たちも到着して、お斎ならぬ打ち上げが行われたのだった。

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