第27話 意地悪と目隠し(★)

目隠しカフェに着くと、先を歩いていた響さんは一度、僕らをふり返り、含み笑いをすると、受付の奥に消えていった。

残された僕らは顔を見合わせる。

すぐに戻ってきた響さんは白衣を着ていて、それを見た響もまた、慌てたように奥に行こうとする。

「前と同じ部屋が空いてるから、俺は先に実くんを連れていく。優は「姫」の対応をして、終わったら来るといい」

肩をポンと叩かれた優は、複雑な表情を浮かべながらも、不安そうな僕に微笑みかけた。

「先に行っててください」


「実くん、緊張しているかい?」

僕の前まで来ると、響さんは手を差し伸べた。

「え……? あの」

その手のひらには、透明なフィルムに包まれたイチゴ色の丸い玉。

「じゃあ、これをなめるといいよ。イチゴ味の飴玉」

「あ……。ありがとう」

僕はそれを口の中に放り込むと、前と同じ部屋に入って、体を深く椅子に沈めた。


僕の前にしゃがむと、響さんは「で?」と笑いながら首を傾げる。

「実くんは何が聞きたいんだい?」

「え……」

「俺が痴漢したかどうか知りたいんだっけ……?」

言われるまで、すっかり頭から抜けていた。

「……そ、そうだよ!」

「そうだね」

「! 認め……っ!?」

「でも、理由があるんだ」

痴漢に理由があるなら聞かせてほしい。

「どんな……?」

「話すけど、その前にジェルをぬらせてくれ」

「え? なんでジェル……?」

すると、響さんはキョトンとしてしまう。

「そういう店だからだけど?」

マッサージしながらなら、確かに冷静になれるかもしれない。

今は、ちょっとしたことでカッとなってしまいそうではある。

「……わ、わかった」


にしても、と思う。

(あれ……? 優はあの時、クリームって言ってたような……。これ、やっぱり、つぶつぶ入りの透明ジェルだ)

首にヒンヤリとしたジェルがぬられ、スーッとのばされて、優しく揉まれる。

でも目隠ししていないせいか、落ち着かない。

「目隠し……しないの?」

「……してほしいのかい?」

「え」

「ハハッ。ちょっと意地悪してみただけだよ。目隠しはする」

「……」


目隠しされた方が、変に緊張しないですむ気がした。

だから、目隠しされた後のことなんて考えなかった。


「……じゃあ、いかせてもらおうかな」


ゾクッと耳元に鳥肌がたつような低い声。

ギョッとして、僕は椅子から立ち上がろうとした。

でも胸を押されて、たったそれだけで動けなくなる。

「何……っ?」

「ハハッ、かわいいな」

腰を引き寄せられて、ゴリッと下腹部に昂りを感じる。

「えっ、え……?」

「……気持ちいいよ。実くんのお腹」

電車の中の時のようにグリグリと押し付けられて戸惑う。

「なっ、なっ……」

服越しなのに、まるでセックスさせられているような疼きに、キュッと体が強張る。

「……これはさ、ペナルティーなんだ」

「え……?」

いきなりズボンを降ろされて、肌に椅子の冷たさを感じる。

「わかってるんだろ?」


「え、なんで……」

内腿を強弱をつけて揉む指先に戸惑う。

(ヤバい……。なんかこれ……っ!)

さらされたそれが、響さんの白衣ごしの昂りとこすりあわされて、だんだん息が上がってくる。

血液がそこに集中して、上擦った声が上がり、首を振る。

(駄目! 駄目、駄目駄目!)

内腿をギュッと閉じて、びくびくびくんと体が跳ねる。

(な……なんで、い……)

椅子と内腿にかかった白い粘液。

イクのを我慢できなかったのが悔しい。

「あ……っ、あっ」

すぐにキュッと右乳首をつままれて、ざらついたうねりが左乳首をなめあげた。

「待って……っ」

「……俺がイクまで終わらないけど?」

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