鉄炮雨より

白雪れもん

第1話雨の降る日

「ハァっハァっ」

息を荒く立てる男が雨の強く振り水しぶきが多い道路を走り抜ける。

「嫌だ、、、死にたくない!」

立体駐車場を走って昇っていく男は所々に大粒の汗をぽたぽたと垂らしながら足跡を付けるかのように自分から目印をつける。

「待ってくださいよ、、、何もしませんから」

後ろから早歩きでニヤついた顔を見せながら近ずいてくる黒髪の眼鏡をかけた男なら逃げるかのように走っていく。

「やめろ、、、、来るな!!」

とうとう近ずいた後ろから来る男は手で狐の形を作り首の高さあたり横向きにした後に開いていた口を閉じた。

閉じると共に首が飛ぶと、赤い色の液体を立体駐車場の床に水溜まりを作る。

首は立体駐車場の端っこにゴロゴロと転がし、死んだ魚の目を顕にした。

1秒ほど立ち尽くした後に、、ゆっくりと倒れると、さらに激しく赤い液体をばらまいた。



(今日の天気は、昨日と同じ、一日中バケツをひっくり返したような大雨が降り続けるでしょう。)

この言葉、昨日も聞いたな。

日本に雨が降り続いてから早20年。

雨がやまない日はない。やまない雨はないなんて言葉は単なる捏造だと思い知ったのも去年か。時の流れは早いもんだ。

「おはよぉー!」

ガタガタと大きな音を立てて階段を降りてきたのは姉の「砂洲賀藍良」。

そうそう、俺の名前は「砂洲賀遊助」都立吉祥寺霊魂専門学校に通う霊魂生。

霊魂生とは、この世にたむろしている魑魅魍魎の類を祓い、世間の安息を作る霊魂者の訓練生。

俺の姉も霊魂専門学校を卒業している。

実際、俺は乗り気ではないんだが家系が霊魂1家なので仕方なく入学した感じだ。

「早く飯食えー遅刻するぞー」

「うるせえまだ6時半だろー」

「行ってきマース。」

飯を食い終わると共に窓から飛び出した俺は、空高くへと飛び出し、ネクタイをヒラヒラと羽ばたかせる。

「よぉー!早いねー!」ちょっと待てよ

言葉を置き去りにして飛ぶ俺には言葉があまり聞こえなかった。

「待て待て、、早いんだよお前」

「お前が遅いだけだろ」

「てかその霊領域の中入れされてくれよー傘もって飛ぶとすぐ壊れるしビショビショだよー」

霊領域。

霊魂者の使う能力のひとつ。

霊を祓う力を自分を守るバリアとして空間に透明な壁を作り出す。

俺はその霊領域を雨が降っている状況と被せて全体を覆い隠す傘変わりに使っている。

「今何時?」

「知らん」

急いでいかなければならない状況なんだ。だから急いで早く行こうとしているのに止められたから遅れそうなんだ。

この何も考えてなさそうな男の名を「獅子島玲生」霊魂生の友達の人1人だ。

学校に着いた頃には8時9分になっていた。

チャイムが鳴るのが8時10分なので、ギリギリセーフと言うべきであろう。

「危ないねー、ギリギリじゃん。砂洲賀の癖に珍しい」

「玲生と登校中にあってなければもうちょっと早く来て本の一二ページは読める余裕があったかもな。」

「なんだよ!俺のせいにする気か?俺が大体悪いけどさ。」

「じゃあお前を悪者に仕立て上げても大丈夫ってことだよな。」

話しているうちに10分になって先生が扉を開けてホームルームを始めた。

「今日の時程は1時間目から6時間目まで今日は2組と合同の特別練習だ。」

ほう、珍しい。2組なら知り合いが何人かいる。

でも1組としかあまり面識がないから2組には中学で同じだったやつが2人いるだけだ。

霊魂専門学校に入学する変わり者はあまりいないからな。


ギュイーン、ギュイーン、緊急速報です。

鉄炮雨注意報が発令されました。

繰り返します、鉄炮雨注意報が発令されました。


「鉄炮雨注意報か、警報じゃないから安心しろ」


鉄炮雨警報が発令されました。5分後に鉄炮雨が降り注ぎます。


鉄炮雨警報とは、銃弾が降り注ぐように降る雨。鉄炮雨が降る警報。

鉄炮雨は数々の家の屋根を破壊し、地下シェルターに避難するか霊能力を使い家を強化させなければいけない。

「おーやばいやばい、鉄炮雨警報最近発令されすぎだろ。疲れるって」

「仕方ないことだ。早く霊領域をここら一帯に張らないと街か崩壊する。」

そういうと先生が「禊を始めろ」と発言すると共にみんなが机に頭を伏せ、光を体全体に帯びる。

2組でも同じことが行われている。

すると、


バチッ!


電気のような音と共に、みんなの集中が削がれる。

上に張り巡らされていた霊領域の繊維がブチブチと壊れていく。

「ヤバい!街が壊れる!」

そんな発言も虚しく、鉄炮雨が降り注ぐ。

1粒1粒が弾丸のような速さで落ちていき。当たるだけでも体に穴が空いていく。

腕にチーズのようなボコボコとした穴が出来る。

頭蓋骨が崩れるバキバキとした音が町中に響き渡る。

「来い!アヤカシモドキ」

「検索機能が使われました。アヤカシモドキ001-4568起動開始します。」

アヤカシモドキ

代々砂洲賀家に伝わる生物式霊能力収容虫

アヤカシモドキは霊能力を貯めることの出来る生物移動式収納虫。

見た目は空き缶程度の大きさのクワガタムシのような形をしている。

「アヤカシモドキ、313ペタバイト、起動。」

「確認されました。313ペタバイト。霊能力の移動を開始します。」

体に霊能力が伝わってくる。

「ビービー、体に伝わる容量が不足しています。3ペタバイト移動へと変更します。」

「ダメだ!そんな力で街は救えない!」

「ダメだ!そんな事をしたらお前の体が持たない!霊能力移動の前にお前が息絶える!」

「そんな事どうでもいい!体を破壊する覚悟で能力を移動しろ!」

「確認、了承しました。313ペタバイトの霊能力移動をリスタート。再開始します。」

「やめろ!」

体から光を発し、耐えられなくなった体から能力が吹き出す。

壊れかけの繊維を再生させ、霊領域を完全体にした。


2064年5月6日 砂洲賀遊助 死亡。


だが、力は受け継がれる。

「鉄炮雨をこの世から消してやる!アヤカシモドキ!俺に力を授けよ!」

「確認、了解しました。アヤカシモドキ操作対象を砂洲賀遊助から獅子島玲生に移行しました。」

これから、雨を降り注ぐこの世を変える物語が始まった。


やまない雨はない。

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