第4話 カモ~ン、友三爺さん!!2回目
彼女を落ち着いて良く見てみると、背丈は175㎝の俺より少し低い位。170cm位だろうか?緑を基調としたサーコートを、見事なボディーラインで着こなしていた。
金色でとても艶やかな髪。瞳はエメラルド色で大きくぱっちりとしており、小さいけれどもはっきりとした輪郭を備えている鼻。そして、チャーミングな唇。
もう、言葉に表せないほどの美形。まあ、一生懸命言葉にしてみたけど...。こんな美人は、岐阜はおろか東京でもお目にかかれない...だろう。それにこのお方、俺が知っている人間様とは少し違う特徴を持ち合わせている。
そう...。彼女の金色の長い髪の毛の隙間から見えた耳が長かった。まさか...エルフ...?そんな訳ないか。まあ、聞くのも野暮だしね。エルフなど、小説や映画の世界の存在だ。耳の事は見なかったことにしよう。だが、他の美しすぎる顔のパーツは、忘れることはできないと思うけどね...。
彼女の美しさに、俺はただ見惚れていた。そんな俺の視線を感じた彼女が、「うん⁉」と首を斜めにコテンと傾けて俺の方を見返してきた。
可愛い...。惚れてまうやろ~~!!
そう、心の中で叫んだのも束の間で、今の抱き合っている状況を何とかしなければと思った。
こんな状況を誰かに見られて通報されたら、どんなに真実を語っても俺が罰せられそうだからな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は彼女から身体を離すことに複雑な心情を抱きつつ、それでも泣く泣く身体を離した。そして彼女に、「俺は友三ではないです」と素直に告げた。このまま友三爺さんのふりをすれば、あわよくば...という微かな欲望が心の中で騒ぎ始めたが、そんなつまらない嘘は遅かれ早かれバレるだろう。
俺が友三爺さんじゃないと告げると、彼女は非常に驚いた表情を浮かべ、「トモゾウジャない?それ、ほんとう?」と何度も俺の肩を揺さぶりながら聞いてきた。
彼女にとって友三は非常に大切な存在なのだろう。彼女の揺さぶる力が強い。痛い、痛い...。
それにしても、俺と友三爺さんがそんなに似ているのかな?俺が知っている友三爺さんはもう年を取っていたから、俺と似た姿を想像するのは難しいからなぁ。
ただ彼女は、 「友三さんはどこにいる⁉」と言って、俺から離れて辺りをきょろきょろと探し始めた。
もしかして、彼女は友三爺さんを探しているのか?
木の上を見ている。鳥じゃないんだから...。そんな所にはいないと思うんだけど...。自分と同じ、いやそれ以上の重さがありそうな岩を軽々とひっくり返して、「いない」って。ナメクジじゃないんだから。それにしても...すごい力だな。
あの娘は、俺が友三爺さんじゃないと知ったら、友三爺さんと一緒に来たと思ったのだろう。まだ友三爺さんを探している。そんなに...会いたいんだな。
でも、なぜ彼女は友三爺さんのことを知っているんだ?ただの精肉店の爺さんだぞ。こんな見知らぬ場所の美少女が、何でうちの爺さんを知っているるんだ?
謎は深まるばかりだ。
そして驚いたことに、徐々に彼女の話す言葉が、聞き取れるようになってきている。それも最初はわけがわからなく、聞き取りも出来なかったが、それが聞き取れるようになり、今ではスラスラと会話すらできるようになった。
俺は異国語など話せないし、ましてや聞き取りも苦手である。英検は準2級でTOEICは...575点である。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それはさておき、俺たちは近くにあった倒れた大木の上に座り、彼女に友三爺さんのことを伝えることにした。
俺の爺さんである友三さんは、15年以上も前に亡くなったこと、そして俺がその孫であることを彼女に伝えた。
「友三さん、人族だものね。私たちエルフ族だったらよかったのに」と、友三爺さんが死んだことを知って、彼女は寂しそうに呟いた。
爺さんが亡くなったことに対して、彼女は心を痛めてくれている。何だかありがたいな...。いやいや、何だか肝心なことをスルーしてしまったけど、今、自分の口から凄いこと言いませんでした?エルフって聞こえたような気がしたのですが...?
「私の名はエリー。昔、友三さんに助けられた者よ。私、いえ私たちエルフ族は、友三さんに大きな恩を受けている。でも、エルフの村で少しの間だけ暮らした後、友三さんはまた旅立ってしまったの」
やっぱりエルフと言った!やっぱり現実離れした美しさと、その現実離れした美しさと、見たこともないような尖った耳。サーコートを着ているなんて、コスプレや映画でしか見たことがない。本物、キター!!
写メ取ったら怒られるかな?
まあ、今ははしゃぐ時じゃないな。表情に出さないように気を付けよう。でも、一体ここはどこなんだろう?エルフがいる場所?どう考えても日本ではないよね?地球以外の場所?もしかして…異世界⁉またまたキター!!じゃないか。平常心、平常心...。
エリーさんを一人にして、俺は一人妄想の世界に迷い込んでいた。
そんな俺を心配して、「タロウ?大丈夫?」と聞いてきてくれた。エリーさん、優しい!!
でも、凄く美しい顔を近づけながら尋ねてきたので、慌てて「大丈夫、大丈夫」と答えた。色々な意味で焦ってしまった。
惚れてまうやろ~!本日2回目だな...。それにしてもエリーさん、無防備すぎる。
エリーさんは更に「友三さんは私達エルフに、この地に訪れる者がいたら、助けて欲しい。あくまでお願いじゃから、無理なら結構」と言い残して去って行ったと教えてくれた。
その後、約20年間、この扉の前にはエルフの者が交代で訪れているという。
俺は非常に申し訳ない気持ちになった。忠犬ポチ公みたいじゃないか。素直にエリーさんに謝った。
すると、エリーさんは「大丈夫よ、20年ぐらい。エルフの寿命に比べれば、大したことでは無いよ」と笑って言ってくれた。
なんとも種族の違いを感じた。というかもうエルフなのね。だがもう、エルフだろうと人間だろうと、それはどうでもいいけど。
そんなことを思っていると突然...。
グウウウウ~!
何とも場にそぐわない音が、俺の腹から鳴り響いた。恥ずかしいほどの大音量。そういえば、朝ご飯を食べてからだいぶ時間がたったような気がする。ただ、最近腹が空いたという感覚が、なかったような気がする...。いつ以来だろう?高校の時以来かな?
そんな俺の気持ちを察したのか、それともお腹の音が聞こえたのか、エリーさんが「タロウ、お腹が空いたの?」と尋ねてきた。「いいや」と口では言ったが...。
グルルルルルルルルルルル~!!
盛大にお腹の音が鳴ってしまった。何⁉消化能力まで高まっていない⁉
するとエリーさんが当然のように、 「この肉を焼いて一緒に食べよう」と言い、突然、僕たちの隣にある切り株の上に肉の塊が現れた。
「へっ⁉どういう事?」
突然約2kgの肉の塊が、俺の目の前に現れた。
もう何が何だか分からない。これはもしかして、異世界でよくあるアイテムボックスから出したということ...ですか?
もう友三爺さん、本当に現れて来てくれよ。そしてこの状況を説明してくれ。俺には何が何だか分からないことばかりだよ。
カモ~ン、友三爺さん!!
俺は本日2回目の友三コールを、心の中で盛大に叫んでいた...。
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