第43話 さて...どんなイベントを行おうかな?
さて、"柳ケ瀬風雅商店街”活性化イベントだが、何をやろうかな?
最近の野外イベントでは、外部からキッチンカーを呼んでお客さんを呼ぶことが一般的だ。これはもはや珍しい手法ではなく、さらに言えば、せっかく商店街に来たお客様を奪われてしまう危険性が高い。
さらに、サーマレント産の肉や魚が使われなければ意味がない。外部から呼んだキッチンカーの人たちが、うちが指定した肉や魚をすんなりと使うか分からないからな。
SMRの力を借りてビッグネームを招くのはどうだろうか?2022年の信長祭りは、”村木拓哉”の出演により"柳ケ瀬風雅商店街”周辺が大変な賑わいを見せた。
しかし、ビッグネームを呼ぶには高額な費用がかかり、SMRに大きな負担を強いることになるだろう。また、予想を上回る県外からの来客が訪れた場合、対応しきれない可能性もある。
人気俳優や女優を目当てに数時間、あるいは数日間滞在してもらうよりも、商店街近隣のできるだけ多くの住民に足を運んでいただきたい。
しかし、2022年は特別だったと親父が言っていた。その時だけは商店街も昔の賑わいを取り戻し、お袋も「ムラタク”は本当に格好よかった」と興奮した声を上げていた。
でもなぁ...出来ればその時の賑わいを”ムラタク”に頼ることなく再び取り戻したいよなぁ。また来てくれよ、”ムラタク”。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さて、今回のイベントでは、”柳ケ瀬風雅商店街”で厳選された美味しい肉や魚などの食材が手に入ることを、ぜひご近所の皆様に知って頂きたい。
また、その食材を使った絶品料理が”タコマンボウ”や”料亭田中”、”割烹料理重光”、”もっと喰いなはれ食堂”などで楽しめることも紹介したい。
将来的には、焼き肉屋”ジュ~ジュ~”やステーキ”肉革命”にも、サーマレントで狩ったミノタウロスの肉を卸したいと考えている。そのため、次の目標はダンジョン”ニクマツリ”の攻略かもしれないな。
イベントの構想を練っていると、柴さんが「さっき”柳ケ瀬風雅商店街活性化イベント”を開催したいと言っていたが、太郎は何か案があるのか?」と尋ねてきた。柴さんは、マグロの兜焼きの特に美味しい部分である脳天や頭肉、頬肉をつつきながら、口に運んでいた。
マグロの目玉の周りや裏側はコラーゲンが豊富で、プリプリとしたホルモンのような食感がたまらない。
柴さんがマグロの目玉の周囲を美味しそうに味わい、秘蔵の清酒”TOMOZOU”」と共に楽しむ姿を見て、カーシャは小声で「そんな部分まで食べるのですか?地球の方々には...本当に驚かされます」と呟いた。
確かに、日本人は魚の目玉周辺から内臓に至るまで、あらゆる部位を楽しむ食文化がある。刺身、焼き物、フライ、蒸し物など、多様な調理法で魚を堪能する姿勢は、食に対する深い探求心を感じさせる。
この多彩な食べ方の中で、多くの人に魚本来の美味しさを手軽に知ってもらう方法として、バーベキューが挙げられる。お客さん自らが食材を焼く形式なら、バーベキューセットと具材を提供するだけで済む。
バーベキューが面倒なお客さんには、商店街のスタッフが食材を焼いて提供することもできるし、自分たちで焼いて楽しむ方には、安価に食材を提供することもできる。
それでいくか。"柳ケ瀬風雅商店街活性化イベント第一弾として、商店街全体でバーベキュー大会を開催するのはどうだろうか?
商店街の賑わいを取り戻し、多くの人々に楽しんでもらえるイベントになると思う。さっそく柴さんに提案してみよう。さっそく柴さんに提案してみよう!
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「柴さん、商店街全体でバーベキュー大会を開催しようよ!たくさんのグリルを使って、来場者に自由に美味しい肉や魚を焼いてもらうの。素材の味を知ってもらうには一番わかりやすい方法だと思うけど、どうかな⁉」
提案に期待を込めてみたものの、柴さんの返答はというと...。マグロの脳天をいじっていた箸を止めて、俺を見つめながらこう言った。
「太郎、バーベキュー自体は悪くないが、商店街内至る所でやるのは無理だわ。法令違反になるし、煙が大量に出たら"涌田呉服屋"の婆さんや"ブティック彩"の"杉もっちゃん"に首を絞められるぞ。この前は太郎の店の前だけだったから良かったが、商店街全体でバーベキューは絶対に無理だ」と却下された。
確かに、法令違反に触れるし、商店街には雨避けのアーケードがそこら中にあるため、煙の逃げ場が少ない。俺の魔法で煙を消すこともできるだろうが、そんなことをしたら...大騒ぎになるだろう。仕方ない、諦めるか。
「だが太郎、諦める必要はないぞ。商店街近くにある”ホテルグラン岐阜”の屋上ビアガーデンを借りるっていう手もあるぞ。あそこなら匂いも気にしなくて済むし、雨避け用のテントもあるはずだからな」
柴さんは俺の意見を否定するだけでなくて、代案も教えてくれた。それも一つの方法だな。
さらに柴さんは「魚の素材の旨さを知ってもらいたいのなら、商店街内で俺と岩ちゃんを中心にマグロやカツオの解体ショーをすればいいんだよ。さばいた新鮮な魚を、その場で回転寿司チェーン店の”スシゾウ”や”田中寿司”が握るとかな。各店でアイデアを出し合って、自分達の店で出来ることを考えさせよう!」と提案してきた。
「そうだぜ、太郎!奴らだって商店街の一員だ!こんな美味い魚や肉を食べれば、凄い料理が浮かんでくるはずさ!!今まで以上に”まいるぅ~”な料理を作くれるさ!」と岩ちゃんは言いながら、丼にご飯をてんこ盛りによそった。
カーシャもそうだが、サーマレントの連中は本当によく食べるな。
ただ...そうだよな。割烹料理屋や食堂、居酒屋だけでなく、ラーメン屋や喫茶店、パン屋もサーマレント産の肉や魚を使ったオリジナルの新製品を考えてもらおう!みんなの力を借りて、みんなで"柳ケ瀬風雅商店街"を盛り上げよう!
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俺や柴さん、岩ちゃんで盛り上がっていると、隣りからカーシャが元気よく「私も太郎様のお手伝いをいたします!!」と言った。
さすがにお腹一杯かと思ったが、カーシャは締めのレアチーズケーキを紅茶と一緒にゆっくりと味わっていた。
さらにユリーも、「私たちSMRもお手伝いしますよ。キッチンカーや手押しワゴンカー、お子様向けの移動式大型滑り台やジャングルジム、大型トランポリンやドーム型のエアートランポリンなど、無償でお貸しします」と提案してきた。
そんなユリーからの怒涛の提案に対して、柴さんは「おいおい、そんなに借りちまっていいのか⁉輸送費もSMRもちってことか⁉」と心配する。
柴さんが慌てふためいている様子をよそに、ユリーはサーマレント産のワインをゆっくりと口に運びながら、「うちの商品の宣伝にもなりますから。それに...この商店街を潰すわけにはいきませんからね」と、穏やかな声で語った。
そういえばSMRはアウトドア商品やイベント商品も販売・レンタルをしているんだよな。さすがSMR、頼りになる。
それから、酔っ払い対策としては智也の建設会社”新谷組”とスポーツジム"プロテイン"に頼むか。タイプの違う2組の輩たちが商店街をうろついていれば、騒ぎを起こすアホもいないだろう。まあ、もしもの時は俺が遠くから”なんちゃって魔法”で退場させちゃうけどね。
いい感じに構想が仕上がって来たな。あとは各商店街のみんなにサーマレント産の肉や魚を試食してもらい、自分たちの商店街を盛り上げるための新メニューを考えてもらおう。
他の商店街の人たちにも集まってもらい、試食会やイベントのPR方法、開催日などを決める必要があるね。考えることはまだまだ沢山あるけど、やるっきゃないよな。
さぁ!もう一踏ん張りだ!絶対に成功させてみせるぞ、"柳ケ瀬風雅商店街”活性化イベントを!商店街のみんな、全員集合だ!
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